白浅を抱き上げると、墨淵は崑崙虚へ。師父に一瞬遅れた令羽もまた、白凌羽と一緒に飛び立った。残される夜華と子狐たち。
 
墨淵から、夜華と『仲が良い』と思われている大師兄・畳風は、事情説明と現場処理を委された。
画像は、中国ドラマ『永遠の桃花』からお借りしました。
 
 
思わず…大きなため息を付くと、畳風は墨淵と令羽が飛んで行った崑崙虚に視線を投げた。師父たちも大変だが、こちらもなかなか…手強い子狐と夜華がいる。
 
左手を上にして手を組み、夜華に立礼する。
「太子殿下に拝謁を、状況説明をお願いします。」
「畳風上仙、来てくれて助かった。」
夜華は怪我をしていないが、顔色が悪い。
「まずは…子狐たちの点呼を。」
「点呼?」
『子狐』という言葉を聞いて、畳風の弟弟子達が集まってくれた。皆、懐に子狐を抱いている。
司音に似て、色白のモフモフ狐である。
「我が子だが、皆、白浅に似て見分けがつかない。」夜華がつらそうに言った。
「「「あああーーー、確かに。」」」
「確かに、そうですね。」と畳風。
「それで仕方なく、いつも点呼している。」
「点呼?どのように?」
夜華が袖の折り返しから、何かを書き付けた竹簡を取り出した。
「小一、白凌羽。…は令羽上神と一緒か。」
「小ニ、白茶君。」
「なう。」弟子の一人の懐に居た子狐が返事をするが、夜華は近寄って『茶色の組み紐』を確認した。
「小三、白黒君。」
「なう。」夜華が確認するべく移動しようとすると、「黒紐です。」と弟子が言った。
「小四、白赤。」
「なう。」「赤紐です。」と弟子が言った。
「小五、白青。」
「なう。」「青紐です。」と弟子が言った。
「小六、白紺。」
「なう。」「紺紐です。」と弟子が言った。
「小七、白浅葱君。」
「なう。」「浅葱紐です。」と弟子が言った。
「小八、白朱君。」
「なう。」「朱紐です。」と弟子が言った。
「小九、白黄緑。」
「なう。」「黄緑紐です。」と弟子が言った。
「小十、白緑。」
「なう。」「緑紐です。」と弟子が言った。
「小十一、白黄。」
「なう。」「黄紐です。」と弟子が言った。
「小十ニ、白墨恩。…は墨淵上神と一緒に行ったから。これで十ニ匹、全員点呼完了と。」
夜華はやれやれ全員居た~と、竹簡を袖に入れる。「ふー、良かった。」と一人言を言って畳風を見遣ると、なぜか冷たい眼差しが…?
「太子殿下…」
「全員居ました。」
「殿下、それはないでしょう?」
「全員、無事です。」
「一年以上、共に暮らしてこれですか?」
「はい?」と、夜華は言いたい。
 
「何か問題が?」と顔に書いてある夜華。
 
『ネーミングにセンスが無い』と、頭を抱える崑崙虚の弟子たち。
「司音は仕方がないとして、殿下まで『色紐』を名前にされるとは…」と、衝撃を受ける畳風だった。
 
 

続く。