イーライ先輩の仮説を検証します。

画像は全て、中国ドラマ『永遠の桃花』からお借りしました。



『若水大戦』から7万年、復活した翼君・擎蒼上神を打ち倒して亡くなった夜華君が『無忘海』に埋葬されて3年、今日、天宮では夜華君の『三回忌法要』が営まれた。

これを以て、天宮と天族の『服喪』は解除される。

天族はこの三年間『天族太子の喪』に服していたが、それも今日までのことだ。

法要後、天君は家族を朝堂に呼び集めて内々の話をするべく『策』を練っていた。全ては、桑籍君の長子である元貞の『言動』に掛かっていた。

元貞は従兄である夜華君と、その許嫁だった白浅上神を慕っていた。


天君は頼りにしていた夜華君を失い、空席となった『太子位』を埋めるべく三人の息子と孫二人を呼び出した。

それは、現状考えられる『次善の策』と天君は考えていた。天君には選択肢があまりない。


三年前の事件で傷付いたであろう元貞に謝罪し、「何か『願い事(損害賠償請求における補償)』があれば、何でも叶えよう。」と、言った。

天君が元貞にそう言えば、きっと求めてくるであろうという『願い事(補償)』が元貞にはあると、皆が思っていた。

それは元貞の両親である桑籍君と小辛のことだ。元貞がこの場で『それ』を願い出ることを誰もが知っていたし、期待していた。
「私の『望み』は両親のことです。父・桑籍をお許しになり、『天君の第2皇子』にお戻しください。母・小辛を『妻』とお認めください。天君。」
そう言うだろうと、考えられていた。


皆の意に反して、
元貞の『願い事』は「師匠である白浅上神にお会いしたい。」だった。

天君の長子である央錯君と妻・楽胥は「その『願い事』はとんでもない。」と言った。
この5万年の間『天族太子』だったのは、一人息子の夜華君である。『天族太子』の父母という誇りが二人にはあった。

夜華君に替わる『太子』に桑籍君を就けるため、この『謁見』は設定されたのだ。


天君の次子である桑籍君も、三子である連宋君も、天君の『策』に乗ることになっていた。

桑籍君はまもなく、第四子の誕生が迫っていた。小辛に『身分』を与えることは、子供たちに身分を与えることに繋がっている。

桑籍君が立太子して『天族太子』となれば、小辛は正妻である『太子妃』になることは出来なくても、『側室』として正式な身分を与えられる。
『天后』として立后する際の『天雷』も『轟火』も小辛は耐えられない身であるから、多くを望んではいけない。


全く空気が読めていない元貞であるが、誰もそれを口にすることは出来ない。

天君の『後継者』と天が認めたのは、夜華君である。夜華君には『阿離』という長子がいる。それを排除しての後継者選びだからだ。

下手を打てば、その者は『天』の怒りを買うことになる。


『段取り』がすべて狂ってしまい、顔を見合せる父・桑籍君と叔父・連宋君である。

まさか、夜華君と同じく従弟の元貞も白浅上神に好意を寄せているとは言わないだろうね?と、心配になる。


この場に、天君の外孫である『天女の織越』が呼ばれているのには、重要な理由がある。

『織越』は現在、天族の中で一番高貴な『独身女性』である。夫を選べる立場にあるのだ。

桑籍君を『天君の第2皇子』に戻し、立太子して『天族太子』に据える。しかる後に、人間界で『60年の修行(天劫・生と死)』を終えた元貞は『地仙』から『上仙』に二段階昇格する。

『上仙』である桑籍君の長子の元貞は、『天仙』ではなく『地仙』なのだ。

300歳で『上仙』とは破格の霊格、仙体と言わざるを得ない。白浅上神の指導の賜物である。将来、修行次第では『上神』になることも可能だ。

桑籍君が立太子し、しかる後に『天君』となった際には、長子である元貞を『次期太子』に指名することも可能。

元貞の『正妻』として、隣に従姉の織越が居ればだ。さすれば、二人の間に生まれる子供たちの『霊格』も自然と高くなるだろう。


そこまで見越して、天君は元貞に『謁見』を許した。


この場で『天族太子』と、『次期天族太子とその后』を決めようとしていた大人たちの思惑通りには、上手くいかなかった。


3~4万歳の織越と、300歳の元貞は似合いの従姉弟同士だと皆は考えた。

身分も立場も釣り合うから、似合いの『夫婦』になるだろうと。


…だが、元貞はまだ子供だった。


『師匠』を必要とする子供だった。

元貞は人間界で過ごしたように、師匠である白浅上神の『教え(指導)』を受けたいと考えていた。『仮初めの師匠』ではなく、『本物の師匠』になって欲しいと。


元貞の「白浅上神にお会いしたい。」と言うのは、「白浅上神を正式に私の師匠にお迎えしたいので、天君、『仲介』してください。」という意味である。

ただ、「会いたいです。」という意味ではない。師弟の絆が深いのだ。


元貞の『願い事』は、皆が期待する『両親』ではなかった。

元貞はいま、子供から大人になろうとしているのだ。人間界での修行は、とても良い経験になった。『上仙』に相応しい。


天君の『策』は、『思惑』は灰塵に帰した。

元貞に何を言っても、大人たちの思い通りにはいかないと知る天君。


この場に阿離が居ないのは、従者2名と共に『無忘海』へ父・夜華君に会いに行っているからだ。母の白浅上神も一緒に。





❇️『桃花シリーズ』である『運命の桃花』によれば、人間界で60年の修行をすると、もれなく『四苦八苦』を修行することになる。

私は仏教の大学出身だから、『四苦八苦』と『縁起』についてレポートを書いたことがある。『四苦』とは『生老病死』のこと。

神仙には『生と死』はあっても、基本の『老と病』は無いらしい。

『運命の桃花』では主人公の女性が、人間界に転生してすぐに育ての母に殺されそうになり、成人して後は育ての父に殺されそうになり、許嫁に捨てられて、病の中で死にそうになり、愛する男性の言葉に従って死ぬという散々な目に合っている。

その過程で『地仙』から『天仙』へ、『上仙』へ、『上神』へと霊格が昇格している。

同様に、巴蛇(地仙)を母に持つ元貞は『地仙』らしく、天君の不当な扱いにより人間界での修行は『罰』から『天劫(修行)』に切り替わった。
もともと『地仙』だった元貞は、この修行により『地仙』から『天仙』へ、『天仙』から『上仙』に昇格した。転んでもただでは起きない、という意味である。


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