その夜、1人静かに崑崙虚から麓に降り立った墨淵上神だったが、軒轅剣を携えていた。

墨淵が軒轅剣を三度(みたび)振るうと、森林が消滅して無くなり、崑崙虚から九重天の天宮・南天門まで続く『司音(白浅)専用道路』が完成した。
画像は、中国ドラマ『永遠の桃花第6話』からお借りしました。


道幅は『1里(中国の1里は500メートル)』あり、『四海八荒一の方向音痴』である司音であっても、この路を辿れば『道に迷う』ことはないだろう。

墨淵は軒轅剣に付いた土と木片を払うと、剣を鞘に収めた。

上衣の袖から木箱を取り出し、中に入っていた『黒い種』に仙術を施すと、仙力で以て崑崙虚から九重天の『天宮・南天門』までの路にまんべんなく種を蒔く。

種は芽吹き、育ち、一夜にして白い花を路に咲かせた。『白花曼珠沙華』、花言葉は『想うは貴女一人』。

崑崙虚の弟子の何人かが花に気付き、花言葉に気付いたが、誰もが『本気の師父』が怖くて口に出せなかった。

かつて、師父は敵となった『妖族と鬼族の連合軍』に対する際、天族の諸兵に訓戒したという。
「敵と対峙する際は、相手が女、子どもであろうと迷わず切り捨てよ。後顧の憂いを残すな。」

その結果、墨淵の手に『妖族の降伏書』と『鬼族の降伏書』が載せられるまで戦闘が続いた。

両族の数百万の将兵と民が命を落としたという…『崑崙虚の弟子』たちが生まれる前の上古の歴史だ。

墨淵の『氷点下の怒り』が夜華や天に向かわず、軒轅剣が森林を『切り開いた』だけで済んでいるのは司音が眠っているからだ。

墨淵は本気で司音を心配したから、帰路につく前に九重天の天宮に『警告』を発した。
「司音に傷を負わせた者は、同様に切り捨てる。」


九重天の天宮・南天門には、東華帝君が1人で立っていた。天君から急ぎの連絡を受けて。
「南天門を警護していた霊獅子4頭が、一振で斬り殺された。犯人はわからない。」
「わからない?墨淵以外にやるとしたら、夜華しか居ないだろうが。」



✳️墨淵上神について

1・原作の墨淵上神と司音(白浅)上神の間にあるのは、『師弟愛』だけです。

2・中国ドラマの墨淵上神は白浅上神に対して『愛情』を抱いていますが、片思いです。

3・アメリカ映画の墨淵上神と白浅上神は『両想い』のうえ、夜華君を含める『三角関係』です。

4・創作部分については原作にないため、『パラレルワールド』として展開中です。
この小話の墨淵上神は『一途』を通り越して、『司音の為に世界が滅んでも、一向にかまわない。』という武神ですので、『振り幅MAX』です。