過去問①
相手方の欺罔行為により錯誤に陥って贈与の意思表示をした者は,その相手方が贈与を受けた物を善意の第三者に譲渡した後であっても,その意思表示を取り消すことができる。 答え 〇
この過去問は欺罔者(詐欺をはたらいた悪いヤツ)に対する詐欺取消はできるというもの。たとえ、贈与した後であっても詐欺によって行われた行為は取消できるというのがこの結論。
当事者同士の関係
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詐欺による取消しの基本:
- 詐欺によって意思表示をした者(贈与者)は、その意思表示を取り消すことができる(民法第96条)。
- ここでの詐欺とは、相手方が故意に相手を欺いて錯誤に陥らせる行為を指す。
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欺罔者に対する取消し:
- 贈与者が欺罔者(詐欺を行った相手方)に対して意思表示を取り消すことは可能。この取消しにより、贈与契約は初めから無効となる(民法第121条)。
第三者に対する関係
- 第三者の保護:
- 詐欺による意思表示の取消しは、善意無過失の第三者には対抗でない(民法第96条第3項)。
- つまり、第三者が詐欺の事実を知らず、かつ過失がなかった場合、第三者の権利は保護される。第三者が詐欺の事実を知らず、かつ過失がない状態で贈与物を取得した場合、その第三者の権利は守られる。
更なる検討:善意無過失の第三者に対する対応
贈与者の立場:
- 贈与者が詐欺による意思表示を取り消した後、その贈与物が善意無過失の第三者に譲渡されていた場合、贈与者は第三者に対してその贈与物の返還を求めることはできない。
- その結果、贈与者は詐欺を行った欺罔者に対して、損害賠償などの法的手段を取ることになる。
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具体的な例:
- 例えば、AさんがBさんに騙されて高価な絵画を贈与したとしする。
- Bさんがその絵画を何も知らないCさんに売却した。
- AさんがBさんの欺罔行為に気づいて贈与の意思表示を取り消したとしても、Cさんがその絵画を善意で購入していた場合、AさんはCさんから絵画を取り戻すことはできない。
- この場合、Aさんは詐欺行為をしたBさんに対して損害賠償を請求することができる。
まとめ
- 当事者同士の関係: 贈与者は詐欺を行った相手方(欺罔者)に対して意思表示を取り消し、その結果として契約は初めから無効となり、贈与物の返還を求めることができる。
- 第三者に対する関係: 贈与者が詐欺による意思表示を取り消した場合でも、その取消しは善意無過失の第三者には対抗でない。善意無過失の第三者が取得した権利は保護される。
3. 善意無過失の第三者に対する対応: 贈与者は詐欺を行った相手方(欺罔者)に対して損害賠償を請求することで対応するこ
とが求められる。
過去問②
Aは,Bの代理人として,Cとの間で金銭消費貸借契約及びB所有の甲土地に抵当権を設定する旨の契約(以下,両契約を併せて「本契約」という)を締結した。Aが借入金を着服する意図でCとの間で本契約を締結し,Cから受領した借入金を費消したが,CもAの意図を知っていた場合,設定した抵当権の効力はBに及ばない。 答え→〇
法的背景
「第三者」の定義
民法第96条第3項における「第三者」とは、詐欺による意思表示によって生じた法律関係に基づいて新たに利害関係を取得した者を指す。つまり、詐欺による意思表示が存在しなければその法律関係に基づく権利を取得しなかった者を意味する。
第三者に含まれない例
質問の具体例では、第2順位の抵当権者が詐欺による意思表示の取消しにどのように関与するかを検討していく。
詐欺による取消しに対して保護される第三者の範囲を明確に理解することが重要。
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詐欺による取消し(民法第96条):
- 詐欺によって意思表示をした者は、その意思表示を取り消すことができる。
- 取消しは、詐欺を行った相手方に対して有効。
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第三者に対する対抗(民法第96条第3項):
- 詐欺による意思表示の取消しは、善意無過失の第三者に対抗することができない。
- 抵当権者の順位上昇:
- 第1順位の抵当権が詐欺による意思表示の取消しによって無効となった場合、第2順位の抵当権者の順位が自然に上昇し、利益を得ることがある。
- しかし、第2順位の抵当権者は、詐欺による意思表示によって新たに利害関係を取得したわけではなく、もともと存在する抵当権に基づく権利が自然に変動しただけ。
- 第2順位の抵当権者は、民法第96条第3項における「第三者」には含まれないん。これは、第2順位の抵当権者が詐欺による意思表示に基づいて新たに利害関係を取得した者ではないから。
- よって、詐欺による意思表示の取消しは、第2順位の抵当権者に対して対抗することができる。
まとめ
詐欺による意思表示の取消し: 詐欺によって意思表示をした者は、その意思表示を取り消すことができる。
第三者の保護: 詐欺による意思表示の取消しは、善意無過失の第三者には対抗できない。
「第三者」の意義: 詐欺による意思表示によって新たに利害関係を取得した者が「第三者」に該当する。自然に順位が上昇するなどの理由で利益を得る者は、「第三者」には含まれない。