サブゼロ処理はなぜ必要か? | ―正宗の名刀は再現できる―

―正宗の名刀は再現できる―

自身を「スーパーメーカー」と称する鋼の研究者、古屋道正です。
世界に3人しかいないダマスカス鋼の再現者の一人です。
鉄・鋼に対するあくなき探究心を、ブログに少しずつ書き記していきます。名刀細川正宗は再現することができることを知っていただけることでしょう。

 焼入れすると焼きの入った部分には必ず残留オーステナイトが発生します。


 これはMs点のはるかに下の温にMf点があるからです。


 前者は250度付近にあり、後者は炭素量が高いと0度以下になり、オーステナイトがマルテンサイトに変態するには0度以下にする必要があります。


 時間の経過とともにマルテンサイト化出来なかったオーステナイトがマルテンサイトに変化して少し膨脹してきます。



 ひどい時には置き割れといって刃にピンと刃切れが生じます。


 正確な寸法の要求される品物には経年変化が必要以上とされます。


 長い年月寒暖にさらされた焼入れ後の製品は安定した状態になります。


 だから古刀のほうが信頼されるのは時間が味方になっているからです。


 これはほとんどが残留オーステナイトのマルテンサイト化によって起きます。


 その経年変化を焼入れ後すぐに起こさせるのがサブゼロ処理です。


 マイナス80度以下に焼入れ後冷やすと残留オーステナイトがマルテンサイトに変わり焼入れ組織は安定します。


 何百年の経年変化を一挙に達成することが出来ます。


 鉋やノミのような刃物、ヤスリのような刃物にもこれがなされれば最善のハモノトなりますが誰もいないやっていないのはなぜでしょうか?


 わたしが作る刃物はすべてサブゼロ処理します。



 このまえ液体窒素でサブゼロ処理したところ結果は上々でした。



 サブゼロ処理したところの前に100度のお湯で煮てストレスをとってから液体窒素に投入します。


 数時間後に取り出して水煮投入します。

 
 その後185度のテンプラ油のなかで45分の焼き戻しをします。


 これは3回ぐらいするといいようです。


 兵庫県三木市に藤原敏成さんというハンティングナイフ鍛造の名人がいますが次回はかれの方法論を紹介します。



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