今日は、9月30日(金)~10月15日(土)の会期(日・月休廊)で、銀座の画廊、ギャラリーアートもりもとで開催中の吉間春樹展 traveler について書きたいと思います。

 

吉間春樹さんは、京都造形芸術大学(現 京都芸術大学)美術工芸学科油画コースを卒業され、写実的な絵画を制作し、現在、白日会に属している若手作家です。

吉間さんに初めてお目にかかったのは4年前のグループ展で、その時はお話はできませんでしたが、今回は初日の忙しい日に伺ったにもかかわらず、お話しすることができました。

ご本人は、お若く、控えめで静かな印象の方ですが、すでに白日会会員となり、その人気等も考えると、この数年で着実に力を伸ばしてきていると感じています。

 

それでは、作品を紹介したいと思います。

「complicated」 6F(40.9×31.8㎝)

この作品は、女性の表情はもとより、複雑な手、指の表情をきわめて自然に描いており、吉間さんの写実力に驚かされます。

 

そして、もう一つ、私ははじめ光の反射が全くないので、この作品の額にはアクリル板が入っていないと思いながら写真を撮らせていただいたのですが、実は、この絵の額だけ、光の反射を抑える加工がされているとのことでした。

この額は、高価な額だそうですが、作品の良さを光の反射で消さない点で素晴らしいと思いました。

 

「葉の影が落ちる白い部屋」

こちらの作品は、今年の3月に開催された第98回白日会展に出展された作品です。

 

白日会展では、この作品は第1室の入り口から2番目の位置に展示され、かつ、新会員推挙者中、最優秀と認められた作品に対して授与される富田温一郎賞を授賞されていました。

その時の写真は私のブログでも紹介しましたが、もう一度その写真を掲載します。

第98回白日会展(於 国立新美術館)に行ってきました!(2022年3月)

 

次の作品を紹介します。

「想いではモノクローム色を点けてくれ」 10F(53.0×45.5㎝) 

昨年12月に急逝された大瀧詠一氏が作詞、松本隆氏作曲の「君は天然色」の歌詞に出てくる

「想いではモノクローム色を付けてくれ もう一度そばに来て はなやいでうるわしのColor Girl」

の一部を題した作品です。

画廊の佐々井さんと、その歌の話題で盛り上がってしまい、今思い出して、この作品と歌との関係については正確に把握していなかったことに気づくのですが、1981年、昭和時代に発売された名曲に因んだ作品であり、モデルの方にも、その時代を意識した服装をしてもらったとのことです。

 

この作品を拝見した時、実は私は大変魅力を感じたのですが、私が若かりし頃の時代感覚を反映している作品と知ったとき、新鮮な驚きがありました。

 

「翠緑」 10M(33.3×53.0㎝)

吉間さんの作品の背景に、このように植物が描かれているのはあまり拝見したことがなかったのですが、このように背景に緑の植物を描くと魅力が倍増すると感じます。

 

ほかにも吉間さんらしい次の作品が印象的でした。

「Arcturus」4F(33.4×24㎝)

 

「afternoon room」8F(45.5×37.9㎝)

 

さて、今回の個展の副題に「traveler」という言葉がついています。

そのことについて吉間さんはDMのなかで、大学卒業後、一人で上京した不安、孤独感を行く当てもない迷子にたとえ、夏目漱石の「三四郎」のようだったと。その後、その足がついていない状態から、年を重ね、技術が上がる中で、いつしか旅をしている感覚に変わり、作品一つ一つがその旅の成果として描いていると話されています。

 

今、私が若い頃に読んだ「三四郎」で思い出すのは「stray sheep」という迷子を意味する言葉です。

吉間さんも、この数年で努力を重ね、その「stray sheep」から「traveler」への成長と考えると、この4年間、拝見してきた吉間さんの作品の成長をより理解できるような気がします。

そして、さらに月日を重ね、吉間さんがご自分をどのように表現していくのか、作品の成長と併せてとても楽しみに感じています。

 

最後に、ギャラリーアートもりもとのHPアドレスを掲載しておきます。

ギャラリーアートもりもと (artmorimoto.com)