手術は意識がはっきりしている中、行われましたが、局所麻酔のお陰でどうにか痛みは感じずに無事、終えることができました。
車椅子に乗せられ、付添いの看護婦さんと表に出ました。
病院の前で迎えの車を待ちました。
わたしの想い。
うーん。
なんとなく覚えているのは朦朧としながらも(大丈夫、大丈夫、わたしはRIGHT ON TRUCK に居る。(正しい軌道の上に居る)。標準治療をする準備をしたんだ、大丈夫、大丈夫)と、言い聞かせていたように思えます。
4月でしたが体中が痛いような日差しの昼下がりだったことを覚えています。
我が家のおっ様が15分ほど遅れてやってきました。
1時間以上も待っていたような気分だったのを覚えています。(笑)
助手席に毛むくじゃらの男性が居ました。
車が到着したと同時に、すぐに気が付きました。
メキシコ人の義弟、でした。
↓2017年 5~6月↓わたしの愛する義弟と。
この時、義弟はバカンス中で、アイルランドの旧友に会った後、欧州を一周して、ちょうどサンフランシスコに到着したところでした。
癌が発覚し、化学療法のため手術をするわたしを想い、心優しい義弟は母国に帰る予定を変更して我が家のもとに駆けつけてくれたのです。
ここで、我が家の複雑な構造をすこしばかりお話させていただきます。
義弟はメキシコ人です。ジェリーと言います。パートナーとは異母兄弟です。
義弟と正式に出会ったのは2015年です。
わたし達が現在の家に移る前のことでしたから、IRVINEという街に住んでいた時分です。
春だったかな~。陽だまりが優しい昼下がり。
突然、固い表情の彼がオフィスから出てきました。
『大事な話がある、君の意見を聞かせてくれ』。
彼のFacebookに1通のメィルが届きました。
見知らぬ男性から写真付き、プロフィール付きのメィル。
しかも毛むくじゃら(あまり関係はないか)
『I think……….. you are my brother』
ひとこと、とても注意を引く、重大なメッセージがありました。
メィルには、義弟と一緒に写真におさまるパートナーの父親らしき人物の写真も添えられておりました。
わたしはパートナーに聞きました。
わたし『あなたは、どうしたい?』
彼 『わからない。今まで、父親は死んだと思っていたし、弟がいるなんて知らなかったし……』
あまり動揺をしない彼が初めて、動揺、を見せた日、でした。
わたしは彼の複雑な心境をヨソにすこし、実は、とても、興奮していました。
相変わらず、不謹慎極まりないわたし。
悪気はないの。彼の気持ちもわかるの。だけれども、興奮してしまう、わたしの性体。性分。変態性分。すまない、相棒、と思います。
(ええええええなんていうドラマチック弟がいたなんて!わーーーーーおわたしだったら手放しで喜びたい会いたい)
わたし、単純、ですね。
言葉にして言わないものの、内心はワクワク。
デリケートな問題なのは重々、承知していたつもりでいたのでわたし自身は平静を装っていたように思えます。
彼とは真逆の意識、でした。
パートナーは慎重でした。彼は衝撃の中に居ました。悲しみ、怒り、……。
想像にかたくはない、ですが、かたい、です。
本音。
わたしは、あまり、理解が、できて、は、いませんでした。
文化の違いは大きいです。
基盤が、ぐちゃぐちゃな家庭で育った彼を100パーセント、理解すること。
それはわたしには、できません。昔はしようとしました。努力して、わかろうとしました。
でも、ダメ、でした。
なので、わたしはこれを『わたしが、コントロールしようとしても、出来ないもの』、として捉えるようになりました。
そうしたら、楽になりました。
本当に楽になった。
悲しいけれど、わたしは彼にはなれません。
わたしは昔。なんでも、自分でこなそうとしてきました。なんでも、自分でコントロールしようとしてきました。でも、間違いでした。
(これについてはまた別の章で)
わたしのパ―トナ―。
彼は貧困の出です。また、想像をはるかに超えた劣悪な環境で育ちました。詳細は現段階では避けますね。
(きっと彼はopenにすることに躊躇はありませんね。何故なら、彼の歴史を知ることで、どなたかに勇気や夢を与えることが出来るのではないか、とわたしと彼は考えているから、です。ですが。家族会議をしてからにしますね(笑))
はい。
そんな我が家のおっ様。
今まで父親が生きていることさえ知らず、生活保護を受けるシングルマザーのもと、二人の幼い妹たちを面倒見ながら生きてきたひと、です。
ましてや、他にも兄弟がいるなんて。しかも、メキシコに!!
彼には澱み、がありました。黒い、オリ、がありました。
父親に対して言われもないような感情、があったのですね。
彼にとって『父親像』というものは、
黒いクレヨンで塗りたくられたような、
暗く重苦しいもの、なのでした。
次に続きます。