JICAが実施するケニア中南部持続的小規模灌漑開発・管理プロジェクトで住民自らが建設、管理している灌漑施設があり、日本人専門家の方が現場を見に行かれるというので、同伴させていただいた。ナイロビから約200 km、マサイマラという有名なサファリパークのある県、Narok South Districtへ向かった。道中、リフトバレーを一気に下る。野生のキリンが見えた。今回ケニアに来て初めて見る野生動物だ。
まずNarokで、District Irrigation Officerの事務所を訪ねた。Narok県の灌漑施設を管轄するエンジニアだ。プロジェクトではエンジニアのレベルアップに向けた研修も実施していて、なんとつい最近までAuto Cadという図面を書くパソコンソフトの研修をしていたという。エンジニアがノートパソコンで、書いているAuto Cadの図面を見てびっくりした。使っているソフト、ツールに関しては既に先進国並みだ。専門家の方に言わせると、本来は手書きから始めてこういうソフトを利用すべきだが、現地のエンジニアは最先端の技術に興味を持つという。事務所には業務の迅速な遂行のため、JICAが支給したパソコン、プリンター、スキャナーが装備されていた。
District Irrigation Engineer のオフィス
ここからさらに約1時間半いったところに、ケニア中南部持続的小規模灌漑開発・管理プロジェクトで対象とする灌漑施設とそれを管理するコミュニティがある。
この地域は半乾燥地域で、住んでいるマサイ族はヤギやウシの放牧で生計を立ててきた。近年、さらに食料の確保のためにトウモロコシ、野菜の栽培を始めている。そこで必要となるのが水である。
私が属するプロジェクトでもこれまでの調査の結果、対象とする農民グループからは灌漑施設の要望が多いようだった。今回の現場視察に同伴させていただいたのは、これらの要望に応えるにはどのような対策があるか、ヒントを得ることが目的の一つである。
灌漑施設を見て水が必要という切実な思い、そしてマサイの力には驚かされた。下の写真は彼らが自分達で作った小規模なダム、また水を谷地の対岸へ渡すために作ったパイプ(水道橋?)である。
写真下側が川の上流側
ここで水をせきとめ、左側が灌漑のための水路となっている。
下流側から撮った写真
丸太やSandbagで高さ約1 m程度のダムを築いている。
雨季に河川が増水時には流されてしまう。そして乾季にまた建設するということを繰り返している。現場視察を実施したプロジェクトではこの施設を補強することが業務内容となっており、コンクリート化されるという。
私たちのプロジェクトでは、まずこの段階(自然材料をつかい自分達で水を得る工夫をする、雨季に流されても乾季にまた自分達で構築できる。)を目指すことになる。
水を管理するコミュニティが自分達で材料を調達し、自ら作成した。
途中、小さな川を横断する橋がありました。
パイプの到着点です。約200mの長さでした。
ケニアで住民自らが構築している灌漑施設をこの目でみることができ、貴重な体験だった。私たちのプロジェクトでは、「土のう」を使った小規模ダムや水路の壁補強など、住民自身ができるインフラ整備を推進していきたい。また、各グループの現況にあわせて、こうしたプロジェクトの紹介、サイトの紹介と見学ツアーの実施、District Irrigation Officerと住民グループの橋渡しなどできることを進めていく。
下の写真は今回の現場視察でお世話になった専門家の方、またカウンターパート(水灌漑省、水灌漑部門の副部長)と水を管理するコミュニティの話合の様子である。伝統的な衣装を着ているマサイの人たちが印象的でした。