・・・✤BLを含む完全妄想のお話です✤・・・






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後ろからきたタクシーに押し出される形で発車を余儀なくされ



ロータリーの最後の方、バックミラーを覗いてみたけれど、大野様の姿を確認することはできなかった







表示灯もそのまま、【空車】に変えることなく走り出して




つい30分程前までは牛丼しかなかった俺の頭は大野様のことで溢れていた





とりあえずコンビニの駐車場に車を停めて、シートに背中をつけて大きくため息を一つ




「大野様、大丈夫だろうか……」




ホテルには同じようにタクシーに乗った人たちがやって来ていて、降り立つ人々は女性も男性も綺麗にめかしこんだ格好をしていた




「どんなパーティーなんだろうか……」




きらびやかな世界を想像して、どの人よりも大野様が一番輝いているだろうけど




「だからこそ心配だ……」





誰よりも注目を集めてしまうに違いない




取り囲まれる様子が目に浮かんできて、胃がキリキリとする思い





迎えに出てきた男性、友人だとはいうけれど、大野様を守ってくれるだろうか?




いや、まてよ…… 




慣れたように腰に手を回して体を密着させて




智……

大野様の事も名前で読んでたしな




更には俺がついてるから、だと?




彼氏気取りか?!




お前のせいで大野様は無理矢理パーティーにっ!




そんな事を考えたら頭の中がカッカとしてきて、居ても立ってもいられなくなって
何とかして大野様を助け出す方法を考えていた





招待客でもないただのタクシードライバーの俺が、会場に潜り込むのは無理だろう





大野様を狙う奴がいたとして、パーティーなら多くの人の目があるから最悪な事態は避けられるかもしれない




ならば終わりを待って俺が迎えてあげればいいんだ!




ホテルに向かって待機することにしよう!





先程送ったばかり、終わるまではまだ2時間はあるだろうか




この時間帯、街中を流して走っていれば何人かのお客様を乗せることが出来るだろう




その時間を無駄にしたとなれば、運行管理から何か言われるに違いない




二宮さんにも



「二度と貴方に配車しませんよ?」




冷たく言い捨てられるかもしれない




だけど、今の俺にとっては目先の売上よりも、大野様を救い出すこと


そう!



囚われの姫を助けることの方が重要な使命なんだ!





そう思ったら体が勝手に動き出して、表示灯を【迎車】に変え




「どうか無事であってください!今、私が行きますからね!」




すっかりヒーロー気分の俺はホテルに向かって車を走らせていた