格好良い女性を見つけると自分の中にストックする。
ご縁のある人、通りすがりの人、活躍した人のエッセイや偉人伝。物語の中の人。
私は他人とのご縁にこの上なく恵まれる人間だと思う。そして、貪欲なので好きでない人の良い部分も真似できるいい根性をしている。
嫌いな人というのはおおまかに2通りあって、人間性が無理な人と、立場上仲良くできない人が居る。
それで、私は人間性が無理な人でも仕事ができたり魅力的であれば、そこも尊敬できる。
「合わないけど魅力的だとは思う」と平気で公言する。
人間性も魅力も感じられない人とは可能な限り距離を取る。
合わない人とは適切な距離を取れば普通に生活できると思ってるし、合わないけど尊敬できる部分がある人とは距離を調整したら良い関係になると考えてる。
相性は努力ではどうにもならないと思う。
20代の時に仕事は物凄くできるけれど、合わない女性の上司がいた。
思い返せば畑違いで転職した専門職の私が正論で暴走するのだからやっかいな事この上ない。
今から考えると話は聞いてもらったし、行き違いもあったと思う。
逃げる部下が多い中で、追いかけてくる部下は珍獣だったんだろう。
問題は指示に人を挟むのだ。それが私は気に入らなかった。
単に忙しかっただけかもしれないし、挟まれた人の言い方が良くなかっただけかもしれない。
指示に一言イヤミが付くのだ。それは上司の言葉ではなく挟まれた人がつけたオマケだったかもしれないけれど、その場で反論されたくないから人を挟むと判断した私は一方的に怒っていた。
上司は仕事ができすぎて、できない人を理解できないから他の人がついていけてなかったのだと思う。
人より体力と精神力があって頭が良く、仕事を人一倍こなしてきたのを「努力したらできる」と本人が信じてたとしたら、これは厳しい。
できないことを「できないふりをしている」と認識していたのでは?と、今になって考察する。
ただ、一人ひとりが一定の仕事を必ずできないと回らない職種だったから、それは仕方ないとも思う。
それはどうでも良くて、ある日
「あなた、服を作るの?紳士用の生地を使うと長く着られるわよ。私はあつらえる時に紳士用スーツの布をお願いするの。仕立て屋さんには嫌がられるけれどね、長持ちする。女性用の布は華やかで、式典には良いけれど痛むのが早いわね」
ネイビーのパンツスーツを誇らしげにぽんと掌でたたき、得意げな笑みを浮かべ教えてくださった。
格好良いと思った。
紳士用のスーツ生地はウールか化繊かそのミックスが多いのだけれど、固くてしっかりしている。
固くて伸びにくいけれど、アイロンをしつこくかけると型が定着し、頑丈な服ができる。
一度、フェミニンな洋服を作るお店で紳士生地を持ち込ませてもらったことがある。
ベテランの職人さんが作られたそれは、ピシッとシャープなラインに出来上がり、ちょっと学生服のような、それでいて女性らしさがあり「シスターみたい」と言われた。
程よいストイックさがあったのだと思う。
頻繁に着るわけでもなく、10年以上着ているけれど生地にまだ張りがある。立体裁断でゆるみが入れてあるので1サイズくらい変わっても着られる。多分、60代になっても着てると思う。
今でも冬向きのとっておきの服はスーツ用の生地で作る。
思い出の中の上司は私の中で尊敬する格好良い女性になっている。