・・・✤BLを含む完全妄想のお話です✤・・・
外にオンナを作る
家庭を持つ男性の不貞行為を表すその言い方、つまりは櫻井くんのお父さんは不倫をしていたということ
決して褒められたり胸を張れるような行いではないけど、よく耳にする話でもあって
TVのワイドショーでは芸能人のそんな話題がされていたり、ドラマなどでもよく目にすること
それが一般人だからって特段驚くような話でもないのだけど
僕の心臓は少しずつ鼓動が速くなり始めていて
知りたかった櫻井くんの家庭のことなのに
聞いてはいけない
どこからか頭の中にそんな声が聞こえてきた気がした
でも、一度開いた松本くん口は閉じることはなかった
「サクショーんちって、特別金持ちとかそういうんじゃなくてさ、普通の家庭
小学校の行事とかも両親揃って積極的に参加してたみたいだし
で、サクショーも明るくて賢いしさ、絵に描いたような幸せな家族に見えてたらしいよ」
顔を見たことはないけれど、優しそうな父親と母親の間に立つ櫻井くん、3人どこか似たような顔で笑っている写真が想像できた
「特に厳しいってわけでもなくて、でも息子の将来を考えて中学受験させてさ
それを鼻に掛けるわけでもなかったから、母ちゃんたちの印象も悪くなかったし、サクショーもあの通り人懐っこいから、俺たちも生意気だ!なんて思うこともなく遊べてたんだよね」
確かにここで松本くんたちと接する様子からもその記憶は正しい気がする
じゃあなんで……?
「中学が別になるとさ、それまでみたいな付き合いはどうしたって減るじゃん?
でも近くに住んでる人に寄れば、外で会えば気さくに話ししたりして、相変わらずいい人っていうかさ、幸せそうに笑ってたらしいんだけど……
親父さんにはさ、ずっと他所にオンナがいたらしくて」
『ずっとって……?』
「正確なとこはわかんねぇみたいだけど、サクショーがちっちゃい頃からだったみたいだね」
ドキドキと聞こえそうなくらい音を立てる心臓、まるで体中に散らばってるみたいだ
「あんなに幸せそうに見えてたんだ、母親はショックだっただろうね……
よく外面だけいいなんて人もいるけどさ、親父さんはそんなことなくて
俺も何回かは見たことあったけど、サクショーも父親を尊敬してたし好きなんだろうなってのも見えてさ
母親同士の話でも、悪口言ってんの聞いたことねぇんだってよ
旦那の悪口なんて一個や二個、普通出てくるもんなのよってうちの母ちゃんはケラケラ笑ってたよ」
うちは一個二個どころじゃねぇけどな、そう言って松本くんは笑うけど
僕は愛想笑いもできなかった
「まぁ、裏切られたって思ったんだろうね、当然だけど
サクショーが3年になった頃からは外で家族揃ってるのを見掛けなくなったっていうし、たまに会う母親にも笑顔はなかったって言ってたね
幸せだった家族が壊れたんだよ……」
いつも自信に満ち溢れているような松本くんの力強い目は、そう言った言葉と同じように弱々しく見えて
友達の家族を心配するソレは、ヤンチャに見えて実は優しい彼らしいそのものだったけど
僕はもはや自分の足元がグラグラと崩れそうな感覚に襲われていた
櫻井くんのお父さんがしてきた事は、幸せな家族をあっという間に壊すもので
笑顔を奪うもので
「サクショーはそんな親父さんの事、許せなかったのかもな……
それ以上詳しくはわかんねぇけど、母親は家を出て、サクショーもそんな親父さんと暮らすのは無理だったんだよ」
そして櫻井くんを孤独にさせるものだったんだ
自分の欲や快楽の為にすることが誰かを不幸にすること、頭ではわかっていたつもりだった
そして自分がそういうことをしているということも
だけど、改めて現実を突きつけられた
タクヤとの事を終わらせ、これでちゃんと好きだと言えるようになった櫻井くんに対して
自分がこれまでにしてきた行動が恥ずかしく、あまりにも愚かで
心が震えてどうしようもなかった