墨淵上神が司音(白浅上神)に贈った物をいまでも、彼女は持っています。
武神・墨淵上神と狐帝・白止上神は、同世代の知己です。
白止にとって予定外だったのは、義弟・折顔上神に預けた末娘が『5万歳で上仙』にもならず、上神の娘である『神女(地仙)』のままでいたこと。
四男・白真上仙が『上神』になっていないのも、気掛かりでした。
そこで『老鳳凰』である折顔に頼んで、白浅を『野狐の司音(男性)』に変身させる仙術を用いて、崑崙虚へ強制的に『弟子入り』させることにしました。
白浅に仙術を掛けたのはドラマ版では折顔ですが、原作では白浅の母です。
折顔が司音を連れて崑崙虚を訪ねた日、先客が一人。
魔界の数人居る魔君の一人、その双子の弟である『子蘭』でした。
墨淵が言います。
「我が崑崙虚には15人の弟子が居るが、同じ日に私を訪ねて来た二人のうち、どちらを兄弟子とするべきか?」
義兄・折顔上神に、「養子(やしないご)である司音を兄弟子とした方が良いか?」と暗に聞いています。
「その神器の名は『玉清崑崙扇』だ。」と司音に告げる墨淵です。
義弟である墨淵を頼って崑崙虚に司音を連れて来たものの、折顔の予想以上の気前の良さで、司音に何でもかんでも与える墨淵に『疑問』を感じる折顔でしたが、『弟子入り』させてしまった以上は墨淵を信じるしかありません。
そうして、2万年が過ぎました。
司音の満7万歳の誕生日を明日に控え、墨淵は十里桃林に居る折顔に会いに行きました。
司音が近く『上仙』に昇格することを伝え、誕生日祝いに『桃花酔』を分けて貰うためです。
折顔が十里桃林で『桃花酔』を作っていることは有名でしたが、滅多に手に入る品ではありません。
「折顔のところに行って、貴方のために桃花酔を3樽もらってきた。」とあっさり言う墨淵。
「折顔手製の桃花酔をですか?」と、不思議がる司音。
普段、酒造りの腕は師父・墨淵と折顔とどちらも素晴らしいと思っていただけに、折顔の酒を贈り物にした師父の懐の広さに感動です。
それも「明日は、貴方の誕生日でしょう。」と言われると、自分の誕生日を忘れていただけに感激も一塩です。
墨淵が完璧な誕生日祝いを司音に贈った直後に、『恋する乙女』瑶光上神の横やりで『桃花酔』は駄目にされてしまいました。
墨淵はてっきり司音は喜んで、桃花酔を飲んでご機嫌に過ごしていると思っていたので、「司音がいない?」という報告を理解出来ずにいました。
司音が拉致・誘拐されたと知ると、即行動に移ります。
怒る墨淵が「水牢の中に、我が崑崙虚の弟子がいるのか?」と、司音の大師兄・畳風上仙と九師兄の令羽上仙を連れています。
墨淵が修行のために洞窟に籠れば、司音が生まれてくる姪や家族に逢いたくて『青丘』を目指したのだろうと、令羽を丸め込んだ理由も理解出来る師父です。
師父と弟子に信頼関係があるから『以心伝心』で、居場所を知らせることが出来ました。
司音が尋ねていた『東皇鐘の封印仙術』を、「いまでも望むか?」と司音に訊ねる墨淵。
崑崙虚の主、武神・墨淵上神が弟子である司音上仙こと白浅上神に贈ったものは全て、『師父の誠意』で溢れていました。
司音が望むもの、喜ぶものをひたすら贈り続けました。これ以上の『師弟愛』はありません。
東華帝君、墨淵に呆れて言葉も出ません。
「墨淵、そこまで・・・。」