しかし、今回の滞在(15日間)が本業務での最後の現地活動となる。
集大成とのことで、東ティモール大学工学部と、公共事業省の農道分科会で成果の発表を行った。
大学での発表の様子(約20名の土木系の学生さんと教官の方が参加)
農道分科会での発表の様子。東ティモール国で農道整備事業を実施する公共事業省、他に職業訓練やコミュニティ開発、農業政策の視点から農道整備を行う事業主体が集合する。
公共事業省をカウンターパート機関として、オーストラリアのODA実施機関とILO(国際労働機構)が農道整備事業を立ち上げ実施している。
公共事業省は国道や県道整備に手を取られるためか、農道整備事業への人材の投入が充実しているとは言えず、むしろ支援機関に属する国際コンサルタントたちが一生懸命になっている。
農道整備方針や、整備基準、仕様を決定し統一させていこうとする動きがある。
農道であるから交通量は少ない(一日50台未満)。しかし、急峻な地形、集中豪雨を考慮すると、8%以上の勾配箇所ではコンクリート舗装、または浸透式マカダム舗装の適用を検討している。
コンクリート舗装
浸透式マカダム舗装
確かに勾配部の砂利舗装では、一度目の雨季で表面にガリーができ路面の浸食が進んでしまう。
一体、誰がこの国の農道整備をしていくのだろう?独立後10年が経過したところで、国の運営にドナー機関の協力が必要なのはよく理解できる。短期間で傍から見ての印象でしかないが、この国の行政官は協力してもらう事業の運営に追い回されているような感じがする。
いい仕様で農道整備が進むことは、誰も反対しないだろう。国道や県道はどんな様子なのか?国としてどういう段階を経てどう成長していくのか?そんな全体構想が見えないと、農道の仕様はどうすればよいか、という議論がバランスが取れないものになるような気がしてしまう。(舗装の適用を8%以上の勾配としていることを15%、基本の路面は砂利舗装とすること、砂利の厚さは15 cm, 路面横断方向のかまぼこ型の勾配は8%としてはどうかと思っている。)
同様の事業を行ったパプアニューギニアでは、道路省の事務次官から「どういう仕様で農道を作ってほしい」と言われたことがなかった。ないないづくしの環境でも、住民が協力して現地の材料を有効利用して最大限通行性が向上できるように整備してほしい、というメッセージをもらい、事業の応援をしてくれた。
パプアニューギニアも開発途上国のひとつであるが独立後39年がたつ。道路省内に外国人アドバイザー、コンサルタントもいるし、多くの協力事業が実施されている。それでも道路政策の決定やその実施はこの国の人材が行っている。自らの出身地の道の様子を踏まえての、農道整備へのコメントだった。
多様なドナー機関が元気なうちはその意向でインフラ整備が進む。だんだん被援助国が自立していくとき、かつてドナー機関に作られた規格や仕様で回らないものが出てくる。
ケニアでは長年協力事業が実施され農道が改築されてきたが、維持管理が進まず道路状態が悪化している、という報告がある。
2013年、ケニアでは現地材料の有効利用と住民(特に若者)雇用につながるような人力施工での農道整備が、道路整備5ヶ年計画の中で明記された。
ひょっとすると、開発のサイクルなのかもしれない。東ティモールでは今日のところ、高規格で農道整備仕様が決定されていきそうだ。約3,000 kmある農道を、ひょっとするとドナー機関がすべてその規格にまで整備してしまう勢いでもある。
こうした舗装には大型の機材が必要とされる。その機材を所有する施工業者により請け負われ、近隣住民を労働力として活用し作業が行われる。
コンクリートミキサー、派遣先事業でも利用が好ましい機材の一つとしてコンクリートミキサー購入を提案したことがあった。しかし、派遣先事業では住民参加の視点を重視するとのことで、ミキサーの利用は検討されていない。手押し式1トン未満のハンドローラーが唯一利用が認められた機材である。
施工業者が所有する3~5トンクラスのローラー
コミュニティ参加で行う道路整備として、利用が認められたハンドローラーによる砂利の締固めの様子