画像は、中国ドラマ『永遠の桃花』からお借りしました。
 
 
 
天君(皓徳君・推定30万歳)から、青丘狐帝(白止上神・推定38万歳)に婚姻の申込みがあった。
 
天君の息子であり『皇太子』候補である二殿下(桑籍君・推定8万歳)と、次期『東荒女帝』である青丘帝姫(白浅・推定7万歳)は共に『上仙』で、年齢も身分も釣り合う『お似合いの夫婦』として、『四海八荒で一番の縁談』と話題に上がったのだ。
 
天君(天族)の使者に立ったのは、政治的に中立の立場にある鳳凰族の折顔上神(青丘狐帝の義弟・推定38万歳)で、青丘がこの縁談を断るに足る理由が全く存在しなかったことから、アッサリと縁談はまとまってしまった。
 
この頃の結婚は『家長(族長)』が決めていたので、本人たちの意思は関係ない。
 
 
天君が「青丘狐帝の娘、白浅と婚儀を挙げろ。」と命じれば、桑籍君は2つ返事で結婚するしかない。
彼に『拒否権』はないのだ。
 
ただ、少なくとも桑籍君は、1度も会った事がないにも関わらず、白浅上仙に少なからず好意を持っていたようである。
霊宝天尊の法会で司音(白浅)に出会った時に、まだ見ぬ『白浅上仙』を想ってか司音(白浅本人の前で)に、はにかんだ笑顔を見せていたのだから。
 
 
対して、白浅上仙(司音)はというと、自分の傍らに『天界最強の武神』である師父・墨淵上神(推定36万歳)が居るため、許嫁である桑籍君に見向きもしない。当然の女心か。
 
墨淵上神と桑籍君、比較対象が悪過ぎる。
 
婚約中の2人に、『破談』というカードが既に用意されていたものの、迫り来る天族と翼族の『若水大戦』を控えて、婚儀は『無期延期』となった。
 
 
白浅は『若水大戦』で負傷し、出血多量で危篤(植物状態)に陥っていた『師父・墨淵上神』を抱きかかえて『青丘の炎華洞』に戻った。
 
『九尾狐族の掟(慣習法)』では、狐狸洞の相続人である『白浅(跡取り娘)』がその夫である者と帰宅したのなら、速やかに『代替り』が慣行される。
画して、白浅は『墨淵の妻』として、墨淵は『白浅の夫』としての同居生活が始まった。
 
 
覚えているだろうか?
 
『狐族の掟』では、肌を重ね、口付けを交わした者を『夫婦』と認める。
 
『九尾狐族の掟(慣習法)』ではさらに、自らの『心の血』を捧げる対象を『夫婦又は家族』としている。
九尾狐族の『心の血』には、『傷を治し、病を癒す力』が有ったから。
 
かつて、九尾狐族の『心の血』を狙って地上で戦が起こり、たくさんの罪無き者が殺された。その教訓を生かすため、『九尾狐族の掟』には次の一文が追加されている。
 
曰く、九尾狐族の夫婦は「肌を重ね、口付けを交わす時に、お互いの血を飲み合い『一心同体』を誓うこと。」とした。
 
白浅は毎日、墨淵と再び語り合える日を願って、墨淵の前で左胸をさらして自らの心臓に小刀を突き刺し『心の血』を杯に取っている。
 
意識がない墨淵が白浅の『心の血』を飲み込めるわけがないので、白浅が墨淵を抱き起こし、顎を持ち上げ、口に含んだ『心の血』が誤って気道に流れたいように細心の注意をはらいながら、一口一口墨淵に血を飲ませる行為は、誰が見ても『愛するがゆえ』だと分かっただろう。
 
白浅と墨淵を見てきた青丘の両親、兄夫婦達は、何とかして『白浅と桑籍君の婚約』を破談にするべく策を練ったが、破談にする正当な理由が見つからない以上、ただひたすら時間稼ぎをするしかなかった。
 
そうして、7万年が無為に過ぎた。
 
 
7万年後、しびれを切らした天君が桑籍君を青丘の狐狸洞に使わし、白浅と直接面会させて婚儀の日取りを決めようとしたのだが、運悪く、白浅は不在だった。
 
代わりに狐狸洞に居たのは、白浅の美しい侍女『小辛』。
 
白浅が戻るまでの1月の間、桑籍君の面倒をみた侍女『小辛』との間に愛が生まれたとしても何ら不思議はない。
 
主である白浅の許可を得ずに狐狸洞を去ることは出来ないという小辛を、棒で殴って気絶させ、天宮に拉致・誘拐(原作では)したのは桑籍君である。
 
桑籍の暴挙は天君を怒らせ、小辛を『誅仙台』から突き落とすという『処刑』命令まで出された。
 
後年、『四海八荒一の醜聞』と言われた事件である。
 
 
この結果、事態を重くみた天君は、青丘狐帝と折顔上神を天宮に招いて協議した。
 
すでに青丘帝姫(白浅上仙・推定14万歳)は天族の次期皇太子妃、未来の天后として定められており、四海八荒にもその旨を公布済みである。
 
ついては、この度、天族の次期天君である『皇太子』が夜華君と定まったので、改めて2人の婚約を組み交わしたいというものだった。
 
青丘狐帝と折顔上神は互いの顔を見ながら悩んでいたが、いまだ目覚めぬ墨淵上神に白浅を嫁がせる事が出来ない以上、『諦めさせるのも、親の務め。』と決意を固めた。
「小五が何と言うか…」
白浅の父である青丘狐帝は悩んでいたが、初めて対面する夜華君の顔を見て考えを改めた。
折顔上神ですら、呆けている。
「これならば、小五の心が動くやも知れぬ。」
白浅の新しい許嫁、堅苦しいほどに礼儀正しい夜華君は、若かりし頃の墨淵上神に瓜二つだった。
 
『許嫁交代』が決められた時、天族太子の夜華君(推定5万歳)は許嫁より『9万歳も』年下だった。
誰の目にも明らかな『政略結婚』である。
 
 
 
ここで、あるテレビCMの名台詞を言わせてください。
「そこに愛は、有るんか?」
 
夜華君が返す。
「ただ1つの愛が、有ります。」と。