・・・✤BLを含む完全妄想のお話です✤・・・








欲を吐き出し繋がったまま息を整えた



ゆっくりと目を開ければ優しく笑う翔と目が合って





「ハニー……とってもキレイです」




大きな手で頬を包み込みながら、親指で目頭から目尻に沿ってスッと撫でてくれた





そこには熱く絡み合って滲み出た汗じゃないものがあって




自然と溢れ出ていた俺の涙に、さっきみたいにや!や!や!とワタワタしていないのは




「幸せですか……」




この涙の意味がわかっているから




そして




『あぁ……お前もだろ……?』




こくんと頷いた翔も同じように涙を浮かべていた




澄んだ瞳から今にも溢れ落ちそうな真っ赤なルビーのような粒は、この世のものとは思えないくらい綺麗で、顔を寄せて唇で掬い取ってやった




そのまま優しく唇を重ね、涙目の俺たちはフフッと笑い合った











「お風呂の準備をしてきます、一緒にはいりましょ♪」




以前のように甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる翔が、濡らしたタオルを手にして戻ってくると




「タツヤ様は魔界へと戻られたようです」




その手にはカードもあって




真っ黒の台紙に白い文字




「ハニーとなかよしこよししなさいって書いてあります」




記号のようなそれは何一つとして読めないから本当かどうかわからないけど




『やれやれ、ほどほどになって書いてあんじゃねぇの?』





タツヤの事だ、呆れながら残していったに違いない






『ワンコは?』




「ケージの中でぐっすりおねんねしてました」




随分絡み合っていた気がする、タツヤとの散歩が長くなって疲れてしまったのかもしれない








汗と腹の上に残る欲の跡を軽く拭き取りながら翔が不意に真顔になった




「私、ハニーに嘘ついてたことがあるんです‥…」




肩をがっくりと落としながらそんな事を言うから、心臓が跳ね上がった






「初めてここに来た時、ハニーに私のベビーを産んでくださいとお願いしました」




俺は男だから無理だろと答えた記憶がある
でも夢と現実はリンクしてて、実際にお腹に赤ちゃんができるとかなんとか




「それが嘘でした……ごめんなさい……」




『俺を騙したってことか?』




「いいえっ、そんな事はないです!
私の勉強不足だったんです!

我々インキュバスの使命ですから、当然男性相手でもそうなるものだと思い込んでしまって……

ハニーとのベビーが欲しいという私の願望もあったと思うんですが……


あっちに戻ってから、改革のために自分たちの生態について1から調べ直したんです

でも一つとしてそんな前例はなく、更には女性が相手の場合でも子を成さなかった事もあったみたいで……

当然の摂理、我々悪魔でも介入できないことがあるみたいです」





今更摂理だの言われてもよくわかんねぇし、そもそも悪魔の存在自体が本当なのかもわかんなかった時期もあるくらいで





それでもこうやって目の前でしょんぼりとする悪魔の翔に本気で恋してて、深く愛されてるってのは嘘じゃねぇんだから





『そっか……

うん、だから言ったろ?
俺は男なんだから無理なんだって』




そういう事でいいんじゃねぇかな?




「怒ってないです?」




『別に?
だって考えてみ?どこから産むのか想像したらさ……

いやいやいやっ、無理無理っ!
男には無理!

女の人が強いのはそういうことなんだよ』





ま、ホッとしたような、でも残念のような気もするけどね……






じゃあ、もしかして赤ちゃんできたかもなんて思ってたのは俺の勘違いで




つわりだってただ本当に体調悪かっただけ?



想像妊娠ってやつ?




そう思ったらクソ恥ずかしい、伝えてなくて本当によかったわ





でもあの時、翔との別れの時




腹の中で何かが弾けた気がすんだよな……



アレも気のせいだったってことかな







「そうだ、ベビー繋がりの話なんですけど……
私が魔界に戻ってから、不思議なことがあったんです

魔界には悪魔だけではなく動物もいるんです
鳥類やほ乳類などですが、人間界とはまた違った姿をしているものもいます
それぞれ単独で働きをするものもいれば、悪魔のお供をするものもいて

