・・・✤BLを含む完全妄想のお話です✤・・・









夢ってのは浅い眠りの時に見るものだと聞いたことがある




いい夢を見てた時にすぐに目覚めて残念に思うのはそういう事で、寝る前に考えてた事を夢に見やすいのもきっとそれが関係しているんだろう





だから俺が今見てる夢に翔が出てくるのはさほど不思議ではない




さっきまで目の前にいて、一緒にパン売ってカレーうどん食って、何が目的だなんて少し興奮して問い詰めてたんだから





だけど







「ハニー、お待たせしました♡」




夢の中だろうと、現実だろうと




全くもって待ってなどいないのにそんなことを言われるのは心外だ




「さぁさぁ、行きましょうね♪」




薄暗い所でポツンと一人佇んでいた俺の元にやってきた翔に手を引かれて連れて行かれたのは、やたらカラフルな世界




たくさんの種類の花が色とりどりに咲き誇る花園のど真ん中には、真っ白な天蓋付きのベッドが不自然にドンと置かれ(野外だぞ?)





どこぞの国のお姫様でも寝てるのかと思わせるそれに




「ハニー、どうぞ♡」




翔はレースのカーテンを捲って俺を中に促す






パン屋の朝は早い



早く売り切れた時など夕方にうたた寝することもある



だからって夢の中でまで寝なくてもいいのに




そう思っているんだけど




体が自然と動いて、肌触りがよく高級そうなシルクのシーツの上に勧められるまま横になった




「失礼します♪」




そしてなぜか翔も隣に寝転んでくる




コイツもいっぱい手伝ってくれたから疲れて眠いのかもしれない




他にベッドもなさそうだし、幸い広いから一緒でも仕方ねぇかなんて思っていると





「はぁ……ハニーは抱き心地がいいですね♪」





人を抱き枕かぬいぐるみかなんかと勘違いしているのか、ピタッと隣に寄り添ってギュッと抱きしめてくる




やめろ!と言いたいけど全く声が出せず





「ハニーはやっぱりいいニオイします♡」 





そう言って耳元に顔を埋めてくるけど何の抵抗もできなくて





『あんっ……』




文句の代わりに出てくるのは変な声




「あぁ……かわいい♡」




翔は調子に乗って首筋もスンスンとニオイを嗅いできて




「こっちもいいですね♪とっても甘そう♡」




しっとりとした物を感じたかと思ったら




「んん〜♪はぁ…やっぱり♡」




舌まで這わせてきた






おい、こら、何すんだ!

頭の中ではそう言ってるはずなのに





『んっ、あぁっ……やんっ』




自分で言うのもなんだけど、色っぽい声しか出なくなるし




「あぁ〜、堪りませんね♪
私、興奮してきました♡」





翔が押し付けてきた下半身のブツが何やらカタチ付いているのがわかって、気持ちワリィなぁ!と思いつつも 




「あっ、ハニーも同じですね♪」




そうなんだよ、何だか下っ腹がムズムズするなぁと思ったら、俺のも反応しちゃってるみたいで





更には




「ハニー……」




弱い耳元で甘く囁かれ




『んんっ……あんっ……もっ……』




もっと強い刺激が欲しくなっている始末








自分の意思とは全く違う行動をするコレ



夢なら何でもアリなのかもしれないけど



間違いなく俺なのに俺じゃないみたいで



まるで夢の中の自分の事を外から覗いてるようで恥ずかしくなる







この時の俺はまだ僅かだけど自分の意思を持てていた





もっとと強請る夢と

やめろと拒絶する現実と



その両方が頭の中でせめぎ合ってるような






それでも俺の上でねっとりと見つめてくる赤い目が、濃く深く光ると




このままでもいいか……




なんても思い始めていて



全てを受け入れてしまいそうになっていたが







「さぁ、ハニー……
私のベビーを産んでくださいね♪」






嬉しそうに笑う翔の言葉にさすがにおかしいと思えたのか、いや、本当ならもっと早くに気付くべきだったんだ




『俺は男だって言ってんだろ!』




ついには夢の中でまともな声を出せていた









『……んっ…んん……あれ?』




気が付けば目の前には見慣れた古びた天井、リビングの床に寝転んでいた俺はどうやら夢から覚める事に成功




「いてて……ハニー、蹴ることはないでしょう?」




隣には腹を押さえて痛がる翔が転がっていた




どこまでが夢と現実かの区別が付かなくなって




でも、首筋にはさっきの感触が残っていて




『お前、何しやがった?』




と低く出た声に、ビクつく翔の後ろが暗く見えたと思ったら




【まったく……
オマエはまた失敗したというのか、ショウ】





またしても全身真っ黒の、短めの金髪をツンツンと立てた男が立っていた