撮影の合間・・・少しの空き時間。
他のメンバーは打ち合わせに行っているため、
楽屋には僕とジュンスの二人きり。
こんなわずかな時間なのに、毎日活動している僕にとっては
ジュンスに触れられるかもしれない貴重な時間。
それなのに・・・
「げほ・・げほ・・!」
「ちょっとジュンス・・・ほんとに大丈夫なの、その咳」
何日か前から咳をしていたのは知っている。
風邪かな・・・
数日後にはライブも控えているし、ジュンスの喉が心配になる。
「ああ、うん、大丈夫・・げほ」
「いや、全然大丈夫じゃないでしょ。いつもジュンスは無理ばっかするから・・」
熱を測ろうと伸ばした僕の手を、ジュンスの手が制する。
「大丈夫だって。
マスクもしてるし・・・」
「だから・・!そうゆう問題じゃ・・!」
-ガチャ-
声が荒くなりかけた所に他の3人が帰ってきたので、
しぶしぶ手を引っ込めた。
その日はそれからジュンスの咳が聞こえる度に
気になって仕方なかった。
「ジュンス・・!」
帰り際、身支度をしていたジュンスを呼び止める。
ジュンスはマスクをしたままこちらを向くと、なに、と小さい声で答えた。
「病院、行ったの?それ。」
「行ったよ。風邪だって。」
風邪、という言葉に少し安心してしまう。
「そう。とにかく暖かくしないと駄目だよ?加湿とかしないと・・」
「ユチョン、それじゃあお母さんみたいだよ。」
口うるさい僕に苦笑するジュンス。
「あのねぇ・・・
「分かってる。ちゃんとライブまでには直すから。ほら、帰ろうよ。」
そう言ってジュンスは一足先に楽屋を出てしまった。
家に着いてお気に入りの音楽を聴いていても、
ジュンスの体調が気になって仕方がない。
1時間ほど家の中で悩んだ挙げ句、このままじゃ眠れないと
僕は再び家を出た。
近いのでタクシーは使わずに歩いて向かう。
家の前に着いてから電話をかけると、
2回くらい鳴ったところでジュンスが電話に出た。
「今家の前にいるんだけど・・」
「え、僕の?」
「そう、下にいるからエントランス開けてもらえる?」
驚いた様子のジュンス。
短い返事の後に自動ドアが開いたので足早にジュンスの部屋に向かう。
「ユチョン・・・」
玄関をあけると部屋に入ってきた僕を不安そうに見ているジュンス。
「心配だったから、来てみた。」
そう言って買ってきた飲み物を手渡す。
「あっ・・・ありがとう・・・・!・・ユチョン・・・ごめん。」
「あんまり心配させないでよね」
そう言って僕は上着も脱がずに飲み物の袋を持ったまま
オロオロしているジュンスを壁際に追いつめる。
「ちょ、ちょっと・・ユチョン・・」
ジュンスの顔の横に右手をつくと、
ジュンスが困ったような表情になった。
なんで・・・
そんな顔するんだよ・・・・・
左手でゆっくりジュンスのマスクを下げると、
すこし触れただけなのにジュンスがおびえるように反応する。
「ま、待って!」
あと少しのところでジュンスが顔を逸らす。
「なんで、イヤなの?」
「ちが・・・っ・・風邪が移るかも・・・」
ジュンスは子供がイヤイヤをするみたいに
首を左右に振っている。
髪の毛からシャンプーの匂いがして、すでにシャワーを浴びたんだとわかる。
「ユチョン・・あの・・・今日は帰った方が・・・」
マスクを直しながら言うジュンス。
その言葉にちょっと苛立って・・・無視。
床に置いてあった鞄から取り出したのは、
さっき来る途中で買ってきたマスク。
一枚取り出してジュンスに見えるようにヒラヒラと振ってみる。
「これで良いでしょ?」
言ってから油断しているジュンスにマスク越しにキスをする。
ジュンスは突然の不意打ちに顔を真っ赤にしながら
なんだか複雑な表情で、僕を見た。
僕の気遣い?のかいあってか、ジュンスは徐々に咳をしなくなった。
「ユチョンのおかげかな♪」
そう言って笑うジュンスを見て、僕も安心しきってた。
ライブ当日。
体調が悪かったなんて嘘のよう。
無事にライブが終わって、着替えのために楽屋に戻ると
ジュンスの姿が見えない。
どこいったんだろ・・・トイレ??
そのうち帰ってくるだろうと思って探さないまま、
30分程が経った時、楽屋の外がなんだか騒がしいことに気がついた。
さりげなく聞き耳をたてる。
「.・・・見てないです・・・!」
今のはジェジュンの声だったな・・・
何かあったのかな・・・
なんだかただならぬ雰囲気だったので、
「何かあったんですか?」
「い・・・いや、それが・・・」
スタッフが一瞬言いよどんだので、僕はなんだか嫌な予感がした。
「ジュンスの姿が見えないからって・・・スタッフが探してて・・・・・。
さっき休憩所のソファーで倒れているのが見つかったんです・・!!
なんでも喉から出血してるとかで・・・っ!!」
全身から血の気が引いた。
今にも泣き出しそうなスタッフの声ももう耳に入らない
「それで・・・・今ジュンスは・・・っ!!」
「見付けたのがチャンミンで、すぐ救急車を呼んでくれて・・・
今は・・・病院に・・・」
聞き終わる前に楽屋にあった荷物を掴むと、
僕はそのまま会場を飛び出した。
「ジュンス・・・っ!!」
病室に駆け込むと振り返ったチャンミンと目があった。
「まったく・・静かに来て下さいよ・・・」
疲れきった顔でジュンスのベッドの脇に座っているチャンミン。
チャンミンの手が・・・
ベッドから出た血の気のないジュンスの右手を包むように握ってい
胸がギュッと締め付けられるように痛む。
それでも、今はジュンスの容体が心配だった。
「ジュンスは・・・」
「眠ってます。風邪をこじらせたみたいですね。
喉からの出血と熱が高いので、大事をとって二、
「・・・喉は大丈夫なの?」
「分かりません・・・・・」
チャンミンは思い出したようにジュンスの手を離すと上掛けの中に
こんなときなのにジュンスに触られるといちいち胸が
ざわついてしまう自分を殴りたかった。
他のメンバーも病院に向かうとのことだったが、
既に一般の面会時間を過ぎていたこともあり、
家に着いてもジュンスのことが気になって仕方無くて、
明け方まで眠れないまま、
ただ鳴らないケータイを見つめることしか出来なかった。
そのまま・・・リビングでうとうとしているうちに本当に眠ってしまったらしい。
電話の音で目が覚める。
電話の相手はユノ。
「ユチョン、今皆でジュンスのお見舞いに来てるんだけど・・・」
「・・・!」
あわてて時計を見ると、
時刻はすでに正午になろうとしていた。
眠ってしまった自分にたいする自責の念を振り切るように、
ユノに今から向かう旨を伝える。
なんで・・・こんな時に寝過ごすなんて・・・っ・・・!!!
僕はろくに身支度もせずに家を出た。
-to be Continued・・・・-




