藤原敏成名人のナイフ作りには究極の鋼扱いのノウハウがあります。
鉋の刃は究極の性能を要求される刃です。
鉋鍛冶の最高のプロでもサブゼロ処理はしていません。
焼きの強さを上げるのに塩水焼き入れもしていません。
鉋の刃は薄い鋼材と軟鉄の接合材です。
これが問題で接合のとき鉄ロウをつかって薄い鋼材と軟鉄を継ぐのですがこのときに温度が900度を超えてしまいます。
そこから薄い鋼材を鍛造しても鍛造比を稼げません。
ほんとうは全鋼にして焼刃土を塗って刃になる側のみ深焼き入れするのが最高でしょう。
このやり方なら分厚い鋼材から鍛造比を稼ぐことができます。
低温鍛造で高い鍛造比をかせげばセメンタイトの球状化は完璧になり、硬くて粘い組織となります。
藤原敏成名人は白紙2号の太い材料をまず焼きならしします。
これは組織の標準化で鉄の結晶を細かくするためです。
そのあと低温鍛造でナイフの形に火作っていきます。
低温鍛造は理想的には変態点直上の740度ぐらいが理想です。
これだと鋼が伸びにくく時間と手間がかかります。
しかしがまんです。
鍛造が終わったらダメ押しの熱処理でセメンタイトの球状化を行います。
球状化熱処理は電気炉を使えば完璧でしょう。
これを3回やります。
そのあと常温で叩いてHAGANEを締めます。
これで焼入れ前の処理は終わりで、あとは形を最終型に近く研削します。
このあと焼き刃土を塗って刃になる部分をおとし、740度で焼入れします。
740度になったらただちに水中に投入します。
長く変態点以上にさらしてはいけません。
水は10%の塩水です。
焼きがはいったら100度で30分湯戻しして液体窒素で3時間のサブゼロ処理をします。
さいごに185度の油のなかで45分やき戻しを3回しておわりです。
究極は時間と手間がかかりますね。
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