マイペースで歩こう☆ -38ページ目

マイペースで歩こう☆

ノスケから⇒全ての発達障害児とその家族へ。
『チャンスは常に目の前にある。自主性を持つことが一番大切。自分らしく在りつづけることです( ̄∀ ̄*)』





アイコさんの同行支援業務を終えて、ちび子は事務所に帰還した。

おかえりー。

半年前までアルバイトしていた事務所には、それぞれその日の業務を終えた先輩職員たちがいた。

リーダーのマッさん、ちび子の大学の先輩・ウメちゃん。そして、今回ちび子が退職すると聞いた日に、すぐに連絡をくれたタケ先輩。



先生に辞表を出した日、帰り道でバッタリと出会ったタケ先輩は、ちび子が辞表を出してきたと話すと、即座に言った。

〝ちび子ちゃん、空いてる日にウチにバイトに来ない?僕からマッさんに話しておく。ちび子ちゃんの事情は、知ってる。でも、僕たちは気にしてない。ちび子ちゃんが良かったら。〟


ちび子が、5年も一緒に過ごした事務所の先輩たちは、今回の事情を全部聞いても、ちび子を信じてくれた。


『就活しながらのアルバイトになるから、いつまた辞めるかわかりませんよ』


〝いいよ。一回でも、二回でも。〟


『こんなことになったのに、私が行っても大丈夫ですか?』


〝ちび子ちゃんが、悪いんじゃないから〟


そう言ってくれた。

この日、久しぶりのアルバイト。アイコさんの支援にちび子をつけて、先輩たちは事務所でちび子の帰還を出迎えた。
一日の出来事を報告して、ついでにババァに遭遇したことも話して。事務所内にいた他の職員たちも、〝えええっっ!!〟と驚いた表情を隠さなかった。

よく、続けられるね。一体どういう神経してるんだろう。

ババァの悪評たるや、ちび子の一件は関係なく、地元の主だった福祉法人では最初から凄まじいものだったらしい。そんないわくつきのババァをちび子の先生が雇ったと聞いて、みんな愕然としたそうな。
ちび子は大丈夫だろうか。皆で心配しているうちに、ちび子が病気になって休職→みっくが介入した、と瞬く間に噂が広まり。地元のみならず、ババァの関係してきた様々な各所には一躍有名なパワハラババァとなったようだ。





タケ先輩:ちび子ちゃんがウチのバイトを引き受けてくれたときは、嬉しかったんだ。




タケ先輩は、全てを承知で。ギリギリでちび子を止めたかった。支援者として。
本当は、ちび子は、この事務所に就職するつもりだった。先生から誘われて、1から一緒に頑張ろう、と、苦労を承知でいったのだ。タケ先輩たちは、すごく残念がってくれたけど、ちび子が夢を叶えるために、と送り出してくれた。ところが、ほぼ同時に先生がババァを雇ったと知り、ずっと心配していたらしい。




ちび子:私は、先輩たちにお世話になったのに、他所に就職して。こんな騒ぎを起こして。





マッさん:うん。僕さ、本当は。ちび子ちゃんは、もう福祉の仕事をやめてしまうんじゃないか、って思ってた。




ウメちゃん:それは違う!ちび子ちゃん自身が何か不祥事を起こしたワケじゃなくて!




マッさん:うん、わかってるよ。




本当に。ひどい出来事だった。




タケ先輩:それで?次に行くとこ、決まったの?




ちび子:いくつか応募してて…( ` 口 ´ )




マッさん:へー。なんて会社?



◯◯っていうところと、△っていうところと。ちび子が名前をあげると、マッさんがネット検索をした。

わっ!すっごく大きな会社じゃん。




マッさん:しかし。ここからめっちゃ離れてる。なんでこんな遠くに。




ちび子:こんなことになって、今更この近辺なんて行けません。




マッさんは、ババァが平気で勤めていることをあげ、やっぱり異常な人なんだね、と頷いていた。




タケ先輩:大丈夫?あっちこっちの部署に行かされたりしない?



