声楽家と言っても
色んな声種があります。
男声は低い方から
バス
バスバリトン
バリトン
テノール
これは純粋に声域で分けただけ。
それぞれの声域内で
ドラマチックとかブッフォとか
リリックとかレッジェーロとか
声質によってもまた区別されます。
例えばロッシーニなどの
軽快な役をレパートリーにする
低音域がよく響く声の人は
バッソブッフォと呼ばれます。
ヴェルディのドラマチックな曲を
レガートにカンタービレに歌う
ドラマチックなテノールもいれば、
ベッリーニで主役を歌うような
リリック/レッジェーロなテノールも。
歌う音域は同じでも、
曲の性質やキャラクターによって
違った声質が求められます。
女性も同じように
低い方から
コントラアルト
メッゾソプラノ
ソプラノ
それぞれ同じように
ドラマチック、
リリック、
レッジェーロ
とキャラクター/声の質で
更に分けられていきます。
声は生まれつき
明るい響きや深い響き
軽く繊細な声もあれば
ダイナミックな強い声もあります。
背が高いとか顔が丸いとかのように
変えることができない性質です。
反対に、
音域に関しては、
訓練次第で獲得していくことが
ある程度可能です。
若い頃は出なかった高音が
テクニックを習得して
出せるようになる事もあります。
反対に
若い頃は楽々出ていた音が
歳とともに苦しくなってくる事も。
テクニックが未熟なまま歌い続けて
声帯やその周りの筋肉の衰えによって
若い頃のようには歌えなくなる
そんな歌手は多いです。
「何かおかしい」と気づいて
テクニックを学び直して再出発する
そんな歌手もたくさんいます。
テノールのドミンゴや
ソプラノのカラスのように
歳をとって高音が辛くなって
バリトンの役、
アルトの役を歌うという人もいます。
ウルマーナのように
メゾでデビューして
ドラマチックソプラノに転向し
でもやっぱりメゾに戻る例も。
彼女の場合は
声域はどちらでもいけるけど、
キャラクターや声質で役柄を選べた。
ヴィラゾンは
ドラマチックテナーでデビューして
若さでいけてた声が
一旦破綻しかけたけれど
テクニックを磨き直して
モーツァルトで再出発した
頭の良さがわかるキャリア。
ロマーノさんが昔バスで歌っていて
今はバリトンに転向したと書きました。
彼は昔から低音がよく響いて、
アカペラのアンサンブルや
合唱で重宝されていました。
そんな訳で、
オペラを歌い始めた時も
バスのレパートリーを歌っていました。
ただ、
オペラには絶対欠かせない
バスの役柄は結構多くて
オペラの仕事は掃いて捨てるほどある。
でもアリアだけ歌われるコンサートでは
やっぱりバリトンが人気なんです。
主役級の役は殆どバリトンですからね。
いざバリトンのアリアを歌ってみると
案外歌いやすい！
じゃあオペラ全曲歌ってみるか？
という訳で、
スカルピアとか
ジェルモンパパとか歌い始めてみたら
これがなんとも大好評！
リゴレットも主演するように。
低音も相変わらずよく響いてますが
高音もスパーンと綺麗に出る。
でもアッティラとか特殊な例を除いて
だいたい主役級はバリトンなので、
すっかりバリトン歌手として
名前が定着してしまったロマーノさん、
スパラフチーレとか
フェランドとか
ドン・バジリオとか
脇役の仕事はこなくなりました。
歌おうと思えば歌えるんだけど
やっぱり主役級歌い始めると
脇役は歌えない。
歌えないというより
キャスティングする方も、
よっぽど主役陣のレベルが高くないと
ロマーノさんに脇役なんて
畏れ多くて依頼さえできない。
トムクルーズに
シンデレラのお父さん役させるような
(一瞬しか登場しない)
嫌とは言わないかも知れないけど
お願いするのも憚られるみたいな、ね。
今回のボエームは
企画が昔からの知り合いで
息子のロレンツォくんがショナール。
息子くんがいなければ
多分引き受けなかったでしょう。
10年以上前にコッリーネ歌った時
(緊急の代役だったっけ)
ミミもロドルフォも
ムゼッタさえも拍手が無かったのに
(まあねそんなレベルだったから)
ロマーノさんが歌った
コッリーネのアリアには盛大な拍手！
鳴り止まなくて困ったことあります。
主演歌手を食っちゃうコッリーネ。
そりゃあ脇役の仕事
声かからなくなりますわ
息子くんが主演するなら
ドン・バジリオも歌うと言ってます
親心ってこんなんなんですね〜。
私だったらどうだろう。
娘がいたとして、
歌手を目指したとして、
蝶々さん歌うと言い出したら
スズキでも引き受けただろうか？
いや、
多分客席で見守る方を選ぶかな。
でも企画に頼まれたらやるかな〜。
わからんな〜。
こればっかりは。
ロマーノさんがコッリーネ歌う
プッチーニのボエーム
レアですよ！
是非お聴き逃しなく！
