日本の経済の根本的な改革の裏には必ず潜んでいるのが「年次改革要望書」だ。(以下、年次要望書と略)
しかし、年次要望書はマスコミでほとんど報道されることがない。
(正式名称は「日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく要望書」)
年次要望書に基づく根本的な改革はいつも訳が分からないことが多い。
つまり「目的が分からない」、「どこが日本の役に立っているのか分からない」ことが多い。
ただそれは当たり前で、年次要望書は、アメリカが日本に対して、アメリカが有利になるように、アメリカの得になるようにするには日本の経済のどの部分を変えさせたらいいかを精密に考えて設計して、要求してきているものだからだ。
それは例えば、
○ 郵政民営化(アフラック等アメリカの保険会社・金融商品等の大々的な日本進出)
○ 人材派遣自由化(労働者派遣法改正、派遣・バイトなど非正規労働者の急増により貧富の格差が拡大、少子化促進)
○ 大規模小売店舗法廃止(郊外の巨大ショッピングモール解禁により日本国中の商店街の消滅)
○ 弁護士大量増員(司法制度改革、法科大学院設置、裁判員制度導入、海外巨大法律事務所の日本進出)
○ 道路公団分割民営化
○ 建築基準法の改正(2000年、耐震基準を緩め、海外の工法や資材が大量流入)
○ 三角合併の解禁(外国企業による日本企業買収の容易化、ハゲタカファンドのМ&Aがブームに)
○ 賞味期限導入(製造年月日廃止により海外からの輸入が有利に、食品ロスの激増)
○ 個人情報保護法(?要確認)
などだ。
□ □ □ 食品ロス急増のきっかけ・賞味期限導入 □ □ □
最近はSDGsの流行により食品ロス・食品大量廃棄が社会問題となっている。
食品ロスを少なくするために一番のキーポイントとなるのが賞味期限だ。
賞味期限があるために、家庭でもスーパーでも卸問屋でも賞味期限前にせっせと食品を廃棄している。
しかし、賞味期限はあくまでも「美味しく食べられることをメーカーが保証する期限」のことであり、その期限が過ぎたら腐ることを意味しているのではない。
賞味期限は、食べられる期間の半分程度に設定されていることが多い。つまり例えば1年の賞味期限が過ぎてももう1年程度は味をうるさく言わなければ食べられないことはない。
この賞味期限もアメリカの要望によって導入されたものだ。
日本は元々、製造年月日のみの表示を義務付けていた。
そして保存期間として半年とか1年とかかなり大雑把な期間を表示し、時間が経って食べられるかどうかは消費者が各々自己責任で判断していた。
この製造年月日の表示は、輸入するのにどうしても時間がかかる海外からすると大きな障壁だった。
このためアメリカは日本に対して製造年月日の表示をやめさせ、賞味期限の表示のみとさせることによって、輸入食品が「古い」というイメージを払拭することに成功した。
この食品ロスと賞味期限の問題については、このブログではすでに約6年前に下記の記事で取り上げている。
「食品の大量廃棄、この膨大な社会的ロスのきっかけは?2015-11-02 19:46:03」
(最近、SDGsが流行っているから食品ロスを取り上げたのではない)
□ □ □ 人の労働力を商品化した派遣自由化 □ □ □
「ジャパン・アズ・ナンバーワン」で日本経済の強みであると分析されたのは、年功序列と終身雇用だった。
かつて日本では、学校を卒業した後に会社に就職すると一生、職が保証され、毎年給料が上がっていった。
これは確かに会社に対する忠誠心が非常に高くなる。
正社員が多く給料も確実に上がっていくため日本国民の購買力は高く、内需もどんどん上がっていった。
この日本経済の強みであった年功序列と終身雇用を破壊したのが、人材派遣の自由化・労働者派遣法の改正である。
この労働市場の自由化によって、人間の労働力自体が商品化されることになった。
つまり人は「1時間800円~1000円程度」で売り買いされる存在となった。
派遣やバイト、パートなどの非正規労働者が増加し、正社員が減少することによって、年収200万円~300万円以下の世帯が増え、国民の購買力・内需が先細りし、晩婚化・少子化・人口減少が加速していくことになった。
□ □ □ 年次要望書に歯向かって消えた政治家、のした政治家 □ □ □
○ 亀井静香(消えたわけではなく、政権の中枢から遠ざけられた)
○ 小林興起
○ 城内実
○ 鳩山由紀夫
○ 評論家・森田実
年次要望書は、2009年、民主党政権発足後、鳩山由紀夫政権時に廃止したことになっているが、名称は変更されたとしても同じような要求リストはあると考えるのが妥当だろう。
特に、自民党政権が復活してからは。
のした政治家
○ 小泉純一郎
○ 安倍晋三
○
○
○ 竹中平蔵
年次要望書によってアメリカが有利になるように帰られてきたことがらを見ていると、歴代自民党政権が年次要望書の要求通りに日本を変えてきたことがよく分かる。
これが年次要望書は「自民党のマニュフェスト」だと言われるゆえんだ。
ついでにアメリカに歯向かって消された政治家
○ 田中角栄(米に相談せずに日中国交正常化を実現、米発のロッキード事件で失脚)
○ 小沢一郎(「在日米軍は撤退させ横須賀の第七艦隊だけでいい」と主張、米より中国重視の政策により失脚)
○
○
□ □ □ アーミテージ・レポート □ □ □
日本の安全保障・国防政策・軍需産業に重大な影響を与えているのが「アーミテージ・ナイ・レポート」(以下、アーミテージ・レポートと略す)だ。
アーミテージ・レポートは、アメリカが日本に対して、国防政策を求めている。
アメリカにとって望ましい日本の国防政策を要求したものだ。
執筆者は、米随一の知日派・「ジャパン・ハンドラー」などと呼ばれる米元国務副長官・リチャード・アーミテージと元国務次官補・ジョセフ・ナイ(ハーバード大学教授)だ。
(猿田佐世によると、アメリカで本当に対立政策の立案に大きな影響を持つ者は「5人から30人ほど」だという。)
このアーミテージ・レポートは、イラク戦争(2003年)の際、「ショー・ザ・フラッグ」(旗を見せよ)、「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」(戦地に立て)との言葉で有名になった。
つまりイラク戦争の現地に自衛隊が降り立ち、日本の国旗「日の丸」をはためかせろと要求したものだ。
それは、それまでの湾岸戦争(1990年)などでは日本は憲法九条との兼ね合いから自衛隊を海外派遣できないため資金援助に留まっており、
湾岸戦争では、世界最高の約2兆円を援助したにも関わらず、戦後のアメリカと侵略されたクウェートとの共同声明の中で、約70か国に感謝したが、その中に日本が入っていなかったことも頻繁に喧伝されることだ。
アーミテージ・レポートはこれまで例えば、
○ イラク戦争への自衛隊の派遣(自衛隊の初の海外派遣の実現)
○ 日米安保の強化
○
○ 集団的自衛権行使の容認(安保法制)
○ 秘密保護法の制定
○ 武器輸出三原則の撤廃
○ 原発再稼働
○
第五次アーミテージ・レポート(2020年)
○ 日米共同作戦強化
○ 日韓関係改善
○ ファイブアイズへの参加
○
トランプ政権では、アーミテージ・レポートは無視されてきたが、民主党のバイデンが大統領になったため、アーミテージ・レポートが今再び注目されている。
日本が数年後、どう変化していくか知りたい人はアーミテージ・レポートを読むべきだ。
(この原稿は書きかけです。随時更新していきます。)