先輩たちは、ちび子を心配している。
ちび子は話した。面接の時、配属される部署を明示されたこと。経緯も察してしまわれ、ほぼバレたこと。




ちび子:…で、3週間考えてみてね、って言われて、今向こうの返事を待ってるんですけど、何にも連絡無いんです。やっぱり難しいですかね、再就職( ` ー ´ )




ウメちゃん:…ねぇ、ちび子ちゃん。それってさ。




タケ先輩:うん。ちび子ちゃん次第、っていう意味だと思う。




ちび子:え?( ` 口 ´ )




マッさん:うん。向こうはね、もうちび子ちゃんに決めてるんだよ。で、ちび子ちゃんの返事を待ってるよ、っていうこと。ちび子ちゃんは、どうなの?




ちび子:…私は…( ` ー ´ )




あの会社での面接は、1時間半にも及び。ジムチョーさん、現場責任者の人も、ちび子が将来相談員の仕事をしたいことや、今はたくさん勉強したいこと、たくさん話を聞いてくれて、ちび子の今と、この先のこと、将来のことまで、一緒に考えてアドバイスを受けてくれたこと。
おかげでちび子は、自分がこれからやるべきことの順番が見えたこと。




ちび子:私…。あの会社に、行きたいな、って。そう思っています( ` ー ´ )




マッさんは、優しい眼差しでちび子を見つめた。




マッさん:自分から電話してごらん。




ちび子:え?で、でも。私がカンチガイしてるかもだし…( ` △ ´ )



大丈夫だから。頑張れ、ちび子!






アイコさんの外出支援のバイトは久しぶりだ。最後に会ってから半年、アイコさんはちび子を覚えているんだろうか。


〝おはよう、アイコさん( ` ー ´ )〟


部屋の入り口から、車椅子のアイコさんに話しかけると、一瞬眉をひそめる。やっぱり忘れられてるかな。そう考えた瞬間。




アイコさん:オイデー。




アイコさんは、ちび子を覚えていたのだ。
彼女は身体障害を持ち、常に車椅子の生活。知的障害もあり、会話は成り立たない。好きなこと、嫌いなことの意思表示のみ可能で、非常に神経質な性格の持ち主である。従って、支援に就けるヘルパーさんは限定されることになり、かつてはちび子が一、二を争う〝アイコさんのお気に入り〟だった。ちび子が他の人の支援に就いていると、『イカーン!イカーン!』とプンスカ怒っていたくらいだ。


オイデー。オイデー。ニコニコ顔でちび子を呼んだアイコさん、ちび子が部屋に入ってアイコさんの前に立つと、アイコさんはちび子の身体に手を伸ばした。足を、身体を触り、ニッコリ笑うと、言った。

もみもみー。

アイコさんが、相手の身体や顔を撫でるのは、好意の表し方で。ちび子は、彼女が自分を忘れていなかったことを本当に嬉しく思った。



久しぶりの、アイコさんとの一日。車椅子を押し、アイコさんが時折発する言葉に相槌を打ったり、言葉を返したり。
アイコさんは、ちび子が自分の意思を理解していることを解っている。だから、アイコさんもちび子の言葉をちゃんと聞いている。

お出かけして、お昼ごはんを食べて。
今日はアイコさんは病院の予約をしていて、お出かけの最終目的地は病院だった。受付をして、診察時間になったら、アイコさんのお母様が来る。そこでちび子の仕事は終わりだ。

受付に診察券を出して。窓口の人がアイコさんを呼んだ。



『ムラクモさん』



その声。ちび子が、ハッと顔を上げると。
そこには、あの先輩相談員がいたのだ。

なんて…最悪なことに。

ちび子の表情が凍りつく。記憶がフラッシュバックして、過呼吸…


には、ならなかった。




ちび子は、黙って先輩相談員を見ていた。

〝こんにちは〟

と言われ、ちび子もこんにちはと返した。



『ねー、ねー、リサちゃんは?』

均衡を破ったのは、アイコさんだった。

リサちゃんはー?
リサちゃんは、アイコさんの妹さんの名前だ。クイクイとちび子の手を取り、笑顔で自分の妹のことを尋ねるアイコさん。


んー?今日はね、もうすぐママが来るよ。リサちゃんはね、おウチに帰ったら会えるよ。


ちび子は、アイコさんに笑顔を返して。その後、来院したお母様に、一日の報告をしてから業務を終えた。

『バイバイ』

ニコニコ笑顔のアイコさんに、またね、と手を振って。




のちにちび子は、私にこう話している。

『私、あの人みても、何にも思わなかった。私はアイコさんの支援者、あの人は、アイコさんが通ってる病院の事務員さん。もう、それだけだった。』



ちび子。アイコさんは、知的障害を持っているけど、敏感な人だ。なぜ、あの場で突然妹さんのことを尋ねたのか、不思議だな。アイコさんは、おまえが一瞬緊張したのに気づいたんじゃないか?



