・・・✤BLを含む完全妄想のお話です✤・・・








「はーい、じゃあカンパイ〜♪」




相葉ちゃんの掛け声で4つのグラスは真ん中でカチンと音と立て、その反動でゆらゆらと波打つ泡を溢さないようにそれぞれが口を付けていく




テーブルに置かれた鍋からは既に湯気が立ち上っていて、いつもより少し豪華な具材に心が温まり




『くぅ〜〜〜っ!』




喉を落ちてゆくビールが一層冷たく感じた





向かいに座る相葉ちゃんはくふくふと笑い



「最初のこの一杯がすっごく美味しいんだよね!」



グラスを一気にあけて





「アナタは何杯目でも美味しいんでしょ?」



その隣に座るニノは呆れながらも瓶を手に取っておかわりを注いでやって






「そろそろいけそうだよ」




俺の隣では松潤が菜箸を片手に鍋を覗き込んで周りに気を配っている








年が明けて1月3日




まだ正月休みの店が多い中、【呑み処 松岡屋】は今日から営業開始




と言っても本来なら明日からのところを俺たち4人の為だけに開けてくれていて




〈だってお前らが飲みに来るっていうからだろが?!このバカめらが!〉




市場は休みだけど知り合いの漁師と海に出た大将の松兄、その釣果が並ぶテーブルは新年会に相応しい豪華な料理が並んでいる





俺たちが集まって飲むのは大抵ここで、相葉ちゃん、ニノ、松潤にとっては大将は小さい頃からアニキのような存在らしい




そしてそれは俺にとっても同じことで




『だって松兄の料理美味いからさぁ♪』




〈ったく、調子いいこと言いやがって!〉




文句を言いながらもそれそれが好きな物を出してくれる心優しい大将だ







松岡屋は商店街の一角にある




総店舗数30軒あまり





特に話題性のないここには雑誌やTVの取材がやって来ることなどない




それでもシャッター商店街にならないのは地域にしっかりと根付いているから




少ない店舗数が故にどれひとつとして同じ種類の店がない




競争するより手を取り合おうという精神なのか





青果、鮮魚、精肉店があるからスーパーはないけど、日配品をメインに扱う店があって





ドラッグストアはないけど、薬屋や雑貨屋、金物屋があって





飲食店もラーメン屋と和食、洋食





夜の店はここの他にはスナックが1軒





もちろん車を走らせれば大型商業施設があるが、足がない近所のお年寄りにはここが日常生活のオアシス







俺はそんなあけぼの商店街でパン屋をやっている





元々は母方のじいちゃんの店




車で3時間以上掛かるここには、小さいうちは大型連休や長期休みにしか来られなかったけど




『いいにおいするね〜♪』




じいちゃんのパンは商店街の入り口にまで届いてみんなを笑顔にするような、そんな幸せの香りがして




〔智はいい顔するなぁ♪〕




長年パンを捏ね続けている大きな手で頭を撫でて笑うじいちゃんが作るパンが大好きだった





そんなじいちゃんだったけど、長年の立ち仕事で足腰を悪くして店を続ける事が次第に難しくなって





〔ここからパン屋が無くなったら困る人がおるじゃろな……〕





哀しそうにする顔に心の中で何かが動いて





『俺がやるよ!』





パンや経営の知識なんて全くなかった俺がそんな事を言い出したもんだら、家族みんなビックリして呆れたけど





〔智、ありがとな……〕





じいちゃんだけは一言も無理だなんて言わなかった





普通のサラリーマンだった俺はすぐさま退職




店舗2階のじいちゃんちに住み込んでパン作りのノウハウや経営に関する色んなことなどを1から教えてもらった




そして半年後





〔あとは頼んだぞ
みんなを笑顔にしてやってくれ〕




じいちゃんは実家へと越していき



俺は【スマイルパン】を正式に受け継いだ