今夜はテラコッタのお話しをしましょうか。テラコッタというと植木鉢のことを思いだす方が多いのではないでしょうか。赤茶色の素焼きの土器です。 我が家には3体のテラコッタがいます。1体は、京都時代だったかと思いますが、初めてテラコッタなるものを手にいれました。京都の御池通りに面した小さな骨董屋さんで出会いました。この骨董屋さんは妙な店構えで、半分は八百屋さん、半分は骨董屋さんです。聞けば、八百屋を継ぐ予定の息子さんが骨董に関心があり、店の半分を骨董屋さんにしてしまったと聞きました。頭像だけの3センチほどのテラコッタです。3世紀のものだと聞きました。顔の幅が狭く、ふっくらしたお顔です。女性とも男性ともつかない、どちらかというとガンダーラ系の仏像を思わせるお顔です。
ところで、テラコッタとは何語か、わかりますか?イタリア語だそうです。テラは土、コッタは焼く、つまり「土をやいたもの」という意味です。確かにポルトトガル語でも、テラと発音するよりも、テハと発音しますが、スペルはterraで、イタリア語と同じです。たぶん、ラテン語由来なのでしょうか。
土をこねて、天日で干して、最後は火を起こした後の熱い灰の中に入れて焼き固めるという手法は、世界中にあるようです。要するに日干し煉瓦ですね。メソポタミア、古代ギリシャ、エトルリア、さらには中国では秦の始皇帝の兵馬俑、日本では土偶も同じ手法で作られているようです。ひとつひとつ手びねりでつくろというよりも、型にいれて大量に作ったようです。
ギリシャでは、古代にはタナグラ人形といって、墓の埋葬品として、また、装飾用などにもつくられたようです。今でも、ギリシャに行くと、子供のおもちゃらしいのですが、宇宙人のような顔と胴体に、足が2本、ぶら下がっているテラコッタがあります。知り合いがギリシャに行ったときに、そのお土産としていただいたことがあります。そのとき、名称を聞いた気もしますが、忘れました。そんな記憶もあり、京都でテラコッタ像を求めました。
それから、ずいぶんたって、今年に入って2体のテラコッタが続けざまに、私の手元にやってきました。1体は、20センチほどの男性の全身像です。その衣装を見ると、修道僧のようにも見えますし、古代ギリシャの衣装のようにも見えます。その表情は、やや憂鬱な感じです。だから修道僧のように見えるのかも知れません。調べてみると、テラコッタの再評価がなされ、15世紀ごろにも、しきりと作られたようです。こちらも、お値段は合理的なものでした。
そして、もう1体は、つい先日の骨董市で見つけました。お顔だけですが、面白いと思いましたし、お値段も無理のない範囲でした。古代ギリシャかと思いましたが、紀元前5世紀ごろのエトルリアのものだそうです。男性の顔です。エトルリアというのは、ローマ帝国以前の中部イタリア半島で栄えた都市国家です。京都で手にいれたテラコッタは3世紀のものだそうですが、確かに今年に入って、我が家にやってきたテラコッタは素朴ですし、宗教的な感じはありません。骨董市で見つけたテラコッタは、業者さんの携帯電話を通してその持ち主の方と話したところ、紀元前5世紀のエトルリアのものと明言されていました。その方は、骨董や古美術、とりわけ焼物関係の著作もある方ですので、まず間違いはないでしょう。
テラコッタは大きなものですと、古代の神殿を飾るようなものもありますが、骨董市で見るのは全身像でも20センチほど、頭部だけのものならが、数センチですから、場所もとらずに、私たちを古代世界にいざなってくれる、そんなところが魅力ではないでしょうか。
如庵