単車乗りを廃業したのだから、コイツも処分しなければなるまい。


もっともこんな窮屈なもの、20代の頃までしか着ていた憶えが無い。


 何となればこの革ツナギは、ハタチの頃に作ってもらったフルオーダー品なのだ。


これまでの人生に於いて最も痩せていた時期に、身体中の寸法をきっちり測って作られた物だから、三十路に突入した頃には既に、ファスナーがヘソまでしか上がらなくなっていた。


 様々な面で、時代を感じさせるデザインではある。


当時は若気の至りで色々とやらかしたから、あちこち補修の跡だらけだ。


この肩の傷は、中山サーキットで転倒した時のもの。


コーナーリング中に他車と接触して随分と派手に吹っ飛んだけれど、この分厚い「鎧」のお陰で、僕自身は大した怪我もしなかった。

乗っていたVF400Fの方は、まぁ粉々というか、一瞬で廃車になってしまったけれども。


何度も僕の身体を護ってくれて、本当にありがとう。


 

 

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