┅ ✤BLを含む完全妄想のお話です✤┅






一体何が起こったんだろう……


ぼーっとしながらさっきまでのことを思い出していた




櫻井くんに言われて絵を描くことになって


集中し過ぎたから櫻井くんの声にも反応せず


気がついたら目の前にイケメンがあって


心配をかけてしまったのは申し訳ないなと思いつつ、唇尖ってるなんて言われて恥ずかしくなって




カッコよく描いてくれたお礼にって頬に触れたのは……



あれは  キス   だよね




そして絵が未完成だと言ったら今度はちゃんとしたヤツをくれるとかなんとか



ちゃんとしたやつってのは、唇にキスするってこと?



……
…………
はっ?
えっ?
どうなってるのこれ?!




ぐるぐると頭の中が渦巻いていて、でも誰かに見られていなかったかとキョロキョロと確認するあたりは冷静なんだかやっぱりパニックになっているのか




生徒の完全下校時刻10分前を知らせるチャイムが鳴ったところで我に返って、誰もいるはずのない教室内をしっかりと確認、ドアを施錠して職員室に戻った






何人かの先生には



【大野先生、顔が赤いですよ?大丈夫ですか?】



熱だったり熱中症なんかを心配されながら



『あっ、はいっ、大丈夫です!
美術室暑かったかな、ははっ……』



上手くいったかどうかわかんなかったけど誤魔化して



【適度にエアコン入れてくださいね】



それはきっと生徒を心配してだろうけど、軽く注意を受け



『気をつけます、ではお先に失礼します』



そそくさと学校を後にした






バスや電車の中でもぼーっとしていた僕は、乗客とぶつかりそうになったり通行人と上手くすれ違えずに鉢合わせみたいになったり





スーパーに寄ってからと思ってたことなどすっかり忘れて帰った部屋、玄関にはタクヤの靴があった





来てくれている事にワクワクとしていた時期は過ぎ去っていて、そもそも最初からあったのかもわかんないけど




それでも今日は何か胸がザワついて



心躍る方ではなく心臓がキュッとなる感じ



リビングに入ればいつものようにビール片手に寛いで



【智、おかえり】



ふわっと笑うタクヤがいた



普段なら穏やかになる気持ちも今日ばかりは心臓がバクバクとする感じがして



『ただいま……』



タクヤを直視できそうになかったから、リビングを素通りして寝室に入った






カバンを置いて、もそもそと部屋着に着替えていると背中に温かさとタクヤの香りを感じた



僕が今どんな顔をしているのか、寝室の暗闇の中では見られる事はないだろうけど



『着替えたら向こう行くから……』



背中から回された腕をぽんぽんとだけ叩いた



【智……】



耳元で名前を呼ばれ、ビクンとした反応を勘違いしたのか、そのままベッドへの距離を詰めていって



【いつもの智じゃないニオイすんね……】



頬から首筋にかけて顔を寄せてくる



『帰りの電車混んでたから……』



咄嗟に嘘をついて、身を捩って逃れようとしたけど



【何か無性にイラッとするな……】



他のオトコが近付いたからっていう理由でそう言っているなら、なんて可愛いヤキモチを妬いてくれているんだろう、素直にそう思えた時期も確かにあったはずなんだけど



自分は既婚者のくせに



今日ばかりは決して言うつもりはなかった思いが口から出そうになっていた



だけどその口は今日もアルコール味のキスで塞がれて、そのままベッドに押し倒された



『ちょっ、タクヤ!……んんっ、まって!』



【シャワーならいいよ……このままで】



『えっ?!あっ、やだっ!』



【何か汗のニオイがね……そそるんだわ……】



着替えたばかりのTシャツをあっという間に捲りあげ、じんわりと汗ばむ体に鼻を擦りつけ舌を這わせ




何度も肌を重ねているからか、僕の弱い所なんて熟知しているタクヤに抵抗なんて出来るはずもなく



こうしてまた僕はタクヤに抱かれるんだと思ったら、今日はなんだかとっても哀しい気分になった