監督:三宅唱

主演:岸井ゆきの、三浦誠己、松浦慎一郎、三浦友和

 

「きみの鳥はうたえる」の三宅唱監督が「愛がなんだ」の岸井ゆきのを主演に迎え、耳が聞こえないボクサーの実話をもとに描いた人間ドラマ。元プロボクサー・小笠原恵子の自伝「負けないで!」を原案に、様々な感情の間で揺れ動きながらもひたむきに生きる主人公と、彼女に寄り添う人々の姿を丁寧に描き出す。
生まれつきの聴覚障害で両耳とも聞こえないケイコは、再開発が進む下町の小さなボクシングジムで鍛錬を重ね、プロボクサーとしてリングに立ち続ける。嘘がつけず愛想笑いも苦手な彼女には悩みが尽きず、言葉にできない思いが心の中に溜まっていく。ジムの会長宛てに休会を願う手紙を綴るも、出すことができない。そんなある日、ケイコはジムが閉鎖されることを知る。主人公ケイコを見守るジムの会長を三浦友和が演じる。(映画.com)

 

2022年製作/99分/G/日本
配給:ハピネットファントム・スタジオ

 

「眼差し」

 

岸井ゆきのに見惚れた99分間だった。

 

先日鑑賞した「神は見返りを求める」の演技に惚れ、

映画館で観たい衝動を抑えられず本作を鑑賞。

 

 

彼女だったからこそ、

この物語の切なさや愛おしさがフルパワーで伝わってきた

 

 

物語に大きな波はない。

 

・試合が2試合

・ジムの閉鎖

・会長の体調悪化

 

この辺りが波となる部分だろうけど、

それ以外はケイコの日常が軸になる。

 

 

が、この日常にこそ魅力が詰まっていた。

 

・弟とのやりとり

・ホテル清掃員の仕事

・ジムでの練習

 

何でもないあたりまえの場面でも、

ケイコがそこにいる事で輝いて見えた。

 

 

ケイコは全く喋らない

セリフで言えば「はい」の一言のみ。

 

あとは手話。

そして、目線だ。

 

この目線がすごい

 

世の中への反発であったり、

戸惑いであったり、

何も語らなくてもケイコの感情が目線を通して伝わってくる。

 

以前「百円の恋」で、

安藤サクラにぶん殴られたそれとは、

別のパンチを食らった気分だった。

 

 

またこの作品はケイコの今を映している。

 

過去のことはあまり語られず、

未来についてはどうなるかなど全く示されない。

 

この瞬間に生きる姿だけを見せる。

 

この演出がケイコをさらに研ぎ澄ましていた。

 

 

そう言えば上映中、

音楽がほとんどなかった。

 

聞こえてくるのは生活音。

街や、ジム、人混みなどから鳴る音だ。

 

音楽が無い為、上映中は緊張感もあったが、

僕は心地よかった。

 

 

ラストでは負けた試合の対戦相手から土手で声をかけられ、

挨拶を終えたケイコが複雑な表情をした後に走り出して終わる。

 

Life goes onと言わんばかりの終わり方。

 

その後のエンドクレジットの流れも良かった。

街並みにクレジットが映され、

音楽はない。

 

ケイコの暮らす街を映し、

とても静かで心地よい雰囲気で映画は幕を閉じる。

 

 

もう少しだけお替りしたいのに、

食材の在庫切れで追加注文できなかったものの、

それが功を奏し、

結局ちょうど腹八分みたいな感覚。

 

昼間の上映時間で鑑賞したのだが、

鑑賞後が夕方だったら完壁だったなぁ。

 

グッときました。