商行為の代理人が本人のために行為を行う場合、もしその代理人がその行為が本人のためであることを示さなかったとしても、その行為は本人に対して効力を持つ(商法504条本文)。
民法でいうところの顕名がなくても商行為では効力を有するというやつ。
この規定が適用されるためには、以下の条件が必要
- その行為が本人にとって商行為であること。
- その行為が代理人にとって商行為であるかどうかは関係ない。
この点をわかりやすくするために、具体例を挙げていく。
具体例
本人が商行為となる場合
状況: 田中さん(本人)は輸出業者で、彼の代理人である鈴木さんが取引先と輸出契約を結ぶことにした。鈴木さんは田中さんの代理人であることを明示せず(顕名なく)に、輸出契約を結んだ。
結果: この場合、輸出業(商行為)に関する契約であるため、その契約は田中さん(本人)に対して効力を持つ。つまり、取引先は田中さん本人に対して契約の履行を求めることができる。
本人が商行為とならない場合
状況: 山田さん(本人)は個人の趣味で収集している骨董品を持っている。彼の代理人である佐藤さんが、その骨董品を他人に売ることにした。佐藤さんは山田さんの代理人であることを明示せずに、骨董品の売買契約を結んだ。
結果: この場合、骨董品の売買は山田さんにとって商行為ではない。山田さんが売ってくれってお願いしたわけじゃない。だからこの契約は山田さん(本人)に対して効力を持たない。取引相手は佐藤さん個人に対してしか契約の履行を求めることができない。
このように、商行為の代理において本人のためにすることを明示しなくても効力を生じるためには、その行為が本人にとって商行為であることが必要。代理人自身にとって商行為であるかどうかは関係ないという判例。