・・・✤BLを含む完全妄想のお話です✤・・・








【息子の結婚が決まったんだよ】




『へー!それはおめでとうございます!』




お願いがあるなんていうから何かと思えば、会長さんが言い出したのは息子さんのことだった





会長さんとこはハンコ屋で、その他鍵の取り扱いなどをしている




機械などで出来る作業も増えてきてはいるが、人間の技術による手作業も必要で





【まぁ、まだまだだけどね】




照れ臭くなったのか素直には褒めず




【でも、ひと安心ではあるかな】




目尻を下げとても嬉しそうに笑っていた




その顔を見て、商店街の後継者問題を一番気にしていたのは会長さんだったのかもしれないと思った







翔が商店街に頼りにされ、みんなに溶け込んで


会長さんちにはお嫁さんがきて


更にはうちには子どもができて




嬉しくてめでたいことばかりで、すぐそこまでやって来ている春の足音のように心も軽くなるようだ






息子さんは俺より3つほど年上、相葉ちゃんたちは小さい頃遊んだりしたかもしれないが




あまり接点のない俺や翔への頼みごとは何だろう



昔ながらの商店街なら、みんなへのお披露目もするだろうから、それの企画とか?



翔なら上手いこと考えるのかもしれない








【まぁこれで息子の方は肩の荷が降りたんだけど、実は娘の方がね……】





お披露目会を自分と翔の場合に勝手に置き換えてニヤけていた俺に、会長さんが話し出したことは






【翔ちゃん、うちの娘とお見合いしてみないか?】





青天の霹靂、寝耳に水、藪から棒




一瞬何を言っているのか全くわからなかった






『は?え?……っと……』




口ごもる俺を他所に会長さんはスラスラと話し始めた






【娘は今、隣町の洋菓子屋で働いてるんだけど
パティシエールっていうんだっけ?あれなんだよ 

専門学校卒業して雇ってもらったとこで修行して、いつかは自分の店を持ちたいって言ってて

この商店街にも空き店舗はあるけど、洋菓子屋は既にあるからね

会長としてはここでやったらどうだなんて言えないけど、父親としては娘にも頑張って欲しいんだ】




『まぁ、それは……』


当然のことだ



でも、それがなぜ翔とのお見合いになるんだ?



 

【翔ちゃん、ここで修行中でいつか自分の店をって思ってるんだろ?】




昨日の飲み会で言ったこと


でもそれは一緒に暮らしてる理由の為についた嘘だ




【パン屋だって二軒はいらないだろ?】




お互いのためにもそれは避けたいとこで




【実は娘がさ、翔ちゃんの噂を聞きつけて何回かここに買いにきてたらしいんだ】





「わぁ、それはありがとうございます♪」




自分の事を話してるというのに、のんきにお礼を言ってる場合じゃない






【すごいイケメンだ、なんて言って気に入ってたみたいだから、満更じゃないと思うんだ】





翔を見てイケメンだと思わない人はいないと思うし、実際みんな頬を染めていたのも認めるけど




【自分の店を持つっていう志が同じだし、気が合うと思うんだ】




それが本当ならそうだろうし




【洋菓子とパン、両方扱えばいいんだし】




そういう店だってあるだろうけど





【実際店を持つってなったら、親としては援助してやりたいとも思ってるしね】




息子さんには今の店を譲ることになるわけで、そうなったら娘さんにだって何かしてあげたいと思う親心は理解できるけど




【決まった人はいるのかい?って昨日聞いたけど、何のことです?って言ってたし】




隣の翔をキッと睨むと首を傾げて正に何のことです?って顔をしている




これはきっとその言葉の意味がわかんなくて、本当にそう答えたのかもしれない










そこでふと気が付いた





ハニーとか呼ばれて懐かれて、一緒に暮らして世話してしやって、自分から好きになって、ベビーをなんて言われて抱かれて、ホントにできたかもなんて思って喜んで




散々そうやってきたけど







俺、翔に好きだって言われたことあったっけ……








好みの顔だとか、俺じゃないと勃たないとか


そういうことは言われてきた



体の相性はいいとは思ってる




翔も俺を抱いて気持ちよさそうにしてるし



俺も今更女の人を抱きたいとも思わない




それはニノが言った受ける側はハマるってやつなのかもしれないけど



他の誰かに抱かれたいなんてちっとも思わないのは、翔のことが好きだから



でも、翔は?








【翔ちゃん、うちの娘、どうかな?】




会長さんの問い掛けに、どうしていいかわからない翔は俺に救いの目を向けるけど




頭の中が混乱し始めていた俺は何て言っていいのかわからなくなっていた