空を飛べた日④ | マイペースで歩こう☆

マイペースで歩こう☆

ノスケから⇒全ての発達障害児とその家族へ。
『チャンスは常に目の前にある。自主性を持つことが一番大切。自分らしく在りつづけることです( ̄∀ ̄*)』





ノスケは診断を受けてから。半年に一度ずつ、療育センターの発達相談を受けた。

発達検査は一年に一度。集中力が無く、絶えず身体を揺らしたり、他のことを話し始めてしまったり。
言語理解力は乏しく、作業効率が頗る悪い。だが、知能だけがズバ抜けて高かった。


『ノスケくんは、持ってる能力の40%も使ってないよ?』



学校生活を伝えたとき、イシカワ先生は言った。ペーパーテストの結果だけは良いんです、と話したら、そう言ったのだ。



『人間の能力ってね、不得意を補おうとする。電流も同じ。この回路がダメなら、迂回して流そうとする。
ノスケくんは、今はまだ出来なくても。成長していくに連れて、たくさんのことが出来るようになるよ。』



そっか。ねぇ先生。いつかノスケは、認められるオトナになれるのかな。自立して、人様から、ちゃんと認められる存在に。なれるのかなぁ。



『頼れるオトナ、にはなれないかも知れないけど。でもね。』

先生は、ちび子を見ながら言った。

『お兄ちゃんは、尊敬されるオトナ、になれるよ。きっとね。』




発達検査は、毎回同じような結果で。
言語理解力の乏しさと、処理の効率の悪さ、従って本来の高い能力を反映出来ていない、と。毎回を比べれば、少ーしずつ…数値が上がって…なんて望めることも無くて。
だけど、年齢とともに上昇していくIQだけが、ノスケの障害の特性を顕著に示していた。

120、130、140。私をはるかに超える数値。でも、ひとつも生きてない能力。
ノスケの能力って、一体何なんだ。アタマが良い、って言われても、会話も出来ないノスケに何が出来る?文章を理解出来ないから、文章の問題も解けない。
不思議なもので、学問的なものだけは理解出来るらしく。ノスケには、不得意科目は無かった。国語に関しては、パターンのように『覚えて』対応するようだ。
でも。『その日の出来事』は説明出来ないノスケ。


お母さん。日記を書いてみない?ってイシカワ先生から提案されたけど、その日の出来事を理解してないノスケには、説明すら出来ない。


せめて、と私が始めたことは、本の読み聞かせだった。紙芝居や、絵本。挿し絵にウサギやヒヨコなどの大人しい動物を描いたものを、ノスケは好んだ。
片っ端からウサギのついた本を買って与えた。その中で、ノスケが気に入っていたのは、『どんなにキミがすきだかあててごらん?』という本で。何度も、何度も読んでくれとせがんだノスケ。
ウサギが『スキ』の度合いを示すために、ピョンピョンと跳ねるシーンの絵が面白い、とケラケラと笑う。

本当は、そこがオチじゃないんだけどな。

でも、ノスケに理解出来たのは、『何かを競っている』ということだけで。
いつも開くページは同じだった。

でも、ある日。ノスケは絵本の最後のページを開いていた。
黙って。読んでいた。

ノスケ、わかるの?

尋ねると、ノスケは。ちびウサギを指差した。


『あのね。この子は。』


そして、デカウサギを指す。


『この子よりも、スキなんだよ。』


『だってね。ピョンって跳ねるよりも。月のほうが、もっともーっと遠いよ。
だから、この子よりもスキなんだよぅ。』




そっか。母さんも、お月さまに届くくらい、ノスケが大好きだよ。

そう言うと、ノスケは大喜びした。

大きさの違い、じゃない。スキの大きさ。
感情の大きさを。
ノスケは、文章に込められた意味を、理解出来るのだ。



文章を、繰り返し読むことで。一緒に読んで、聞かせて、ノスケと一緒に理解して。

ねぇ、ノスケ。ココは、どうしてこう書いてあると思う?

尋ねれば。ノスケは、ノスケなりの解釈や見解を示した。わかりにくいノスケの言葉。スケッチブックに、文字や絵でいっぱい。ノスケは絵のほうがわかりやすいからだ。
繋げる。書く。絵を言葉に変え、接続詞を教え、ノスケは『文章』を作る。私と一緒に。

ノスケの読書感想文は、毎回学年の代表になった。ノスケなりの、解釈。ノスケなりの、感想。素直に子どもの目線で書く、ノスケの文章。



下書きは。いつも『絵』である(笑)