今日のテーマは、『金融センター:香港に、近年訪れている異変』です。
数日前から、
クライアントの皆さんと香港渡航している事は、
SNS等でも情報発信していますし、昨日の公式ブログでも述べました。
ここ数年は、
年間5、6回のペースで訪れていますが、
私自身、ちょっとした『非日常』を味わう場所であり、
リフレッシュするのに丁度良い期間を楽しんでいます。
初めて訪れたのは、今から約7年ほど前。
その頃は、
中国本土を結ぶ高速鉄道(新幹線)も未だ建設中で、
現地不動産市場は、『今買えば、5年後には2倍(で売れる)』と言われる時代でした。
今でも、
初めて訪れるクライアントさんは、皆さん驚かれますが、
私も、初渡航した際は、街の、人の活気にとても刺激を受けましたね。
特に、
東京をはじめとした関東方面からよく聞かれる声が、
『街行く人の顔が明るい、エネルギーを感じる』というものです。
確かに、
それは、私が初渡航してからずっと変わらないもので、
象徴的なのが、日付をまたぐ時間帯になっても、
街中にはオープンしている見でも多く、人も溢れています。
普段、
大阪・梅田近郊の中心部に自宅兼事務所を構えていますが、
日本2番目の大都市においても、ここまでの賑わいは無いですね。
もともと、
国家・自治体というレベルでは土地も狭く、
人も、資源も、産業もほとんど十分に持つことがなかった『香港』。
夏はうだるような暑さが続き、
電気・水道といったライフラインまで、中国本土からの輸入に頼らざるを得ない街。
『都市』としては致命的な状況にあるにも関わらず、
現在のような『ヒト』『モノ』『金』を集めるのは、
それだけ『金融センター』というメリットが魅力的だからでしょう。
特に、
現地では明確に区別される『中国人』の方々は香港が大好きで、
陸路で入れる上、良質なものが『低コスト』で取得出来るのが、この街の魅力です。
反対に、
現地・香港の方々は『香港人』としてのプライドを持っており、
大陸本土の『中国人』と一緒にされるのを、基本的に嫌います。
この辺り、
関西にお住いの方々はイメージがつきやすいと思いますが、
『京都』『神戸』出身の方々が、『大阪人』と言われるのを嫌うのと同じです(笑)
そこには、
しっかりと、その土地に根ざして生活してみないと分からない、
とても『センシティブ』『ナイーブ』で有りながら、『明確な差』が存在します。
あまり知られていませんが、
現地のトップ大学『香港大学』は、
世界大学ランキングでは『東京大学』と並ぶほど優秀な学生が集まります。
そして、
その『優秀な学生』が大学を卒業してからも、
世界有数の有名企業が、彼らの就職先として『受け皿』になる。
このような環境もあって、これまで、
香港に生まれ育った方々は、そのまま香港で居住し続けることが主流でした。
その状況に、近年、異変が見られていると言います。
18歳から30歳未満までの若者を中心に、
香港外への『移住希望者』が、ここ数年間で急増していると言うのです。
香港中文大学に調査によると、
2018年現在、18歳から30歳の香港居住者で、
香港外への『以上希望者』は、実に、過半数超えの『51%』に上りました。
この数字は、前年比『5.5ポイント』増加です。
その理由としては、
『政治的な対立が多すぎる』『政治制度に不満』等々あるようですが、
最も大きな要因は、『人が多くて住環境が悪い』というものです。
より分かりやすく言うと、次のようになります。
『居住費を始めとした生活コストが高過ぎて、生活出来ない。』
実際、
香港内での『住宅価格』は、平均世帯年収の『約20倍』と言われており、
『米国:約4倍』『カナダ4.3倍』等先進諸国内でも突出した数字になっています。
あまり好意的に捉えられないかもですが、この数字というは、
9年連続で、世界の主要都市で『最も住宅を手に入れにくい都市』を表しています。
仮に、
日本の平均年収を分かりやすく『400万円』と考えると、
平均して『8000万円』ほどの購入価格になりますから、
その金額の大きさがお分かり頂けますよね。
更に、
そのような『高額』を支払ったとしても、
日本人がイメージする『8000万円』の住宅が手に入る訳ではなく、
せいぜい『2000万円』程度の物件が購入できるレベルなのです。
要は、
日本の住宅価格を『基準』として考えるならば、
その原価の3倍ほど『プレミアム』が乗っている計算になります。
事実、
前述した、『エリート』である香港大学卒業生たちでさえ、
世界トップのコングロマリット企業に就職していながらも、
新卒社会人での『一人暮らし』など、『夢のまた夢』です。
こういった状況に、
将来的な希望を見出せなくなった若者たちが、
愛着ある『香港』を捨てて、外の世界へと活路を見出そうとしていると言います。
『金融センター』という享受できるメリットを捨ててでも、
そのような選択を取ることは、一昔前ではなかなか考えられませんでした。
『金融』に限らず、あらゆる分野で、未来永劫続く『絶対』は存在しません。
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井上耕太事務所
代表 井上耕太