┅ ✤BLを含む完全妄想のお話です✤┅







目的地に向かって走り出した車の中、運転席と助手席の2人は陽気な音楽をノリノリで歌って


チャイルドシートの2人は持ってきたお菓子をわけっこして笑いながら食べて


一番後ろの俺たちはくっついて座って間に置く手を重ね合わせていた


前からは死角になってるから見られる事はないだろうけど


何かすげぇドキドキとしていた


隣を見れば翔くんはニコニコとしていて


「嬉しいなぁ〜♪」


声には出てないけど、顔には丸出しだ


その顔がかわいかったし、俺もやっぱり嬉しいから頬が緩むのが自分でもわかった






「ねぇ、智くん、あの涼子さん?って人は松岡さんと仲良いの?」


俺は涼子さんの事は当然知ってるし、来るっていうのも聞いてたけど


そうか、翔くんはいきなり知らない人いて驚いたよな




《俺一人でガキを2人見んのは大変だからよ、助っ人頼んだから》


松兄がそう言ってお願いしたのは会社の事務員の涼子さん


松兄よりも一つ年上の涼子さんは大学のサークルの先輩だったらしい


明るくサバサバとしていて同じような性格の2人はあっという間に仲良くなって意気投合、卒業後も飲みに行ったり付き合いはあった


父ちゃんとも何度かは飲んだみたいだし、俺とも会った事があるみたいだけど、小さ過ぎて覚えていなかった


結婚してたけど去年離婚して子供はいない


地元に戻ってきたところ、昔からの縁ということでこの春俺と同じくらいに松兄の会社で働き出した



俺たちの家庭環境も知っていて、カズの事は特によく可愛がってくれる


見た目はあの通り派手だけど、自分の意見とか意思とかしっかり持っていて、職人さんにも負けずにズバズバと言える人


姐さん


この言葉がピッタリ合いそうだけど、怒られるからみんな普通に涼子さんと呼んでいる


「へぇ〜……頼りになりそうな人だね」


『まぁな』


「それにキレイだしね」


『ん?うん、まぁそうだな。美人だな』


「大人の女性って感じ」


『まぁ、松兄より上だしな……』


「カッコイイよね〜」


翔くんは真っ直ぐと助手席を見て言う


音楽に乗って体を揺らす涼子さんの後頭部しか見えないだろうけど




何かちょっとモヤッとする……


分かるんだよ、これがヤキモチだっていうのは


さっきも涼子さんに言われたし、翔くんにも確認されたし


ってか俺が妬いてるって分かってんだったら、翔くんだってそんな事言わなきゃいいのに


わかんねぇ奴だなぁ!


そりゃ涼子さんが俺よりガキの翔くんを相手にするわけないのは分かってるけど、いい気分はしない


せっかく好きだって言ってやったのに!


翔くんはそんなのお構い無しに会話を続ける


「松岡さんとお似合いだよね?付き合ったりしてないの?」


『あ?あの二人は別にそういう関係じゃない思うけど……』


《ヨネ!》【マー!】
と呼び合う2人


2人で飲みに行くこともあるみたいだけど、そんな雰囲気が漂ってんのは見たことがない


そんな事言ったら怒られるし、性別を超えた友達みたいもんだと思う


「ふ〜ん……そうだったらトリプルデートみたいで楽しいのにね♪」


翔くんはニコニコとそんなことを言う


俺がモヤってんの、分かってんのかな……


視線を落とし、そんなことを考えていると


「ん?智くん、どうしたの?酔った?」


更にトンチンカンな事を言う


『なんでもねぇよ……』


ちょっと膨れつつそう答えると


ギュッ……


「(ボソッ)……やっぱり恋人だからね……こっちの方がいいよね……///」


俺の手に指を絡め合うように握り直して……


「恋人繋ぎ……やってみたかったんだよね……///」


赤くなりながら照れくさそうに反対の手で鼻の頭をカリカリとかいて


そんな顔見ちゃったらさ……


『ふはっ(笑)……翔くん、かわいいな……///』


自分のモヤモヤがアホみたいに思えてきた


「何言ってんの?
かわいいのは智くんでしょ……///?」


男2人でお互いをかわいいと言い合うこの姿は、周りからはアホとしか言いようがないだろうけど


俺もギュッと手を握り返してやって


『いっぱい楽しもうな!』


「そうだね!」


モヤモヤも吹っ飛んで、そうこうしてるうちに車は目的地の遊園地へと到着した