仮装譲渡というのは、実際には譲渡の意思がないのに、あたかも譲渡が行われたかのように見せかけること。これを前提に、具体的なケースで整理。
-
土地の仮装譲渡:
- Aさんが土地を持っていますが、Bさんにその土地を仮装で譲渡したように見せかけた。実際にはAさんからBさんへの土地の所有権の移転は行われていない。
-
建物の賃借:
- Bさんは、その土地に建物を建て、その建物をCさんに貸した。Cさんはその建物の賃借人。
さて、この状況でCさんは「民法94条2項の第三者」として保護されるかどうかという問題が生じます。
民法94条2項は、仮装譲渡のケースにおいて、善意の第三者(仮装譲渡の事実を知らないで契約した人)を保護するという規定。
なぜCさんは保護されないのか?
-
別個の不動産:
- 土地と建物は法律上別個の不動産とされている。つまり、土地の所有権と建物の所有権は別々に扱われる。
-
Cさんの位置づけ:
- Cさんは建物の賃借人であり、土地について直接の法律関係(所有権や賃借権)を持っているわけではない。Cさんの法律関係はあくまで建物に関するものであり、土地に関するものではない。
裁判所の判断
- 裁判所(最判昭57.6.8)は、Cさんを「第三者」として保護しないと判断した。理由は、Cさんは土地の仮装譲渡に関わる法律関係に入っていないため、民法94条2項の適用を受ける「第三者」には当たらないから。
民法94条を復習
民法第94条
-
第1項:
相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。
これは、当事者が互いに意思がないことを知りながら行った虚偽の表示(仮装の表示)は無効であるということを示している。
-
第2項:
前項の規定は、善意の第三者に対抗することができない。
これは、第1項で無効とされた仮装行為でも、その行為を知らずに善意で関わった第三者に対しては、その無効を主張することができないという規定。つまり、善意の第三者は保護されるということ。
第三者譲受人の場合
-
仮装譲渡の例:
- AさんがBさんに土地を仮装で譲渡したとする。これは実際には土地を譲渡する意思がないにもかかわらず、あたかも譲渡したように見せかけたもの。
-
民法94条1項の適用:
- この場合、AさんとBさんの間の譲渡契約は無効です。なぜなら、双方が本当に譲渡する意思がないことを知っているから。
-
民法94条2項の適用:
- しかし、この土地を仮装譲渡の事実を知らないで購入したCさん(善意の第三者)は、保護されます。つまり、CさんはAさんからBさんへの譲渡が無効であることを主張されず、土地の所有権を持つことができる。
賃借人のケース
この条文の適用に関して、土地と建物のケースで再度考える。
- Aさんが土地をBさんに仮装譲渡。
- Bさんがその土地に建物を建て、その建物をCさんに貸す。
この場合、Cさんは土地の仮装譲渡に関する第三者として保護されるかどうかが問題になるけど、
- 土地と建物は別の不動産: 土地と建物は法律上別々に扱われるので、Cさんの賃借関係は建物に関するものであり、土地に直接関わるものではない。
- Cさんの保護: Cさんは建物の賃借人であるため、土地の仮装譲渡に関しては第三者として保護されないと判断される。
このように、民法94条は善意の第三者を保護する規定ですが、土地と建物が別個の不動産であることから、Cさんのようなケースでは土地の仮装譲渡に関しては保護されないのだ。