『…うん。気づいたかも知れない。』



アイコさんは、おまえを守ったんだよ。おまえは、アイコさんに助けてもらったんだ。仲間に守られたんだよ。

ちび子は、ポロポロと涙を零した。
アイコさん、大好きだよ、と呟いて。













帰宅して。ちび子はその日の出来事を話す。




みっく:へー。バカばっかだと思ってたのは、あそこだけか。今回の会社は、なかなか頭の良さそうなジムチョーさんなんだな。




ちび子:うん、頭はすごく良い人だと思う。話しててそう感じた( ` ー ´ )




みっく:ふーん。で、おまえはどうするの?




ちび子:え?明後日また、別のとこに面接入れてるし、結果は2日後ってハローワークの求人票に書いてあるよ( ` ー ´ )




みっく:…今の話の流れをまとめると、おまえに決定するから返事くれ、って言ってんじゃないかな。




ちび子:えっ?でも、2日後にって書いてあるもん( ` ー ´ )採用です、って向こうから言ってくるんでしょう?( ` 口 ´ )




みっく:…おまえに払う給料は、こんだけです、休日はこうやって取ります、ボーナスは◯月です、って資料出して、同僚になるやつに顔合わせしてくれて、〝3週間考えて。待ってる。〟って言ったんだろ?




ちび子:…うん( ` ー ´ )




みっく:だから、採用したいから、ちび子の返事くれ、ってことだろ?



ちび子:でも、『採用します』という言葉は言われなかった( ` 口 ´ )




みっく:…じゃあ、こうしろ。2日後になって電話来なかったら、3日後に郵送待って。それでも来なかったら、一度電話してみな。




就活は忙しい。ちび子は何枚も紹介状をもらい、履歴書を書いては面接に出かけて行く。

10分の面接で、翌日の朝には〝採用します〟と言ってきた会社もあり。ある日、ちび子は神妙な顔で悩んでいた。




ちび子:面接10分で、さぁ…。数時間で採用します、って…( ` ー ´ )




私の。何を理解してくれたんだろう。離職理由も聞かず、履歴書を斜め読みしただけで、何を期待してくれたんだろう。




みっく:つまり誰でもいいんだろ。




ちび子:でもね、言ってたんだよ。〝今は充分人が足りてるんですけど、もっと受け入れる障害者を増やしたいから、先に職員を増やすんです〟って。もう、2人は採用したんです、って。今は利用者と職員マンツーマンなんだって( ` 口 ´ )




みっく:…。足りてるのに、増やしたいって?




ちび子:…うん( ` ー ´ )




みっく:人雇うのって、カネかかるんだぞ?福祉業界って生産性のない業種だからな、運営はどこもかしこもカツカツだぞ?どんだけ大きな会社だ?辻褄が合わないと思わないか?




ちび子:…うん…確かに…( ` ー ´ )




みっく:職員全員が辞表出してて辞める予定かも知れん。仮にホントだとしても、例えば今10人の利用者100人に増やしたら?これから体制変えるっつってんだろ?おまえ、辞めたとこのやり方と全く同じだってわかってんのか?どうなるか、わからないからだよ。そりゃ『あなたを待ってました』って応募者全員に言うだろうよ。




ちび子:あー…そういうことかぁ…( ` 口 ´ )




心得その①。
美味しい話はウラがある(笑)




みっく:騙されんなよ?おまえが若いと思って、ペラッペラ喋ってんだ。




ちび子:うん、確かにヘンだ。




みっく:面接のとき、何か質問されたんか?




ちび子:ううん。履歴書を見て、〝ハイハイ〟って( ` 口 ´ )




はい、クロだ(・∀・)




みっく:ちび子、今のおまえには、新規立ち上げの場所で踏ん張るのは危険だ。ケガして日が浅いんだ、しっかりとやる事が見えてる会社を選べ。とりあえずそこは、やめとけよ。




ちび子:うん…( ` ー ´ )




そんな就活の日々、久しぶりにアイコさんの外出支援のバイトに出かけたちび子。

それは、お天気の良い週末のことだった。