昨日、新宿にある佐藤美術館で開催されている「吾輩の猫展」に行ってきましたので、その様子について書きたいと思います。
本展は、夏目漱石生誕150年に、漱石の「吾輩は猫である」にちなんで、長年アーティストの支援を行ってきた同美術館のデータベースの中から、日本画、油画、版画等々の分野で活躍する70名の猫を題材にした作品を展示しているとのことです。
佐藤美術館の入口です。
そして、購入した図版と絵はがきです。
作品の写真撮影が可能ということでしたので、是非とも拝見したいと思っていた作家さんの作品を中心に紹介していきたいと思います。
池永康晟「猫・習作・神園町辺り」
「美人画づくし」を監修するなど、今や美人画で有名な池永康晟氏の作品です。
岩絵具、墨で画かれた日本画であり、一点を凝視する猫の表情を奇をてらうことなく、古風とも思える猫を描いています。
京都絵美「猫」
先日、山種美術館で、同館日本画アワード大賞を受賞した京都絵美さんの作品を拝見しました。
彼女が描く女性の作品は、悩ましく、憂いを感じます。ここに描かれた猫の絵は、背景に淡く色合いの花を描き、また、白く美しい毛並みなど大変美しいのですが、猫の視線を見ると、鋭く迫力さえ感じてしまいます。
彼女の作品は、女性にしても、猫にしても、心を強く感じる作品と思います。
顧洛水「眠る猫」
顧洛水さんも、「美人画づくし」でその作品を初めて知ることが出来ました。
美人画づくしでは、「私は女性の特別な姿と感情をもとに女性美を表現したいと思っている。」と書かれていました。
この猫は、飼い猫の「ドウドウ」、イタズラをよくする猫らしいですが、彼女の寝姿を見ると気持ちが落ち着く、不思議な存在とのことです。
安心して眠る猫の姿は、私たちを癒やしてくれます。
坂本藍子「おやすみ」
日本画ですが、猫の姿を忠実に、写実的に描いている作品です。この猫は近所の野良猫を、少しずつ距離を縮め取材して、描いたとのことです。描くうちに、この猫に大変愛着を感じていることを感じさせる作品と思います。
關加奈子「ねぇ、ぼくカッコイイ?」
生け花をされる關さんの飼い猫セイア君は、その生け花にお手伝い?をしてくれるそうです。
その愛猫の得意げな姿を描いた作品です。
ちょっとイタズラなセイア君、そして、彼を愛する關さん関係が分かる作品と思います。
王培(わんべい)「風来」
私は、この方の作品を拝見することは全くの初めてです。
でも、この猫を抱く少女の表情、抱かれる猫の姿が、大変魅力的です。
この作品は、自分が幼い頃の記憶をもとに描いた作品とのことですが、人の心に訴える力がある作品と思いました。
阿部千鶴「夢のはじまり」
阿部千鶴さんの作品を拝見するのも、今回が初めてです。
少女の目を瞑っている表情、その周りの配置された猫の表情、やさしい色合いなど、やさしく心温まる作品です。
篠原愛「紫と猫ー00」
篠原愛さんの作品は、ブログなどで拝見したことがありましたが、実物を見たのは今回が初めてです。
猫をマフラーの間に挟んだら暖かいだろうと想像のもとに描いた作品とのことです。
鉛筆画で描く少女の表情、猫の表情は、篠原さんの世界に登場する少女たちの表情であり、可憐でありながら神秘さを漂う表情に魅力を感じます。
牧弘子「2人きりの部屋」
牧弘子さんは、つい最近、ギャラリーアートもりもとで個展をされており、是非とも拝見したかったのですが、機会を失ってしまいました。
今回の作品展の中では、この作品は大きめの作品(90.9×116.7)であり、見応えのある作品でした。
2人の少女と、猫たちがいる不思議で美しい空間。彼女の作品を、これからもっと拝見し、もう少し心の中で醸造してから言葉にしていきたいと思います。
寒河江智果「光と影」
美人画づくしで、彼女の作品を一度拝見し、今回は二回目になります。
実は、彼女の絵も、魅力的に思いつつも、今のところ、それを言葉で表現するにはもう少し時間がいるようようです。
彼女は、この作品について、「(猫)ブームの中でも、本当に可愛がられている猫は果たして何匹いるの?と考え出したらこの絵ができあがりました。未熟な絵かもしれませんが、どうか全ての猫が幸せになれるよう、愛をこめて。」と図録に記載されています。
彼女の作品とも、これから向き合っていくことができたらと楽しみにしています。
数多くの猫の作品が所狭しと展示してあり、猫の絵が好きな私としては、大変楽しめた作品展でした。
以上、作品の中のほんの一部ですが、私の心に残った作品を中心に紹介させていただきました。