かけっこ4位の賞品は、わら半紙で出来た安っぽい冊子だった。

表紙には
「小学4年生 付録 マスコットを作ろう」
と書いてあった。

そう、雑誌の付録の手芸本だったのである。


私の母は洋裁が得意だった。
学校で使うお道具袋やリコーダー袋、座布団や机の足カバー、はたまた竹尺袋なんてのも全部お手製だった。

毎年クリスマスには決まって、妹とお揃いのワンピースやジャンパースカートを作ってくれたし、後に私が中学生になった時、制服のセーラー服の着丈を詰めてくれたこともあった。

当時、色気づいた女子はたいがいセーラー服の着丈を短くしてカッコつけていたものだ。
それにくるぶし丈のプリーツスカートを合わせると、ほらスケバン刑事の出来上がり。

まあ、そこまでヤンキー調にする勇気もなかった私なので、先生に目を付けられないギリギリを攻めた丈まで短くしてもらった。

学年集会で抜き打ちの服装検査があった時、生徒指導の先生が私の着丈に目を付けた。
先生は何度も私のセーラー服の裾をひっくり返したりファスナーをチェックしたりしながら、首を傾げていた。
結局お咎めなし。

これは、母の着丈つめの技術がプロ級だったことを物語っている。
着丈は短いのに仕上がりが既製品と同じだったので、先生は怪しいと思いつつも詰めたことに気付けなかったのだ。

そしてその数年後、母は一介の主婦から起業してお直しの店を出すことになる。
その話はまたいつか書こうと思う。

そんな母に影響されて、私も小さな頃から手芸が好きだった。
しかし母は忙しさからか、または面倒だったのか、私にあれこれ作り方を教えてはくれなかった。

だからかけっこの賞品で手芸本をもらえた時、やっとこれで教わらなくても自分でマスコットが作れる!と思って大喜びしたのだ。

しかし小2に4年生の付録はやはり難しく、結局ひとりでマスコットを作り上げることは出来なかった。

そこで鎌田さんのお姉ちゃんが我が家に来ることになるのである。