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・・・✤BLを含む完全妄想のお話です✤・・・
一人暮らしを始めたばかりだという彼の部屋には女の影などは見当たらず、少しだけほっとした
でも、そこかしこから感じる彼のニオイに目眩がして、緊張なのかなんなのか、シャワールームの中で準備する手が震えるなんて初めてのことだった
何とか気持ちを落ち着かせバスルームから出ると、彼は真剣な面持ちでソファに座っていて
後悔してる……?
でももう後戻りできなくなっていた俺は、彼の手を引いてベッドへと沈みこんだ
怯えているような瞳、恐る恐る触れてくる手からも不安が伝わってきたから
『全部俺に任せろ、気持ちよくしてやるから』
彼に跨がって、そのまま彼のモノをのみ込み
「はぁっ……んあっ」
リズム良く跳ね上がると、色を含んだ声を漏らすから胸がキュンとなった
「んっ…きつっ!」
思わず締め上げてしまった後ろの刺激に眉をひそめる顔すらセクシー
俺で感じてくれている
男に抱かれながらそんな風に思ったことは初めてかもしれない
今までは自分さえ気持ち良かったらそれで満足だったんだから
嬉しくなった俺は彼の上でどんどん乱れていって、欲に素直になった彼に激しく突き上げられて弾け飛んだ
そこからの彼は人が変わったようだった
反転した身体はベッドに縫い付けられ、片足を高く持ち上げられ奥へ奥へと熱い昂ぶりを打ち込んで
『おまえ……ヤバすぎ……』
限界をむかえたところで意識を失った
先に目覚め、カーテンの隙間から見える空が白み始めたのを確認して、そっとベッドを抜け出し彼の部屋をあとにした
重たい身体を引き摺って始発に乗り込んで自分の部屋へと戻り、ソファに身体を投げ出し
ダルい下半身、腰を力強く掴まれた指の余韻、ヨレヨレのYシャツの下には残されたままの白濁の痕
そのどれもが先ほどまでの行為が現実だったことを示していて
思い出すと身体は再び熱くなりそうだったけど、心はどこか寂しくて胸がキュッと締め付けられた
これから同僚として普通に接することができるだろうか、それとも疎遠になってしまうのだろうか
寂しくはあるけど仕方ない、一夜限りの快楽を求めたのは俺なんだからと思っていたところに届いた彼からのメッセージ
「君の身体、忘れられなくなったから責任取ってね」
彼をコッチの世界に引き摺り込んでしまったと罪悪感や後ろめたさもあったけど
彼が飽きるまで相手をしなくちゃならない
そんな免罪符を手に入れた俺は、その目的のためだけに彼の部屋を訪れるようになった
だって、忘れられないのは俺も同じで
彼にまた抱かれたくて仕方なかったから……
同じ会社、わざわざバラすようなことはしないだろうし、ある意味遊び相手としてお手軽な奴だと思っているのかもしれない
そこに虚しさは感じるけど、誘いに簡単に乗る俺も同罪で
彼はいつだって丁寧に俺を抱く
激しいことはあるけれど、決して乱暴にしたりしない
いっそ痛くしてくれたら、俺だって割り切れるのに
「もう我慢できない、いくよ?」
「んっ……あぁ、気持ちいぃ……」
「ねぇ、声、聞かせて?」
「ほら、一緒にイクよ……」
なんでそんな優しい顔、勘違いすんだろ……
もしかしたら引き留めてくれるかもしれない、そう思っていつもドアの外で待ってみるけど、カチャンという鍵が閉まる音が無情にも心の中に響く
どんなに熱く絡み合っても、部屋に帰れば一人ぼっち
彼のニオイなんて一緒に連れて帰ってきたら、思い出して胸が苦しくなるだけ、だから全てを置いてくる
だけど、どうしたって彼に抱かれた感触が身体のあちこちに残っていて、涙がじわりと滲んでくる
俺と彼とは違う、こんな関係いつまでも続けるべきじゃないのはわかっている
「もう、やめにしよう……」
いつかきっと見限られてしまう日がくるはずで
でも、せめてその日までは彼に愛されていると勘違いしていたいから、自分からは決して切ることはしない
『おまえが好きだ』
だから俺は夢から覚めないように、この言葉だけは絶対口にしてはいけないんだ
おしまい
全4話、いかがだったでしょうか
切ないままですが、前置き通りこれで完結です
感想ぜひお聞かせください
タイトルが決まったらお知らせして、一緒にあとがきもどきも出したいと思います