「焦るとも心静かに真ん中に落ちて悔いなし白糸の滝」
いかにも風流な短歌の体で詠まれているが、これはとあるゴルフ場の男子トイレ、男児の持ち物たる突起物を、今や死語になった感のある「社会の窓」から突き出し、今今ションベンをたれようかといった際に目に飛び込んでくる短歌もどきなのである。察するとおり、焦ってそっちこっちに散らさないようにと注意喚起しているものである。

最近、男性の用を足す際の様式が変わったと。
冒頭の短歌もどきが掲げられているトイレは立ちながらできる様式のものであるが、今では座って済ませる「洋式」が普及し、従来の男の特権とも言える様式で事を済ますと飛沫が飛び散るので、男も小さき用の場合であっても座って済ませろと言われ出してから徐々にその傾向が見られ、最近では男性の70%が洋式トイレで座って小用を足すほどになったらしい。
言われ始めは、いくら真ん中に落としてもその落差からの勢いで飛沫が飛散してしまうというところからだろうが、最近のコロナ禍にあっては、感染防止といった大義もあって、なおさらその傾向に勢いがついているようだ。

俺等が子供の頃って洋式トイレなんてものは見かけることもなく、男の小用は立って済ますが「当たり前」であった。その当たり前が、洋式なんていう外来種が席巻しても普遍的なものであると疑いもせず、「男は立ってするもの!」であったが、その当たり前が崩れようとしているわけです。それが時代の趨勢と言えば受け容れざるを得ないのかとも思えるが、やはり50余年もの習慣、「はいはい、そうですか」と抵抗なく受け容れるのも癪に障るのも事実。
だって、犬だってオスは片足あげてするのに対し、メス犬は両足ついて腰を下ろしてするように、誰が教えたわけでもなく、誰かが決めたことでもないのにスタイルが違う。まぁ厳密に言えば、オス犬の全てが片足あげてするものではないらしいが、概して、そう大別できる。とすれば、人間だって便器などという文明の利器に頼らない時代、それこそ野っ原のどこにでもやっていいような遥か古に遡っても、オスは立ち、メスは腰を下ろして用を済ませたことだろう。つまり、本能レベルで生物学的な理由における必然性があるはずで、現代のこの流れはそういった本能の部分に蓋をする行為になりはしないかと考えたりもする。もっとも、ヒトがこういった本能の部分に理性とかいうもので蓋をし続けてきたからこそ人間へと変革したともいえ、そうするとなんら不自然な流れでもないのだろうか。

世の奥方が亭主に向かって「トイレは座ってやって!掃除する身にもなってよ!」と投げかけたりすることを雑誌などで読む機会がある。今まで洋式においても立ってすることが当たり前であったが、それが意外とそこら中に飛び散っているのだということが広まり、それは衛生的にどうなのかということで「男性も座って用を済ませましょう」という啓蒙活動に触れる機会も多くなった。

コンビニのトイレにしても、同じ便器が備わっていながら一方は男女兼用で、一方は女性専用などと分けられている場合が多くなった。あれも、啓蒙活動行き届いていない中、洋式においてもまだまだ立って用を済ます男もおりますれば、飛沫を撒き散らしたかもしれない便座に座るのはどうしても抵抗のある女性に対する配慮であろうと解釈し、兼用を拝借する際は、極力ご意向に同意する形で座るわけだが、やはりまだまだ違和感が拭いきれない。話は巡るが、なんせ本能的に組み込まれた行為をすることで味わう言い知れぬ開放感!これはやはり譲り難いものではある。

我が家は一人住まいながら、便所も洗面台も2つあるようなチョーゴーテーである!使うも一人、掃除するも一人がゆえ、小用を足す際も気遣いはしていない。しかし、便所に限らず、掃除は汚れてからするものという性分、汚れを防止するために常日頃から拭き掃除なんてことはあまりしないので、便所も相応に、目に見えて「やらなきゃ」と思ったらやる感じではあるが、やってみてなるほど、やはり相応に飛沫は飛び散っているものである。掃除の際は、一応そういうところまで拭き掃除をするのだが、する度に「掃除をする身にもなってよ」という世の奥方の声が想起されるのである。

なるほど、後から使う人への気遣い、掃除をする人への気遣い、そんなことも相まっての「座って用を足そう」キャンペーンは奏功したか、今や70%を占めるに至る。そんな時代の流れになることもさることながら、そう言えば一人住まいながら泊り客が多いのはおそらく並以上であろう、お客さんのために、自宅でも座って用を足してみようかと…。

本日は大寒。やけに冷える夜であることに納得するとともに、妙に尿意を催すのもこの寒さのせいか…。早速「座って用足す」を実践してみるが、寒い中で全てズリ下ろすのはなかなか根性がいるものだ。
世の女性はこれを毎回やっておったのかと思えば、女性に対する敬意もまた違ってくるものだ。