ある時、真っ黒な毛を持つ母犬が仔犬を5匹産みました、父親も同じ犬種の真っ黒な凛々しい優秀な犬です

でも……
4匹は両親と同じツヤツヤとした真っ黒なワンコなのに、1匹だけどうしたわけか真っ白なぱやぱやの毛をしてまして……

体も他の子に比べて小さいし、母親のミルクも兄弟に奪われてうまく飲めなくて
悪魔たちはこんな事今までなかったと不吉がって近付こうともしなくて
母犬ですら、子育てを放棄して

一人ぴーぴー鳴いてたんです……

それがとても可哀想で……

独りぼっちなのがハニーと離れてしまった自分に被る気もして、私がお世話してあげたんです

ミルクを与え抱っこして一緒に寝て……

あの子も懐いてくれて、どんな時も離れようとしなくてですね、その様子を見たタツヤ様が私の番犬として人間界へ一緒に連れていけばいいのではと言ってくれたんです」




『でも訓練もせずに先に来ちまったんだろ?』




「そうなんです、まったくホントに世話のかかる子です」




やれやれなんて言ってるけど……




あのワンコを初めて見たとき、その見た目から翔が犬になってやって戻ってきたと思ったくらいで




その話しを聞く限り、手がかかるとことか泣き虫なとことか




そんなとこも翔に似てる(笑)





思わずプククと笑い出してしまった俺、はてな顔の翔に向かって




『世話のかかる子ほど可愛いっていうしな

うん、そうだなぁ……

アイツが俺たちの子どもってことでいいんじゃねぇか?』





生まれ変わりかどうかはわかんねぇけど、きっとそういう事でいいんだろう




「ハニーは可愛いママですね♡」




『お前が育ててやってきたんだろ?翔がママだろ』




「えぇ〜?やっぱりハニーがママです!
だってだって……」




『なんだよ?』




「だってハニーが私を受け入れてくれるんですしね

さっきもハニーのナカにいっぱい出しちゃいましたし、ムフフ♡」





このヤロー、急にエロオヤジみたいになりやがって
腹壊したらどうしてくれんだ!





「今度は真っ白な猫ちゃんが産まれるかもしれませんね♪」




まぁそれは見てみたい気もするし、ニコニコしながら慈しみ深い顔でそんなこと言う翔の方がよっぽどママらしいけど





「やっぱりもう一回しましょ?
私、まだまだイケますよ!」




タオルで拭きながらケツを揉もうとする手をパチンと叩き落としてやった







補足と言い訳を少し……

先日、限定のお話を書く事が苦手だと言いましたが
このお話においてはこのシーンを書く事が
一番難しかった気がします
というのも
言葉選びがとかセリフがとかではなく、その内容がという点についてで
お話の序盤、ベビーを産んで欲しいとか智くんが赤ちゃんの夢をみたりとか妊娠したかも?!みたいなシーンを出したとき
皆さんの反応が思った以上に良くて
楽しみにしてくれているのがコメントやメッセージから伝わってきていました
きっとイケメンだね
可愛いだろうね
二人で子育ても楽しいだろうね
たくさん妄想してワクワクしててくれたんじゃないかと思います
でも、実際には赤ちゃんはできないというこのお話の流れは、書き始める時点で私の中では決めていたことでした
ただ、反響があった分、皆さんの期待を裏切るような気がしてなかなか書けずにいました
ガッカリさせちゃうかな
そう思うと申し訳なくなって……
でもこれを言うとコメントするのを躊躇う人も出てきてしまうのでないかとも思って
今回お休みが多くなってしまったのにはこういう理由もありました

私は自分が書くお話で、読んだ人が色んな妄想をしてもらえるのが嬉しいです
これどうなるのかな?
こうだったらいいな、嫌だな
あぁ、よかった
マジかぁ?!
期待通りにはならないこともあると思います
そういうのも含めて、色んな感想をもらえると書いててよかったなと思えます

これから先もこういう展開(michaさん、そりゃないぜ…)はきっとあるでしょう
私は自分が思ったように書くことでお話を作り上げていくので、期待に応えられないこともあると思います
だから皆さんも好きなように妄想してもらって、思うままにコメントとかしてもらっていいんです
私、滅多な事じゃ落ち込んだり傷付いたりしないんで大丈夫です!
遠慮してコメント減る方が悲しい!

伝わったでしょうか?
本当ならあとがきで書きたかったんですけど、このシーンでお伝えするのが一番かと思いまして

ちょっと真面目になり過ぎた💦
長々と失礼しました( >_< )
micha