到着してすぐ、主治医に呼ばれた。

亡くなる当日に撮影したCT検査の結果説明だった。


学会から帰ってきた医師も母の急変ぶりにびっくりして、慌ててCTを依頼したとのこと。

進行具合を見るためにCTをとると説明すると、
母も同意したという。

そのCT撮影でベッドをフラットにした時から意識がなくなってしまったと…


「右肺の腫瘍ですが、左肺にも転移してわずか1週間で両肺が全て腫瘍にうめつくされてしまいました。
心臓のすぐ近くにあったので進行が早かったんだと思います。このスピードの早さには僕もびっくりしています。もう両肺は全て腫瘍ですので、お母さまの肺は空気を取り込むことはできず今は、もう機能していない状態です。抗がん剤がきいているとおもっていました。力不足ですみませんでした。
延命措置をしても時間稼ぎ程度のものとなり、正直厳しいです…」

主治医は、申し訳なさそうに説明してくださった。

それはつまり、もう母の命が助からないことを伝えていた。

家族みんなが泣いていた。


私は、


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そうですか。
わかりました。



としか言えなかった。

でも、状態が悪くなっていることの連絡くれなかったことにはどうしても納得がいかなかった。


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​先生、母の治療を一生懸命にしてくださってありがとうございました。
私たちも母も先生にはすごく感謝しています。
抗がん剤が効かなかったことは、残念ですが仕方ないです。

ただ、なんで母の状態が悪くなった時にすぐ連絡してくださらなかったのですか⁉️
入院したとき、1番最初にお願いしていました。私は遠方に住んでいて移動に時間がかかるから、状態が悪くなってきたら、すぐに連絡が欲しいと…

今回、先生が学会で不在だったとお聞きしました。
先生がいなくても、モルヒネを使う状態までであったなら、病院から連絡は欲しかったです。

私は、意識があるうちに母のそばにいたかったです。
もう母と会話もできず、悲しいです。1番大事な人の死だから、そばで見守りたかったです。
これからの患者さんのために、家族のそんな気持ちがあるということも、考えてくださると嬉しいです。




私は、泣きながら伝えた。
弟と妹も、私の隣で泣いていた。
先生は、「本当にすみませんでした。」と言ってくださった。

もうこれ以上、連絡がなかったことを責めても仕方ない…

お母さんが助かるわけじゃない。
今までお世話になった先生を責めたいわけでもない。

ただ…
苦しんでいる母のそばにいられなかった自分。

本当に責めたいのは自分だった。
すごく悔しかった。


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​延命措置はしないので、残りの時間は家族だけで過ごさせてください。
心停止したら連絡します。


そうお願いして、家族だけで個室で看取ることを決めた。

医師の説明が終わってからは、もしかしたら母が助かるかもという希望は全てなくなり、ただただ、母の命が尽きるのを待つだけの辛い時間となった。


お母さん、ずっとそばにいるから。
大丈夫だからね。
みんなで一緒に過ごそうね…