課長は。今年度の人事で抜擢された、現場経験の豊富な人で。
年齢は、みっくよりも6歳下の37歳。つまり、Aさんよりも6歳下です。
しかしながら。18歳で入社した課長は勤続19年とベテラン。長年培ったキャリアは、人脈も技術ももちろん。皆からの信頼も折り紙付きです。
偶然にも。Aさんが東京に異動してた頃に、課長はとなりの部署にいて。東京で彼が引き起こした数々の騒動を、すべて知っていました。
みっくとは、課長さんが赴任してきた一年前からの付き合いですが、責任感が強くリーダーシップのある彼が昇格したときは本当に嬉しく思いました。
ずっとゴタゴタしていた、この地方支社。朝のミーティングや情報の共有など、積極的に行動しながら。課長さんは、あっという間に、グループをまとめてしまいました。
とても頼りになるリーダーなのです。
Aさんは。新しい課長が上司になったとき、ちょっと不服そうでした。
言葉遣いも、態度も。それは不遜とも受け取れるもので、課長から注意など受けようものならば。無視していました。
失態を修正せず、報告もせず、詫びもせず。
支社長を始め、全管理職に呆れられて。段々と、皆は彼を庇わなくなりました。
そんな中。この課長は、唯一。Aさんにきちんと注意を続けていました。
最初のうちは、課長さんをバカにしていた様子のAさんでしたが、自身の非をちゃんと説明して怒られるため、認めざるを得ないことが多くなって。
最近では、課長に対する言葉も敬語になりました。
課長さんが。ちゃんと向き合い続けてくれてるからです。
ありがとう。そう言ったら、課長さんが笑いながら言いました。
課長さん:でもさ。俺、例えアイツが障害でも。怒るのやめないぞ?
みっく:はい。ありがとうございます。
呆れて相手にしなくなった社員や、他の管理職たち。課長さんがAさんにきちんと注意を続けているのは、彼を自分の部下だと責任感を持っているということ。
みっく:叱ることを、やめないでください。憎まれ役をかってくれてありがとうございます。
課長さんは。全て承知でした。今の状態でAさんに注意するのをやめてしまえば、彼は他の社員から疎まれ、完全に孤立してしまう。
逆に、課長に叱咤されることで。周囲の社員たちは、『Aさんは問題ありき』と認識し、お互いにフォローするようになる。
そう考えています。
みっく:本人の自覚が無い以上、今の状況の改善が望めません。まずは、Aさん本人に、『申し訳ないな』と感じてもらうことが必要です。
課長さん:しかし、なぁ!Tだけで手一杯だよ、俺!Aさんまで見きれないぞ?
課長さんが。Tくんのフォロー、ちゃんとしてくれてるのです。注意力が足りないTくんのために。この夏は、課長さんが自ら。氷やクーラーボックスを持たせ。
ほら、T。倒れるなよ。お前倒れたら、現場困るんだよ♩忘れ物すんじゃねえよ。
そうして、必要に応じて。Tくんのためにフォローをしてくれていました。
みっく:基本はTくんと同じです。彼らが自分で判断することは、危険。
そんな課長さんから聞かされた話は、驚くものでした。
ある日Aさん、取引先との連絡をするために。先方へ電話をしました。ところが、担当者は会議中。応対の事務員さんから、お急ぎでしょうか、と聞かれ、『ハイ!緊急です!』
何が緊急か、って?Aさんは、メールを送りたかったのです。たかがアドレスを確認するために、会議中に呼び出された相手は怒りました。『いい加減にしてくれ!』と。
するとAさん、堂々と言いました。『私は、午後は忙しい。だから今、メールを送りたいのです。』
取引先よりも、自己都合が最優先。怒った担当者は電話を切ってしまいました。するとAさん、電話を切ったのは向こうだから!と。その後の連絡を放置しました。
取引先から怒りの連絡をもらい、支社長たちから叱られたAさんは、最後まで謝りませんでした。『相手は自分に対して失礼だったから!』と。
課長さん:理解出来ないにも、ほどがある。『お前が忙しいのはお前の都合なのだから、こちらが取引先に合わせるべきだ』と言っても、耳を貸さないんだ。
Aさんは、私たちが助言をしても。ご自身の理屈で言い返してくるだけです。
これでは、トラブルは一向に減らず、周囲の人間からは益々嫌われ者に。
みっく:自覚させねば、孤立します。自分が悪いのだと知ることが、彼が他人からのアドバイスを受け入れるきっかけにもなります。アメとムチは使い分けねばならない。
課長さん:えー⁈俺、ムチなのーっ⁇
みっく:大丈夫。Aさん、全部でなくても解ってきてる。自分の悪いところ、時には合わせないと、やっていけなくなるってことを。