焼き入れのコツ | ―正宗の名刀は再現できる―

―正宗の名刀は再現できる―

自身を「スーパーメーカー」と称する鋼の研究者、古屋道正です。
世界に3人しかいないダマスカス鋼の再現者の一人です。
鉄・鋼に対するあくなき探究心を、ブログに少しずつ書き記していきます。名刀細川正宗は再現することができることを知っていただけることでしょう。

包丁をさんざん焼き入れしてみたが、重要なのは水焼き入れならば、水温50℃未満として、2秒で刃の部分は完全に焼きが入ることです。


刀鍛冶の焼き入れを動画でみているとほとんどの刀匠が水に投入したら冷えるまで水に入れています。


NHKの数年前の放送で刀匠の焼き入れをやってましたが、ただ一人兵庫の明珍さんが2秒で引き上げを実践していました。


焼き割れという刃の膨張が急激な場合に起こる失敗は水に入れっぱなしのときにおきます。

私も包丁の刃の薄い場合に何度か失敗しました。

ところが、2秒水中冷却、その後引き上げて空中冷却を実践すると、全くといっていいほど焼き割れが起きません。


2秒のみ水中冷却をしたあと、放射温度計で包丁の温度をみていると、刃の部分は200℃ぐらい、棟側は350℃ぐらいです。


そのまま、放射温度計で温度を測りながらみていると、刃の温度はゆっくり下がります。200℃,150℃、120℃、100℃、80℃、50℃、30℃というようにゆっくり温度が下がります。


5~10分ぐらいで、そのように変化します。

刃の部分が50℃ぐらいになったら、焼き戻し油、185℃、に投入して45分おきます。これで焼き戻し完了。

焼き戻し油はステンレスのバットに入れて電気炉のなかで185℃に保つような設定にしておきます。

以上が、私の工房の焼き入れです。

反りはほとんど付きません。7寸で多くて2ミリ。
全く反らないこともあります。平均0.5ミリぐらいです。


始めから最終形態にしておけばいいので楽です。


反りすぎたなと思った場合には平の棟側を叩いて延ばして修正します。簡単です。