迷いに迷ったタイトル
白南風
【しらはえ】【しろばえ】

梅雨が終わり空が明るくなった頃、南東方向から吹いてくる夏の季節風

暗い梅雨空に吹く南風を【黒南風(くろはえ)】というのに対して
梅雨明けの明るい空に吹く風を【白南風】というそうです

雨がつく季語も迷ったんですけどねぇ〜
これが一番ハマった気がします!

この他にもたくさん素敵なタイトルを考えていただきました
ありがとうございます

そしてメッセージでくださったので名前は伏せますが
(恥ずかしいのかと思って)
【白南風】を考えくださった
〇〇さん、ありがとうございました!




┅ ✤BLを含む完全妄想のお話です✤┅





「…………う、う〜〜〜ん……今日も暑くなりそうだなぁ〜!」


広縁の窓を開けて大きく背伸びをひとつ


目の前に広がる空は雲ひとつない晴天


思い切り吸い込んだ外の空気は、まだ朝の9時前だというのに夜でもあまり気温が下がらなかった熱を帯びたままで


「よしっ!干しちゃうか」


サンダルをつっかけ洗濯カゴを持って縁側から庭の物干し場へと出てみると、あっという間にその空気に包まれて汗ばんでしまうくらいだった。



きちんと閉めた窓の向こう


【にゃあ〜、にゃあ〜】


アメが俺を呼んでいる。
それともご飯は食べたばかりだから外に出せと言っているのか?


「ちょっと待ってろって。これ干さなきゃお前眠れないだろ?」


ネコベッドの上に敷いてある洗い換え用のタオル、それを竿に引っ掛けながら言うと


【にゃにゃっ!】


アメの声からするとお気に入りを洗うな!とでも怒っているのかもしれない。


「あのね〜、お前がミルク零すからでしょうよ」


水やミルク飲みが下手なアメは舌で掬うというよりは皿から弾き出してしまうから、周りがあっという間に水浸しになってしまう。


ケージから咥えて持ち出したと思われるタオルにもミルクを撒き散らしていて


「知ってるか?ミルク拭いたタオルそのままにしとくと臭くなるんだよ」


学校あるあるだ


もっともあれは雑巾で、アメのお気に入りのタオルは俺のお古


智くんいわく


『しょおの匂いがするんだよ♪』


アメが落ち着くアイテムらしい。



通常の洗濯物も干し終えて中に入ると、足元をウロウロ


「はいはい、違うの出してやるから」


お古には変わりないけど別のタオルを出してやればそれに絡みつきながらご機嫌に遊んでいる。


そして一通り満足すればその上で丸くなって昼寝をして


寂しくなったら俺の膝の上にやって来たり、遊べと催促したり


アメを見ていると一日中飽きる事はないし、気持ちも落ち着くし、一人暮らしの俺にはピッタリの相棒、家族でもある。





そしてそんなアメの事が大好きな人がもう一人いて……


今日もそろそろ来るかな?


───ピンポーン♪


こののどかな田舎町、昼間は玄関に鍵を掛けている家は少なく、我が家も先程新聞を取りに出たからあけたままにしておいた。


「はーい!」


玄関に向かって返事をすると、カラカラと引き戸を開けて今日も元気な声が聞こえる。


「しょお〜、アメ〜、おはよー!」


【にゃん♪】


自分の名前を認識しているのか、はたまたこの声に反応しているのか、アメは玄関までまっしぐら


そしてそれは俺も同じで


さすがにアメのように走っては行かないけど、いい歳した俺が彼が来るのをワクワクと待ち望んでいたとは悟られないように、足元のスリッパの音を気にしながら向かった先にいたのは


「智くん、おはよう」


晴れの日でもこうして我が家にやって来るようになった智くんだった。


俺とアメが智くんちにお邪魔したあの日から数日後、この地方も梅雨明けが発表され晴れの日が続くようになったけど、智くんは天気など関係なくこうしてやって来るようになった。


特別何かするわけでもなく、アメと遊んだり俺と話をしたり


買い物に出掛けて昼ご飯を一緒に作って食べたり


クーラーを効かせた部屋でアメと同じ格好で昼寝をする姿は何とも可愛く


そして


『また来るねー♪』


相変わらず夕方前には帰っていくけど、言葉通りまたいつでも来れるとわかっているからにこやかな顔で自分の家へと帰って行く。



歳は離れているが友達としてこうやって付き合う事に決して不満はないけれど


それでも


『今日もしょおの好きなご飯愛情込めて作ってあげるね♪』


そんな風に言われたら期待してしまう俺もいる。


『僕、しょおのおうち大好きだなぁ♡』


その言葉が家ではなく俺自身に向くことはあるんだろうか?


本当に楽しそうにアメと遊んだりする智くんの姿を見てそんな風に考えてしまう俺は、大人でもなければ心も狭い人間のように見える時もあって



【にゃあ……】


「わかってるよ、こうやって晴れの日でも来るようになったのは嬉しいんだから……」


【にゃにゃ!】


「告白もしてないんだから当たり前だろうって?そりゃそうだけど……」  


【にゃっ!】


「お前ね、簡単に言うけどなかなかそのチャンスがさ……」


【…………】


「おい、何か言ってくれよ……」


今日もまた智くんが帰った後、アメに向かってグチグチと話してるうちに相手もしてもらえなくなる、そんな日々を過ごしていた。