株式の譲渡制限に関する定めの廃止による変更の登記の申請をする場合において、登記簿上、発行可能株式総数が発行済株式の総数の4倍を超えているときは、当該申請と併せて、発行可能株式総数が発行済株式の総数の4倍を超えない範囲とする発行可能株式総数又は発行済株式の総数を変更する登記の申請をしなければならない。
株式の譲渡制限に関する定めの廃止と、発行可能株式総数が発行済株式総数の4倍を超えない範囲に変更する具体的な例を挙げてまとめてこう。
前提条件
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会社の現状:
- 発行済株式総数:1,000株
- 発行可能株式総数:5,000株(発行済株式総数の5倍)
- 現在、株式に譲渡制限がある。
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目的:
- 株式の譲渡制限を廃止する。
- 発行可能株式総数を発行済株式総数の4倍以内に変更する。
手順
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株主総会の決議:
- 株式の譲渡制限廃止の特別決議を行う。
- 発行可能株式総数の変更(例えば、発行済株式総数が1000株なら4倍である4,000株に変更する)についての特別決議を行う。
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必要書類の準備:
- 株主総会議事録(特別決議の内容を含む)
- 定款変更後の新しい定款
- 登記申請書
- 登録免許税の計算書
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登記申請:
- 株式の譲渡制限廃止の登記申請を行う。
- 発行可能株式総数の変更登記申請を行う。
具体例
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株主総会の決議内容:
- 「当社は、株式の譲渡制限に関する定めを廃止することを決定する。」
- 「当社の発行可能株式総数を5,000株から4,000株に変更することを決定する。」
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登記申請の手順:
- 法務局に登記申請書を提出。
- 申請書には以下の内容を記載。
- 変更前の発行可能株式総数:5,000株
- 変更後の発行可能株式総数:4,000株
- 変更前の株式の譲渡制限に関する定め:あり
- 変更後の株式の譲渡制限に関する定め:なし
実際の申請書の記載例
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変更前:
- 発行可能株式総数:5,000株
- 発行済株式総数:1,000株
- 株式の譲渡制限:あり
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変更後:
- 発行可能株式総数:4,000株
- 発行済株式総数:1,000株
- 株式の譲渡制限:なし
理由
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経営の安定性の確保: 発行可能株式総数が発行済株式の総数の4倍を超える場合、経営陣が株式を大幅に発行することが可能になる。これにより、既存の株主の持株比率が大幅に希薄化されるリスクがある。発行可能株式総数を制限することで、経営の安定性と株主の権利保護が図られる。
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透明性の向上: 株式の譲渡制限が廃止されると、株式の流動性が増し、多くの新しい株主が参入する可能性がある。この状況では、株式発行に関する透明性を高め、株主が予期しない株式発行による影響を受けないようにするために、発行可能株式総数の上限を設けることが重要となる。
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市場の信頼性の維持: 株式市場では、企業の株式発行に関する情報が投資家の意思決定に大きな影響を与える。発行可能株式総数が発行済株式総数の4倍以内であることは、企業が過度に株式を発行して市場を混乱させないようにするための規制。これにより、市場の信頼性が維持される。
実例
例えば、ある会社が現在発行済株式総数が1,000株であり、発行可能株式総数が5,000株であるとする。この場合、発行済株式の5倍の発行可能株式総数を持っている。この状況で株式の譲渡制限を廃止すると、新たな株式発行が容易になり、既存株主の持株比率が大幅に希薄化されるリスクがある。
これを防ぐために、発行可能株式総数を4,000株(発行済株式の4倍)に変更する必要がある。これにより、会社が無制限に新株を発行して株主の利益を損なうことを防ぐことができる。