動物は異端を排除し、微生物でさえ異物を排除するなど排除は生物の本能なので、いじめを無くすのは難しい?
はい、「いじめを完全になくすのは難しい」という見方には、生物学的な根拠があります。ただし、「排除が本能だから、いじめはなくせない」とまで言うのは少し単純化しすぎです。
1. 生物には「異物を排除する仕組み」が非常に広く存在する
これはかなり根源的な現象です。
細胞:異常な細胞や感染した細胞を排除する免疫反応がある
免疫系:細菌・ウイルスなどの「自己ではないもの」を認識して攻撃する
微生物:他の微生物が自分の生存領域に侵入すると、抗菌物質などで排除することがある
植物:病原体が侵入した部分の細胞を自ら死滅させ、感染拡大を防ぐことがある
社会性動物:群れの秩序を乱す個体や、外部から侵入した個体を追い払う行動が見られる
つまり、「自分と異なるもの・自分の集団にとって脅威となるものを識別し、排除する」仕組みそのものは、生物界に非常に広く見られます。
2. ただし「生物学的な排除」と「人間のいじめ」は同じではない
ここが重要です。
免疫細胞が病原体を排除するのと、人間がクラスメートをいじめることには大きな違いがあります。
人間には、
「異質なものを警戒する」傾向
だけでなく、
「異質なものを受け入れる」「相手の立場を想像する」「規則によって自分の衝動を抑える」
能力も非常に発達しています。
むしろ人間は、血縁関係のない大量の人間と協力できるという、動物界でもかなり特殊な社会性を持っています。
3. いじめは「排除本能」だけで説明できない
いじめには、
集団の同調圧力
権力関係
仲間内での順位争い
「自分たち」と「よそ者」を分ける心理
攻撃によって仲間内の結束を強める作用
ストレスや欲求不満
見ている側が加担する傍観者効果
など、複数の要因があります。
特に興味深いのは、いじめる側だけでなく、周囲の傍観者も集団形成に関与することです。
「みんながあの子を嫌っているから、自分も嫌う」という同調が起こると、排除が一気に強くなります。
4. だから「いじめをゼロにする」のは難しいが、「大幅に減らす」ことは可能
これは、
排除傾向そのものを完全に消す
ことと、
排除したくなっても、人を傷つける行動に移させない
ことを分けて考えると分かりやすいです。
例えば社会には、
「知らない人を警戒する」→「だから殴る」
ではなく、
「知らない人を警戒する」→「一定の距離を置く・ルールに従う」
という仕組みを作ることができます。
学校でも同じで、重要なのは「人間から排除感情を取り除く」ことより、排除感情が暴力や継続的な嫌がらせに発展しない社会的ルールを作ることです。
したがって結論としては、
「異物・異質な存在を識別して排除する」という傾向は生物に非常に古くから存在する。そのため、人間社会から排除や仲間外れの傾向を完全に消すのは難しい。しかし、人間には共感・道徳・規範・協力という、それを抑制する能力も進化しているので、いじめそのものを大幅に減らすことは可能。
というのが最も妥当だと思います。
そして面白いのは、「異端を排除する性質」と「異端を保護する性質」の両方が、実は人間社会に進化してきたという点です。
質問
あります。ここでいう「異物を排除」は、人間のような意識的な「嫌い」という意味ではなく、自分の生存や増殖を脅かす他の微生物を抑制・攻撃したり、異物を細胞外へ排出したりする仕組みです。
代表例を挙げると:
細菌が抗生物質を作って競争相手を殺す
土壌細菌の一部は、他の細菌の増殖を阻害する物質を作ります。
例えば Streptomyces 属は抗生物質を産生し、周囲の競合微生物を抑制します。
「自分の生存領域を確保する」という意味では、非常に分かりやすい例です。
乳酸菌が酸を作って他の微生物を排除する
乳酸菌は糖を発酵して乳酸を作り、周囲を酸性にします。
その結果、酸に弱い細菌の増殖が抑えられます。
ヨーグルトや漬物で起きている現象もこれに関係します。
細菌がバクテリオシンを使って同種・近縁の細菌を攻撃する
一部の細菌は「バクテリオシン」という抗菌性物質を作ります。
例えば大腸菌の一部はコリシンを作り、競争相手となる大腸菌などを殺します。
これはかなり直接的な「競争相手の排除」です。
細菌が侵入してきたDNAを破壊する
細菌には制限酵素・CRISPR-Cas系など、外来DNAを認識して破壊する仕組みがあります。
ウイルス(ファージ)が細菌に侵入した際、そのDNAを排除する防御として働きます。
これは「自分自身と外来のものを区別して、外来物を排除する」という点で、免疫系に似ています。
原生生物が異物を取り込んで消化する
アメーバなどの単細胞生物は、周囲の粒子や微生物を**食作用(貪食)**によって取り込み、細胞内で消化します。
「異物を認識→取り込む→分解する」という仕組みです。
細菌が侵入者に対して「コロニー防衛」を行う
微生物の集団では、外部から侵入した微生物に対して抗菌物質を作ったり、バイオフィルム内で競争相手の増殖を抑えたりすることがあります。
特に面白いのは、「自己」と「非自己」を区別して排除する仕組みが、単細胞生物にも存在することです。
ただし、「微生物にもいじめのような本能がある」というところまで直接結びつけるのは慎重であるべきです。微生物の場合は基本的に、資源・空間・感染防御をめぐる生存競争として説明できます。
人間の「仲間外れ・異端排除」と比較すると、「自分と異なるものを識別する→脅威となるものを排除する」という非常に古い生物学的原理が、人間では高度な社会心理にまで発展した、という見方ができます。