葬式の当日の朝を迎えた。


通夜だけでなく葬式の日にもたくさんの人達がやってきてくれ、母のためにたくさんの涙を流してくださった。

葬式が終わり、いよいよ母の棺桶が閉められる時間となった。

ついに母の身体と永遠の別れとなる時間がやってきた。

棺桶に眠る母の体の上には、母のお気に入りの着物をかけてあげた。

寂しくないように、家族の写真や、闘病中に友人からプレゼントされたぬいぐるみも一緒に入れてあげた。

そしてたくさんの人達が次々とお手紙やプレゼント、お花をたくさん詰め込んでくれた。

母の体の上は、たくさんの物で埋められてしまって、もう母の手を触ることも、体に触れることもできなくなってしまった。


唯一、棺桶の小窓のところから
顔だけが見える状態になった。



そして式場でみんなとお別れをし、
母の体は霊柩車で火葬場へ運ばれていった。
火葬場へは限られた身内だけがついていった。


火葬場に着いてからは、あっという間に母が火葬炉へ運ばれた。こんなにも早くお別れするとは思っていなかった。

最後に棺桶の小窓を開けて、母の顔を見つめた。

もう、お母さんの顔を見納めだ。

お母さん。
天国で元気でいてね。
私たちもがんばるから安心してね。

そう話しかけながらも、

お母さんが焼かれてしまう…!
お母さんがいなくなってしまう…!

そんな感情で胸がいっぱいになり、
こころが張り裂けたように苦しくなった。

もう感情を押し殺すこともできずに私たちはまた声を上げて泣き崩れた。

いやだ、お母さんいかないで!
お母さんと離れたくない!
置いていかないでよ!!
お母さん…!!!

私も、妹も、弟も、
みんなで棺桶にしがみついて、大声で泣き続けた。


泣くことが苦しくて
こころが壊れてしまいそうなくらい、
本当に本当に辛かった。


それでもお別れの時間はやってきて

「これで、ご遺体とはお別れとなります」
と火葬場の職員に言われ、私たちはもう母の棺桶から離れるしかなかった。

棺桶から離れて、私は祖母に抱きついた。


ばーちゃん!
お母さんがいなくなっちゃうよ!ばーちゃん、
さびしいよぉ。いやだよぉ。

私は、祖母と抱き合いながら
ワンワン泣きじゃくった。

そんな中、「どなたがボタンをおしますか?」とまた職員に聞かれた。

「私がおします」と、父が名乗りでた。

みんなで歯を食いしばり、
涙をこらえて父が火葬ボタンを押すのを見守った。



そして父が、
最愛の妻である母の体に火をつけるボタンを押した。





このとき父がどんなに辛かっただろうと思う。


お母さん…
お母さんを安心させてあげたくて
ほんとは笑顔で見送ってあげたかったよ。
でもいっぱい泣いてしまった。
ごめんねお母さん。


許してね。


お母さん。体は熱くなかったかな。
お母さんが焼かれてしまうなんて考えるだけで辛かったよ。