「『後悔』はこの世で最も苦しい地獄です。」と、ヴィンチェンツォ・カサノは言いました。
 
「地獄を避ける『機会』が与えられたのなら、選ぶしかない。」とも。
 
 
墨淵上神は『伯父』
 
天族太子・夜華君が『父』
 
阿離の最善を探す母・白浅上神
画像は全て、中国ドラマ『三生三世十里桃花』からお借りしました。
 
 
 
夜華君の望みは、愛する女性『白浅』が生きること。叶うならば、共に。
 
素素(白浅)が『誅仙台』から飛び降りたときに感じた『後悔』は、夜華を地獄に落としました。
地獄の中、眠り続ける夜華を起こした者は『60歳(人間年齢で1歳)』に達し、片言を話すようになった息子の阿離でした。
「父上(阿離です)。」
「父上(起きてください)。」

母(素素)を亡くし、父が『生きた屍』の如く昏睡状態にあったため、孤児同然でした。一生懸命になるのも当然です。
 
そうして漸く目覚めた父は、阿離にこう言いました。
「母上は誅仙台から飛び降りて、いまは人間界に居る。『結魂灯』に火が灯り続ける限り、母上は必ず帰って来る。」と。
 
父(夜華君)と子(阿離君)は祈る思いで300年間、母(素素)の帰還を待ちました。
 
東海水君の水晶宮で白浅上神に出会ったとき、阿離は『この人が母上だ。』と確信しました。
 
母と子の血が、互いを呼び逢うのです。
 
天然の『方向音痴』である母・白浅を阿離のもとに導いた奇跡は、孤独な父子に『機会』を与えました。
『後悔の地獄』に居た父・夜華君には再会を、『孤独な地獄』に居た子・阿離君には家族の姿を見せました。
 
つかんでしまった『機会』は、絶対に手放してはいけません。
 
どんなに苦しくても。

 
夜華は身体を張って白浅を守り通し、やっと失った『妻』を取り返しました。
 
阿離は天族太子・夜華君の『長子』である立場を守りぬくことで、父が帰るべき場所を確保し続けました。
 
あと少し。

 
この『機会』をつかんで離さず、耐えきれば、阿離の願いが叶います。
 
父と母と阿離の三人で、父上の寝台で『川の字』になって一緒に寝るんだ。右手に父上、左手に母上、阿離は真ん中で。
 
夕食の途中、箸を握り締めたまま寝落ちしてしまった阿離に、墨淵が着ていた上衣を掛けました。
「ひさしぶりに母の顔を見て、安心したのだろう。この顔を見よ。」

食器を片付けながら、師父の言葉に返す令羽上神です。
「そうですね。十七(白浅)に、笑顔全開でしたから。」
 
今夜の崑崙虚も、男三人です。