先日、目に留まった新聞のコラムがあった。それは、新体操日本代表のメンタルコーチを務める精神科医を紹介するものであった。
この精神科医は、本業の傍らプロマジシャンの肩書きを持ち、「人が悩むのも、マジックで騙されるのも原因は同じ、『思い込み』です」と言い、伸び悩むアスリートも「思い込み」からの解放を手助けすることで快方に導くのだと。

アスリートに対する施術の最たる例はこうだ。
午前中はひたすらマジックを披露し、時にはマジックではご法度のタネ明かしも含めて、「人はいかに思い込みに左右されるか」を認識させ、午後は演技の技術的な注意点を全て書き出させる。そうすることによって、結果や成功といったことはコントロールできるものではなく、書き出したような自らの行動だけであるということに気付かせるのだという。結果、ミスや代表からの脱落を恐れていた選手が明らかに変わり、チームも19年の世界選手権で銀メダルを獲得したとのこと。

世界を目指すアスリートのみならず、こうした思い込みで日常の行動を無意識のうちに制限しているのは一般人も同じ。逆を言えば、様々な思い込みを排除することで、自ら無意識のうちに囚われていた呪縛から解き放たれ、思った以上の充実感や達成感が得られる可能性があるんだろうと思える。今まで「きつい」「苦しい」と思ってきたことが、実は「思い込み」であったなどと気付き、あるいは発想を転換することによって、そんなに苦しいことではなかったり、実はその中に楽しみが潜在していたことに気付くなんてことは決して難易度の高くない努めてできる作業なのではなかろうか。

以前、友達から、
「お前って全然二枚目路線じゃないのに、俺ってイケてるぜ的に思い込んで、イケてるぜオーラ出す時多いよな」
と言われたことがある。それに対し、
「当たり前だろ!俺のような胴長短足のデブハゲが、そのまんま俺はデブだから、ハゲだからイケてないんだなんて悲観的になってたらとっくにクビをくくってるわ!これは生きていくための術だ」
と応えてやった。

常々、「俺は福山雅治になりたい」と広言している。もちろん、あの誰が見ても美形である容姿への憧れからであるが、実はちょいと違う意味も含まれている。
福山雅治が「ブルースっていいから聴いてください!」なんてテレビやラジオで発したら世に対する影響はいかがなものか。つまり、そういうことである、淡麗な容姿もさることながら、その人が持つ言葉の影響力である。

俺が福山雅治になることも、「ブルースはいいよ」と言って、世の中でブルース大流行!なんてことはあり得ないが、「俺は福山バリにイケてるぜ!」といった「思い込み」は決して行動を阻害するものではなく、時と場合によっちゃ必要な「思い込み」であろう。