合同会社の債権者は、当該合同会社の営業時間内は、いつでも、その計算書類(作成した日から5年以内のものに限る)について、次に掲げる請求をすることができる(会社法第625条)。
計算書類の閲覧請求
会社法第625条の概要
- 何ができるの? 債権者は合同会社の営業時間内であれば、過去5年以内に作成された計算書類について、以下の請求を行うことができる。
- 計算書類の閲覧
- 計算書類の謄本(コピー)の交付
なぜ5年なのか?
1. 財務状況の把握
- どういうこと? 債権者は、会社が借金を返せるかどうかを確認するために、会社の財務状況を知る必要がある。
- なぜ5年? 過去5年分の財務状況を見れば、会社の経営状態やお金の流れを十分に把握できるため。5年という期間は、会社の安定性や財務の健全性を評価するのに適した期間とされているから。
2. 情報の鮮度と関連性
- どういうこと? 債権者が必要とするのは、最新の財務情報です。
- なぜ5年? 5年以上前の情報は、現在の会社の経営状況を正確に反映していない可能性が高く、古すぎる情報はあまり参考にならないため。
3. 法的保護と運営負担
- どういうこと? 法律は債権者の権利を保護する一方で、会社の運営にも配慮している。
- なぜ5年? 過去5年分の計算書類を保存し、提供することで、債権者の権利を保護しつつ、会社の運営に過度な負担をかけないようにしている。5年を超える古い書類を管理するのは会社にとって負担が大きくなるから。
例
- 財務状況の把握:友達にお金を貸したとして、その友達が返済能力があるかを判断するために、過去5年間の収入と支出を見せてもらうようなもの。
- 情報の鮮度と関連性:5年前までの収入と支出は、友達の現在の経済状況を知るために十分。それより古い情報はあまり役に立たない。
- 法的保護と運営負担:友達に過去5年間の収入と支出を整理してもらうのは現実的だけど、それ以上前の情報を求めるのは負担が大きくなる。
まとめ
合同会社の債権者が計算書類を請求できる期間が「5年」とされている理由は以下の通りです:
- 財務状況の把握:過去5年分の情報で会社の財務状況を適切に評価できる。
- 情報の鮮度と関連性:5年以上前の情報は現実的でないため、最新の情報が必要。
- 法的保護と運営負担:債権者の権利を保護しつつ、会社に過度な負担をかけないバランスが取れている。
なぜ有限責任会社である合同会社にだけ債権者が請求できるという特別な規定が必要か?
1. 債権者保護の強化
- 有限責任の性質:合同会社は社員が有限責任であるため、会社が倒産した場合、債権者が回収できる資産が制限される。そのため、債権者は会社の財務状況を事前にしっかりと把握しておく必要があるから。
- 透明性の確保:有限責任であることから、会社の財務状況に対する透明性を高めることで、債権者がリスクを評価しやすくする必要がある。過去5年間の計算書類を閲覧・謄写できることで、債権者は会社の財務健全性を確認できる。
2. 情報アクセスの重要性
- 公開義務の欠如:合同会社(公告しないのは持分会社全て)は、株式会社のように決算を公開する義務がない。そのため、債権者が直接財務情報を得る手段が限られている。
- 閲覧・謄写請求権の意義:この規定により、債権者は必要な情報を得る権利を持ち、合同会社の透明性を確保しやすくなるのだ。
3. 比較的小規模で閉鎖的な構造
- 経営の内部性:合同会社は、しばしば少人数で運営され、外部の投資家が存在しない場合が多い。このため、有限責任社員のみで構成される合同会社では外部の債権者に対して内部の財務情報を提供する仕組みが重要になる。
まとめ
合同会社が有限責任会社であることは、債権者が過去5年間の計算書類を閲覧・謄写請求できる理由の一つ。有限責任の性質上、債権者が会社の財務状況を事前に把握しやすくするために、特別な保護規定が設けられている。これにより、債権者はリスクを適切に評価し、会社の経営状況を理解することができるようになる。