墨淵上神が司音(白浅上神)に贈った物をいまでも、彼女は持っています。

画像は、中国ドラマ『永遠の桃花』よりお借りしました。


武神・墨淵上神と狐帝・白止上神は、同世代の知己です。
白止にとって予定外だったのは、義弟・折顔上神に預けた末娘が『5万歳で上仙』にもならず、上神の娘である『神女(地仙)』のままでいたこと。

四男・白真上仙が『上神』になっていないのも、気掛かりでした。
そこで『老鳳凰』である折顔に頼んで、白浅を『野狐の司音(男性)』に変身させる仙術を用いて、崑崙虚へ強制的に『弟子入り』させることにしました。

白浅に仙術を掛けたのはドラマ版では折顔ですが、原作では白浅の母です。
折顔が司音を連れて崑崙虚を訪ねた日、先客が一人。

魔界の数人居る魔君の一人、その双子の弟である『子蘭』でした。
墨淵が言います。
「我が崑崙虚には15人の弟子が居るが、同じ日に私を訪ねて来た二人のうち、どちらを兄弟子とするべきか?」

義兄・折顔上神に、「養子(やしないご)である司音を兄弟子とした方が良いか?」と暗に聞いています。
義兄・折顔上神は笑って「司音は未熟者だから、弟弟子にすれば良い。」と答えました。

以後、司音の中で『先着順』というルールが一般化されます。
「何事も『先着順』でしょう?」と。
墨淵は子蘭を『十六番弟子の子蘭神君』に、司音を『十七番弟子の司音神君』に据えて『崑崙虚の弟子』としました。

これには意味があり、二人は『崑崙虚の弟子』になったことで『神格』が『天仙』に自動昇格したのです。もれなく、寿命も『万単位』で延びます。
『弟弟子』になったことに『不平』を鳴らす司音に対し、『神器』を与えることで「公平だ。」という墨淵ですが、誰がどう考えても『えこひいき』に間違いない。
墨淵以下、誰も支配下に置けない以上、『神器』が選んだ主に与えるしかありません。
「その神器の名は『玉清崑崙扇』だ。」と司音に告げる墨淵です。
義弟である墨淵を頼って崑崙虚に司音を連れて来たものの、折顔の予想以上の気前の良さで、司音に何でもかんでも与える墨淵に『疑問』を感じる折顔でしたが、『弟子入り』させてしまった以上は墨淵を信じるしかありません。

そうして、2万年が過ぎました。


司音の満7万歳の誕生日を明日に控え、墨淵は十里桃林に居る折顔に会いに行きました。

司音が近く『上仙』に昇格することを伝え、誕生日祝いに『桃花酔』を分けて貰うためです。
折顔が十里桃林で『桃花酔』を作っていることは有名でしたが、滅多に手に入る品ではありません。
「折顔のところに行って、貴方のために桃花酔を3樽もらってきた。」とあっさり言う墨淵。
「折顔手製の桃花酔をですか?」と、不思議がる司音。

普段、酒造りの腕は師父・墨淵と折顔とどちらも素晴らしいと思っていただけに、折顔の酒を贈り物にした師父の懐の広さに感動です。

それも「明日は、貴方の誕生日でしょう。」と言われると、自分の誕生日を忘れていただけに感激も一塩です。


墨淵が完璧な誕生日祝いを司音に贈った直後に、『恋する乙女』瑶光上神の横やりで『桃花酔』は駄目にされてしまいました。

墨淵はてっきり司音は喜んで、桃花酔を飲んでご機嫌に過ごしていると思っていたので、「司音がいない?」という報告を理解出来ずにいました。

司音が拉致・誘拐されたと知ると、即行動に移ります。

怒る墨淵が「水牢の中に、我が崑崙虚の弟子がいるのか?」と、司音の大師兄・畳風上仙と九師兄の令羽上仙を連れています。

墨淵と司音との『禁断の愛(噂)』を消したい瑶光は剣を抜いて忠告しますが、墨淵に『その気』はないので、ただの邪魔者です。
瑶光の水牢から司音を救出、上神の仙力を使いたい放題です。
「私(瑶光)は貴方(墨淵)が弟子を慈しみ過ぎて、噂になっているのが嫌なの。」と言う瑶光ですが、畳風も令羽も『何を言っているのだ?』この人?です。

墨淵に『男色の趣味』がないことは、『崑崙虚の弟子』なら誰もが知るところです。


墨淵が修行のために洞窟に籠れば、司音が生まれてくる姪や家族に逢いたくて『青丘』を目指したのだろうと、令羽を丸め込んだ理由も理解出来る師父です。

師父と弟子に信頼関係があるから『以心伝心』で、居場所を知らせることが出来ました。
弟子の司音の方は若いため、墨淵がただ『救出に来た』としか理解していませんが。


崑崙虚に戻った途端、司音目指して落ちてきた『天劫(雷)』を身に受けて血反吐を吐く墨淵です。

修行の足りない神仙であれば『命を落とす。』といわれるだけ、上神でもキツいものがある。
「私が受けるべき『天劫』です。」と叫ぶ司音を、仙障(バリア)で守るほどの徹底ぶりです。
墨淵が『守る』と決めたのだから、そこに居ましょう。
さすがの武神・墨淵を以てしても、天に逆らって受けた『天劫』はキツい。


司音が尋ねていた『東皇鐘の封印仙術』を、「いまでも望むか?」と司音に訊ねる墨淵。
「望むなら、今夜『仙術』を授けよう。」と言います。
『東皇鐘』は神器なので、『主が所有を認めた相手』になら従います。

つまり墨淵上神か擎蒼上神、そこに司音上仙を加えるために『仙術』を授けます。


師父・墨淵を見守る崑崙虚の弟子と天兵たち。

墨淵の気掛かりは『ただ一人』、司音です。白真上神は眼中にもない。
「私を待っていてください。」と、司音に言葉を残す墨淵。
弟子達の前で、己の元神を以て『東皇鐘』に擎蒼を封印する墨淵。

神仙達の一世代にあたる、『7万年』の平和が約束された。
師父・墨淵上神を抱きしめ、若水河畔で泣き続ける司音。

その時間は2週間に及んだ。
『墨淵の死』を知り、我が耳を疑う東華帝君。

崑崙虚の主、武神・墨淵上神が弟子である司音上仙こと白浅上神に贈ったものは全て、『師父の誠意』で溢れていました。

司音が望むもの、喜ぶものをひたすら贈り続けました。これ以上の『師弟愛』はありません。

東華帝君、墨淵に呆れて言葉も出ません。
「墨淵、そこまで・・・。」