おとといになりますが、現在、三菱一号館美術館で開催されている(2016.10.19~2017.1,9)「拝啓ルノワール先生-梅原龍三郎に息づく師の教え」に行ってきました。

 

三菱一号館は、東京駅のすぐ側であり、英国人建築家ジョサイア・コンドルによって設計された1894年に建設された建物を、復元したものです。当初の建物は老朽化のために1968年に解体されましたが、40年あまり後に、同じ場所に復元されたことになります。

 

まず、入口をご覧ください。ご覧の通りの赤煉瓦の建物です。

中庭には、緑が多く、エミリオ・グレコの彫刻が飾られていました。

 

まず、購入した図録とチケットの写真です。

西洋から多くを学び日本の洋画界を牽引した梅原龍三郎、彼は、1909年にアポ無しで初めてルノワールを訪れ、その後、ルノワールを師と仰ぎ、親交が深かった。ふたりの作品、その親交をテーマとして、この展覧会は構築されています。

 

そして、この展覧会の目玉は、図録の表紙やチケットに描かれているように、ルノワールが描いた2枚の「パリスの審判」と、梅原龍三郎が模写した絵が展示されていることです。

 

パリスの審判が、ギリシャ神話で、三人の美神のうち誰が美しいか判定する話ですが、ルノワールは、1908年に次の作品を画いています。(以下、図録の写真です)

中央の女神は、選ばれる、愛と美の女神ヴィーナスであり、残りの二人は、最高位の女神ユノと、知恵と戦争の女神ミネルヴァです。

そして、その後、1913-14年にも次の作品を完成しています。

この作品では、当初の作品には描かれていなかった神々の使者メルクリウスが、左側に描かれており、女神たちも、より鮮明に描かれています。

 

会場では、この作品が並べられていました。図録も見開きになっています。

作品を見ると、後年の作品が丁寧に描かれている印象があり、豪華な感じがしますが、私の印象では、最初の作品が柔らかい印象が強く、ルノワールらしさを感じました。

このように、2つの作品を並べて見れること、それが素晴らしいことだと思います。

 

そして、この作品を模写したという梅原龍三郎の作品は、次の作品です。

1978年の作品であり、梅原龍三郎は、1888年生まれですので、90歳頃に画かれた作品になります。ルノワールの作品の模写とはいえ、その力強いタッチ、色使いをみれば、画風は、完全に梅原龍三郎のものであり、知識がなければ、ルノワールの模写とは思いもつかない作品だと思います。

ただ、梅原龍三郎が、この時期にこの作品を画いたということが、彼とルノワールの関係を知る上で、重要なことだと思います。

 

さて、他の作品を少しだけ触れたいと思います。

ルノワールの「長い髪をした若い娘(麦藁帽子の若い娘)」1884年の作品です。

この作品は、輪郭線を明確に描かない描き方ではなく輪郭線を明確に描いています。

したがって、ルノワールの多くの作品とは少し印象が違いますが、ある意味で、写実的な作品も描き、得意とした彼の作品の特色が現れているのかもしれません。

作品の印象として、少女の、可憐で美しい姿が、見事に描かれている作品と思いました。

 

このほか、梅原龍三郎の読書(1911年)なども、印象に残りました。

 

また、梅原龍三郎が収集した、ドガの「背中を拭く女」(1888-92年頃)も、展示しており、この作品も大変印象に残りました。

女性らしい背中の線で描いたこの作品、同時期に画かれたメアリー・カサットの作品(「沐浴する女性」1890-91年)を連想する作品であり、機会があれば両者の作品の関係について、もっと調べてみたいと思う作品です。

(メアリーカサットについては、私のブログで一度触れました。「メアリー・カサット展(於 横浜美術館)の感想 桟敷席・沐浴する女性・母の愛撫など 」)

 

この展覧会、落ち着いた雰囲気の建物の中で、ルノワール、梅原龍三郎の作品を十分、堪能することができ、大変満足することが出来た展覧会でした。