・・・✤BLを含む完全妄想のお話です✤・・・








翔が消えてなくなる




タツヤが発した言葉は重く耳に残り、そして俺の頭の中を冷たくさせていった




ここから居なくなると考えただけでこんなにも苦しくなるというのに




【ショウという存在自体が、人間界だけではなく悪魔界からも消えてなくなることになるのだ】





まさか、そんな……






唇をキュっと結ぶ様子から、タツヤの言う通り、翔自身そうなる事は最初から分かっていたということか






【我々悪魔というものは人間に対して情というものを持ってはいけない
常に冷徹でなければならないのだ】




悪魔の生態なんて詳しく知らないけど



でも翔は……




【そう、優しすぎるくらいだ】





一緒に暮らしていたんだ、それは俺がよく分かっている






【元々ショウはエリートでその地位も高く、私自身もショウに教えを乞いていた】




兄貴と慕っていると言ってた気がする





【しかしその優しさが故に非情になりきることも出来ず階級は落ちていくばかり

そのルックスから辛うじてインキュバスとして使命を与えられたがそれもまた……
女に対して反応しなかったのは事実だが、翔のその優しさも関係していると思うのだ
人間の欲を利用してではあるが、ただ子供を産ませるだけの行為に抵抗があったのだろう、違うか?】




翔は小さく頷いた



【そんなショウがサトシへは反応した
サトシ自身が無欲で無垢な人間で、そんなサトシに惹かれるものがあって、ショウ自身が選んだわけだ

結果、ショウは見事に役割を果たせるようになった

しかし、本来ならそれでこの場から去って魔界へと戻るはずだったが、ショウはそれを拒んだ】




どうやらタツヤから戻るようにと何度も言われていたらしい




そうしなかった理由は




【サトシ、お前に対して情を持っていたからに他ならない】





悪魔として非情でなければならない翔が、俺に対して持った情、それは間違いなく……




でも





【我々はそれを口にする事は許されていない】





タツヤは俺の言葉を遮るようにピシャリと言い切った
   
 

そして



【ひと度その言葉を口にしてしまえば、悪魔として烙印を押されることになり……

そして我々は跡形もなく消えることとなるのだ】







天使として間違いを犯した者が羽をもがれて地に落ちるとか



一切の記憶を失くして人間として生きていくしかなくなるとか




そんなのを漫画やドラマの設定で見たことはあるけど







【悪魔にもいくつかの禁忌がある
それを犯した者を私は幾人も見てきた

砂のようにサラサラと砕けていく者、ただ音もなくパッと消え去る者、様々だ

大声を上げ苦しみながらなどは……】





終始厳しい顔をしていたタツヤだが、そう言った顔はどこか悲しそうにも見えて




いかに残酷なことか、俺にも何となく想像ができた
 
 



そして翔がそんな事になるなんて考えたら




【私だけではない、サトシもであろう…‥?】



 

きっと耐えられない






『じゃあ、その言葉を口にしなきゃいいんじゃねぇか?!』




悪魔界の掟なんて知ったこったちゃないが、翔の存在そのものに関わることだとすれば話は別で





言葉なんかなくたって




そばにいてくれさえすれば、今までのように翔からはその感情を受ける事ができるんだから










俺は何とか翔を繋ぎ止めようと訴えたが




【それは出来ぬ】



 
タツヤはハッキリと言い捨てた





【言ったであろう?
翔は落ちこぼれなどではないと

私も魔界から見ていたが、サトシの不安など全てわかっていたはずだ】





俯く翔の表情は確認することはできないが





【口に出せずにいることでお主を苦しめているということもな】





何も言わないということはそういうことなんだろう





俺は翔のこと何もわかってなかったんだな……

 



【このままここにいれば、間違いなくサトシへの想いに応えてやりたいと思うはず
いや、今既にそう思ってるのだ

そうなったらショウは……】




タツヤはそれ以上何も言えなくなっていた