家屋の賃貸人が自ら使用する必要があるため,賃借人を相手方として家屋明渡しの調停を申し立て,その結果,賃貸借契約を合意により解除し,家屋を賃貸人に明け渡す旨の調停が成立した場合において,その後,賃貸人に家屋を必要とする事情のなかったことが明らかになった場合であっても,賃貸人において家屋を必要とする事情が合意解除又は明渡しの合意の内容となっていなければ,その調停に錯誤があるものということはできない(最判昭28.5.7)。
背景
賃貸人(家を貸している人)が自分でその家を使う必要があると主張し、賃借人(家を借りている人)に対して家を明け渡すように求めた。その結果、賃貸借契約を双方の合意により解除し、賃借人が家を明け渡すことになった。
問題点
後になって、実は賃貸人にはその家を使う必要がなかったことが判明した。この場合、賃貸人の主張に誤りがあったとして、その合意に基づく契約解除や家の明け渡しが無効になるのか、という問題が発生する。
最高裁判所の判断(昭和28年5月7日)
最高裁判所は以下のように判断した:
- 賃貸人が家を必要とする事情が合意解除や家の明け渡しの合意の内容に含まれていない場合、その合意には「錯誤(誤り)」がないとしました。
わかりやすく言うと、、、
合意解除や明け渡しの合意の内容が「賃貸人がその家を必要としていること」を前提としていなかった場合、賃貸人が実際には家を必要としていなかったとしても、その合意自体には問題がないということ。
つまり、もし賃貸人が家を必要としていることが明け渡しの合意の条件や理由に明示されていないのであれば、その後に賃貸人が実際に家を必要としていないことが判明しても、契約解除や明け渡しの合意が無効になるわけではない、ということ。
まとめ
- 合意内容の確認: 賃貸人が家を必要とすることが合意の条件に含まれていなければ、その後に事情が変わっても合意は有効。
- 錯誤の判断基準: 合意における重要な前提条件に誤りがあるかどうかが判断基準となる。この場合、その条件が明示されていなければ錯誤とはならない。