グラフイックデザイナーをしている「道」といいます。
このブログでは、お酒に関する話題と、お酒をテーマにした作品を発表させていただいてます。
主にお酒の絵と写真です。また、お酒の絵や写真の制作も承っております。
制作ご希望の方や作品にご興味のある方はお気軽にご連絡下さい。
※お酒やお店の情報も載せておりますが、個人的な意見です。

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赤い箱をもって赤い場所にいく話
秋晴れのある日、君を誘ってお出掛け。
ここは、子供の頃に父が連れてきてくれた、
僕の記憶に残る一番の場所。
どんないきさつだったかは覚えていないけれど、
珍しく父に連れてきてもらった。
土産物屋で買ってもらった玩具の鉄砲。
屋台で食べたイカの丸焼き。
肩車。
そして、真っ赤に染まった山々。
そんな話をしながら歩いていたら、
君は急に立ち止まって僕の目を覗き込み、
「珍しいね。あなたがそんな話するの」って
うれしそうに言った。
「もう少しいくと滝に出るから、
そうしたらこれを食べよう」
少し照れながら、
(この季節のセレクトとしてはどうよ…と自分につっこみつつ)
持ってきた、
冷めたであろう551と
ペットボトルのビールを君に見せる。
山はあの時と変わらず、燃えるように真っ赤だった。
あの日、父と繋いだ手が、
いまは僕の手に変わって、君の手を包んでいる。
赤い山に見守られながら、
これからの季節を、君と重ねていける気がした。
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ミュージシャンの愛飲者が多いらしい、このお酒。 (これも、マスターから聞いた話だ。)
そのバーは、駅前の大通りから外れた、
ひとり通るのがやっとの細い路地の突き当たりにあるビルの地下にある。
急な階段を降り、ジャックダニエルのロゴが貼られただけの、店名のない扉を開けると――
6人も座れば身動きが取れなくなるような、小さなカウンターが迎えてくれる。
スピーカーの音量は絞られ、ガンズ・アンド・ローゼズやモーターヘッドの曲が、かすかに流れている。
店内は限りなく暗く、バックバーが見えないほどだ。
客はみな、一言だけ「ストレート」「ロック」「水割り」「ソーダ」「コーラ」
と好きな飲み方を告げ、千円札を一枚カウンターに置いて席につく。
すると、きっかりダブルのジャックダニエルが出てくる。
この店には、それしかない。銘柄はジャックダニエルのみ。他には何も置いていないのだ。
客は、ほのかに流れる音楽をBGMに、1〜2杯を静かに飲み干すと、小一時間ほどで席を立つ。
たまにマスターとぽつぽつ話す者もいるが、客同士で会話を交わす光景は見たことがない。
不思議なことに、狭い店なのに、満席で入れなかったこともない。
空間、明るさ、音楽、匂い――そして、ジャックダニエル。
じっくりと自分に向き合いたい夜に、この店はぴったりだ。
まるで、そんな人たちのオアシスのような場所。
僕はといえば、年に一度しか行かないこともあれば、毎日のように通うこともある。
最近は色々あって、連日この店で頭を空っぽにしている。
ある日、前から気になっていた店の名前を、マスターに聞いてみた。
「テネシー」
ぶっきらぼうにそう答えると、マスターは照れくさそうに笑って言った。
「単純な名前でしょ?」
「シンプルでいいですね」
そう返して、僕はグラスを口に運ぶ。
いつもと変わらない味が、胸の奥までしみこんでいった。
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タイムズスクエアのてっぺんに月がかかる
久しぶりの、君とのデート。
うれしさに胸が高鳴って、待ち合わせの時間よりずっと早く着いてしまった。
外が見えるカウンター席に腰を下ろすと、
街のざわめきやイルミネーションの光が僕の心を映す鏡みたいに、
胸の奥まできらめいている。
クリスマスムード一色の街を行き交う人々も、いつもより楽しげに、
まるで僕と君のために踊っているかのように見えた。
ふと、ビルを見上げると、
タイムズスクエア――新宿のね――
のてっぺんに、丁度、
まんまるの月がのっかっていた。
君へのプレゼントも月にちなんだものだったこともあって、
この偶然が、胸の奥でじんわり温かく広がる。
僕の手元にはウエイティング・カクテル、Blue Moon。
夜空と街の光をすくい取ったようなその色が、
少し艶めいた気持ちを添えてくれる。
遠くから、一生懸命にこちらへ向かう君の姿を見つけると、
思わず一人でグラスをあげて、そっと乾杯。
夜と街と、そして僕の心が、そっと君を迎えている
――そんな穏やかな瞬間だった。
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